卒業式や入学式において、起立しない教職員、それが通称「不起立教師」である。本誌でもたびたび取り上げてきたが、大阪の不起立教師を激震させているのが、1月17日に出された「府立学校の卒業式や入学式において起立斉唱を求める職務命令」である。大阪府には起立斉唱を義務とする「君が代条例」があり、それを踏まえた措置であるが、「不起立」と共に忘れてはならないのが「不斉唱(ふせいしょう)」の問題だ。

不斉唱とは、国歌・君が代を歌わないことである。断固として歌わない。同シリーズには、伴奏を演奏しない「不伴奏」もあるが、もしも仮に、教職員が「不伴奏教師」と「不斉唱教師」しかいなかったとしたら、児童・生徒たちはアカペラで君が代を歌うことになる。それはそれで感動的だが、東京都でも大阪府でも、教職員たちが君が代を斉唱することは義務なのだ。

だがしかし。過去に東京の不起立教師事情を徹底取材、『潜入!!プロ市民集会レポート』というタイトルで6回にわたりルポ漫画を描いたことのある、不起立業界評論家でもある漫画家マミヤ狂四郎氏は、「新たな不斉唱」の登場を危惧しているという。その方法とは……
 
 
いっこく堂ばりの腹話術で、君が代を歌うことであるという。
 
 
ここからは、毎度おなじみの不起立評論家マミヤ狂四郎氏に解説をお願いしたい。
 
マミヤ「私が得ている情報によると、君が代不斉唱のチェック方法は、『声』と『口』です。不起立教師チェッカーである校長先生や教頭先生は、不斉唱をしていると思しき教職員の近くに行き、歌っているのか確認するといいます。まあ、近くに行けば歌っているかどうかは容易に判断できます。そして、歌っていなければ「歌って下さい」と注意する。不起立と同じですね。しかしです!」
 
――しかし!?
 
マミヤ「もしも近寄ったとしても、口が動いてなかったとしても、歌声がハッキリと聞こえてきてしまったら……。校長・教頭はスルーしざるを得ません。たしかに君が代が聞こえてくるのだから、歌っていることには違いないからです。しかしながら、口は動いていない。例えば同じ学校に『不起立教師仲間』がいたとします。そんな仲間は、いっこく堂式の腹話術で君が代を歌う教師の口の動きを見て『よし、同志は歌っていない。不斉唱貫徹!』と思うわけです。しかし、実は歌っている。どっちにもドヤ顔ができる。これは本当に恐ろしいことです」

――考えれば考えるほど、ずるい方法である「いっこく堂ばりの腹話術による不斉唱」。いずれにしても、厳粛かつ平穏な卒業式・入学式が全国でとり行われることを切に願う。卒業式の主役は先生ではない。教職員みずからが模範となって教えてきた、児童と生徒であるのだから。

イラスト・情報提供:マミヤ狂四郎