2011年11月9~12日の日程で、東京・ビッグサイトで開催されている「2011国際ロボット展(iREX2011)」。今年で19回目を迎えるこのイベントは、世界最大のロボット見本市である。国内外からロボット・関連機器メーカー、大学・研究機関などが参加しており、今回は過去最大級272社(団体)の参加となった。製造分野のロボットの出展が中心なのだが、近年はサービス分野の出展も増えつつある。
特にここ数年で、各社ともサービスロボット(サービス業で使われるロボットを指す)の開発が進められており、第3次産業での活躍が期待されているようだ。
また東日本大震災以降、人間に代わって危険作業を行うロボットの開発も急速に進められている。たとえば、ご紹介する「FST」もそのひとつだ。これは、ロボットの遠隔操縦システムである。ヘッドマウントディスプレイとグローブ、そしてセンサーチューブを装着すると、まるで自分がもう一人現れたような感覚で、ロボットを操縦できるようだ。
このシステムを開発しているのは、旭光電機株式会社だ。同社は、千葉大学大学院や慶應義塾大学大学院、大阪大学大学院などと協力し、視聴覚と力感覚を兼ね備えた「Telexistence FST」を開発した。
ロボットを遠隔操縦するものだ。遠隔操縦だけであれば、目新しいものではないのだが、このシステムは操縦者がロボットの視点に立って操縦することができるのである。3次元視聴覚ヘッドマウントディスプレイを通じてロボットの目線でものを見ることができ、周囲の音を聞くことができる。
さらにフレキシブル・データ・グローブ「FSG-03」を装着すると、手・指の動きまでロボットに伝達できるのだ。もし仮に、ロボットが物をつかんだ場合には、その感触がフィードバックされて操縦者に伝わってくる。また、全身の動きをキャプチャするフレキシブル・センサー・チューブ「FST-03」により、操縦者の体の動きまで再現する。
このシステムは、本人は離れた場所にいながら「ロボットになったような感覚」で操縦できる、すさまじいシステムなのである。デモンストレーションに参加した一般の参加者は、真後ろにいるロボットの視点から自分を見て、衝撃を受けていたようだ。自分はその場にいるのにも関わらず、離れた場所から自分を見ているような感覚、これは言わば擬似的な幽体離脱体験ではないだろうか。
想定される用途としては、危険な化学薬品を取り扱う作業や、震災以降必要と考えられている原発での危険作業など、正確さを要求される現場で活躍するようだ。
記者(私)は個人的に、このシステムを応用して格闘ゲームなどを行ったら、とても面白いのではないか想像した。おそらく漫画『プラモ狂四郎』の世界も夢ではないはずだ。いずれにしても、さらなる開発が楽しみである。
写真:Rocketnews24
▼ Telexistence FSTのデモンストレーション
▼ こちらが3次元視聴覚ヘッドマウントディスプレイ
▼ こちらはフレキシブル・データ・グローブ
▼ 将来的に、危険な化学薬品の取り扱いも可能になるだろう