今まで私(記者)が食べてきたとんかつは、一体なんだったのだろうか。とんかつであることには間違いないが、あまりにも、あまりにも、今回食べたとんかつは美味すぎた。レベルが違いすぎた。人生までも考えた。
何のことかといえば、とんかつ激戦区・高田馬場にあるとんかつの名店「とん太」のとんかつである。かなりの有名店なのでご存じの方も多いだろう。スゴイというウワサは聞いていたが、まさかこれほどまでとは……。口の中にうっすら残る、「とん太」のとんかつの記憶を思い出しながらレポートしてみたい。
夜の部の開店時間18:00より少し前に、我々記者2人はお店の前にスタンバイ。ちなみに隣はラーメン二郎だ。今か今かと開店を待ちわびていると、続々とお客さんがやってくる。開店前から密かな行列。18:00ピッタリにのれんが出され、我々は店内へと歩を進めた。
気取っていないが、しっとり落ち着いた和風の店内。通されたのはカウンター席。注文したのは「特ロースかつ定食(2100円)」と「特ヒレかつ定食(2200円)」である。
まずはゴマの入ったすり鉢が出される。無心でゴリゴリとゴマをする。店内に響くゴリゴリ音。……ふとあたりを見回すと、すでに満席ではないか。ほぼ開店と同時に満席ではないか。しかも外には軽い行列ができているではないか。やはりウワサは本当だった。ここは確かな名店なのだ。
定食にはお新香ととん汁、そしてごはんがついてくる。最初にやってきたのはお新香なのだが、これがべらぼうに美味いのだ。すでに美味いのだ。つかりすぎず、薄味すぎず……絶妙に絶妙なお新香なのである。気を許したら一気に食べ終わりそうなくらいの美味さであるが、とんかつの「小休止」のためにガマンすることにした。
それにしても……なんだろうか、この店内に充満する不思議な緊張感は。決してムダ口禁止というわけではない。しかし、ものすごい集中力と精神力でとんかつを揚げる、寡黙な店主の雰囲気に圧倒されるがごとく、店内には心地よい緊張感が漂っているのだ。何かに例えるならば指揮者である。とんかつオーケストラの指揮者なのである。ゴリゴリゴリゴリ……
そんなことを考えているうちに、特ロースと特ヒレが我々の前にやってきた。同時にごはんととん汁もやってきた。一般的なとんかつに比べると、白っぽい印象を受ける。まだ揚がっていないのではないか?と思ってしまうくらいの白っぽさなのである。だがしかし。だがしかし!
目の前に置かれてる「一切れは何にもつけずに、また一切れは塩で、黒コショーで、ゴマでなど、いろいろな味をお楽しみ下さい」との注意書きに従うように、まずは何も付けずに食べてみた。
……なんということだろうか。何なんだろう、この美味さは。なんなのか! 一体なんなのかこのとんかつはッ!! 何もつけていないのに、美味いのである!
口の中にブワーッと広がる、肉と脂身のダイレクトな味。まさにジューシー。口の中で脂身が溶ける。揚げすぎず、揚げなさ過ぎず……とんでもなく絶妙な揚げ具合なのである。されど「サクッ……」とした食感。実に品がある、研ぎ澄まされた至高のとんかつがそこにはあったのだ。
同行した記者が頼んだ特ヒレも、一切れパクリといただいた。……これまた美味! 柔らかいのに、またもジューシー。上品に主張する肉の味。ヒレかつといえば、パサパサしているという印象もあるが、このお店のヒレかつは全くの別次元。全くの逆。ヒレかつの概念さえ変わってしまうほどの美味さなのである。
その後、私は、店内に用意されている二種類の塩、ゴマ、ソース……と、様々な味を試してみた。いずれもうまい。完璧にうまい。だが、「何も付けずに食べたとんかつ」がナンバーワンで美味かった。
ちなみにとん汁もこれまた美味い。そこにあるのは確かにとん汁なのだが、私の人生のなかでは最高レベルの、究極レベルにまで気品高いとん汁なのだ。とにかく、とんでもないセットを食べてしまった。とんでもない体験をしてしまった。一生に一度は食べてほしい。それが「とん太」のとんかつである。
お店データ
住所:東京都豊島区高田3-17-8
営業時間:11:30~13:30、18:00~21:00(土:18:00~21:00)
定休日:日曜日、祝日
最寄り駅:高田馬場駅
Report:GO羽鳥
▼こちらは特ヒレ
▼おいしくたべるコツ
▼ゴマ
▼二種類の塩
▼となりはなんとラーメン二郎