中国の電脳中心といったら、ピラミッドばりのばかでかい、大雑把なビルが林立し、同じような店が果てしなく、果てしなく続く……というパターンが非常に多い。熱気はムンムン伝わってくるが、いかんせん大味である。
そんなとき、古都(?)上海に、昔ながらの侘び寂び感漂う由緒正しき電脳街があると噂に聞き、早速行って参りました。
地下鉄「宝山路」駅を中心に広がるこじんまりした電脳街。煤けた低層の建物でごちゃごちゃした電子グッズが売買されるこのエリア。あら不思議。20年前のアキバと同じ、妙な場末感が漂っているではありませんか。
道路脇に小さな椅子を並べ、アンプの横で子育てに励むおばさん。シャツをめくりあげ、はちきれんばかりの三段腹をさらしながらDVDを売る親父……。エリア全体に漂うやるせない生活感。
ここいら一帯では、電脳街の風物詩である「札束を握りしめ、鮫のような目で最新PCの価格表を見比べる人々」をあまり見かけない、皆、風景を楽しみながらアテもなくぶらぶら歩き、目についた小物をのんびり品定めしている。
あるPC店の店主は、往来のど真ん中に洗面器を置き、一心不乱に洗濯をしていた。洗面器の周りで洗濯の終わったマザーボードが生々しく日干しにされている。
埃のこびりついた中古PCをリフレッシュしているのだろうが、赤い洗面器が周りの煤けた風景と完全に溶け込み、ただの洗濯爺にしか見えなかった。
(取材・文=クーロン黒沢)
▼まったり始まる電脳街。アキバに例えるならラジオデパート風?
▼店主たちは路上でたべりながら一日を過ごす
▼海賊版DVD屋さん。腹を出して余裕しゃくしゃく
▼四歳児に店番させちゃダメだろ