地震によって発生した津波の力によって、南極の巨大な氷が裂けるところをNASAの科学者らが観測した。調査をしたのは、NASAゴダード宇宙飛行センターの低温度圏専門家ケリー・ブラント氏ら研究グループ。
2011年3月に起きた東北地方太平洋沖地震による津波と、南極にある「スルツバーガー氷棚」から生まれた氷山との関連性を確認できたという。氷棚とは厚さのある氷で、氷河や氷床が海に押し流れ、陸と繋がったまま海に浮かんでいるものを指す。
氷山は様々な方法で生まれる。これまでの調査では、氷山の分離は発見されてから原因をさかのぼって調べなければならなかった。しかし、今回の津波は近年最大クラスであったため、ブラント氏らは氷山の分離が起きる前から南極の氷に注目。そして複数の衛星写真を使い、津波が南極に到達してまもなく新しい氷山が海へと流れるのを、ほぼリアルタイムで観測することができたのだ。
スルツバーガー氷棚は、地震の震源地から1万3600キロメートルも離れたところにあり、津波が到達したのは地震発生から18時間も後のことだった。しかもこの氷棚は厚さが80メートルもあり、約半世紀もの間その場所を動いていなかったという。
到達した頃には津波はわずか30センチメートルほどの高さだったと考えられているが、揺るぎなく押し寄せる波には、氷山を分離させるに十分の力があったようだ。そして、津波で生まれたこの氷山の広さは約130平方キロメートル。東京ドーム2780個ぶん、甲子園球場だったら3282個が入るほどの広さである。
「地震活動により南極の氷山が分離したという証拠を得たことで、過去にあった同様の出来事を解明できるかもしれない」と、研究者らは話す。この発表は、地球上で起こる出来事が相互に関係しているという証拠であるが、あの地震の影響がまさか南極にまで及んでいたとは、大地震の恐ろしさを改めて感じる出来事である。
参照元:NASA
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