みなさんは月の裏側を見たことがあるだろうか? 恐らくほとんどの人がないだろう。それもそのはず、月はその自転周期と公転周期が同じなため、常に同じ面を地球に向けているのだ。よって、地球から月の裏側を普段見ることはできず、その撮影に長年科学者たちは挑戦してきた。

そして今回、NASAの無人月探査機「Lunar Reconnaissance Orbiter(以下、LRO)」が、最も鮮明な月の裏側写真を撮ることに成功した。この写真は何千枚もの写真を貼り合わせてできたものであり、1ピクセルあたり100m×100mの解像度だという。

実は、月の裏側が初めて人々の目に触れたのは、1959年ソ連のルナ3号がその撮影に成功した時なのだが、今回の写真は今まで撮影された中でも、最も詳細に月の裏側を写し出しているとのこと。

しかしこれでもまだ、すべての画像を公開しているわけではなく、LROに搭載されているカメラで月探査を行っているマーク・ロビンソン氏は「来週公開されるLROカメラの画像は、これからの月研究に役立つだけでなく、有人月探査を計画する上でも非常に有効な情報を与えてくれるのです」と述べた。

今回撮影を行ったLROは、5億400万ドル(約400億円)かけて作られ、2009年6月に宇宙に打ち上げられた。その大きさは車のミニクーパーほどで、現在月の極軌道を月面から50キロメートルの高さで回っている。また、LROが打ち上げられた2009年は、主に将来の月探査ミッションのための調査を行っていたのだが、2010年9月からは月の科学的な研究を行うために、調査内容を切り替えている。

そして、今回公開された月の全球図は、3万4748ピクセル×3万4748ピクセルというとてつもない解像度の画像であり、そのデータ量は約1.1ギガバイトに達するという。

しかし、LROから送られたきた総データ量を見るとこれは微々たるもので、LROに搭載されている7つの科学機器は今回192テラバイト(DVD4万1000枚に値するデータ量)以上の莫大な情報を送ってきたとされる。その高い性能を考えると、これからのさらなる月探査が期待できそうだ。

人類が唯一到達したことのある天体「月」。近いようで遠く、知っているようで、まだまだ謎の多い月は、これからどんな新しい一面を見せてくれるのであろうか。
(文=田代大一朗

参照元:Space.com(英文)