デカトラが姿を現してからの数日間、ほとんどの猫たちが部屋に寄り付かなくなりました。たとえ顔を出したとしても常に緊張した状態で、部屋の匂いを嗅ぎ回すと、エサを少し食べてまたどこかへと出て行くようになってしまったのです。体格が倍以上ある成猫の存在に、猫たちは恐れを抱いており、いつ襲われるか分かりません。彼らにとって、この部屋は安全ではなくなったようでした。
しかし「麻呂」とあだ名のついた頭の黒い白猫だけは、いくぶん緊張しているもののそれまでと同じように姿を現し、私の枕をクッションにしてくつろいでいました。麻呂だけが部屋に居座っていた2~3日の間に、私は彼の性格をよく知る機会を得たのでした。
彼(おそらくオス)が最初に来た日のことを鮮明に覚えています。それは他の猫たちがすでに出入りするようになった後のこと、ちょっと毛色の違う猫が、外から覗いていました。身体には真っ白な毛が生えているですが、頭のてっぺんだけが真っ黒。まるで黒い髪の毛が生えているようでした。
トラ柄や三毛たちは、「お前誰だ?」といった様子で麻呂の姿に警戒していたのです。麻呂も負けじとうなり声を上げ、無理やり部屋に入って来ました。しかし残念なことに、そのときはすでに皆がエサを食べ終わった後でした。翌日姿を現したときも、すでに皆がエサを食べ終わった後。その次の日も、また食事の時間に出遅れてやって来たのです。どうやらワンテンポ遅れるちょっとドン臭い子なのかなと思ったのが、麻呂に対する最初の印象です。
調子外れで不器用。しかし、私はちょっと間の抜けた感じの麻呂のことが好きでした。その麻呂が部屋に一匹。いつデカトラの強襲に遭うかわからないのに、なぜ、彼は部屋に来るのか? 実は彼はデカトラを恐れいてなかったのでした。
私は出先でも、時々部屋の様子をUstreamで確認しているのですが、あるとき部屋で麻呂とデカトラがバッタリと出くわしているのを画面越しに確認したことがありました。「これはマズイ! 麻呂ピンチ」と、パソコンに向かって叫んだのですが、どうしようもありません。案の定、デカトラが尻尾をブンブン振りながら麻呂ににじり寄ると、ワッと飛び掛ったのです。「逃げろ!」、バタバタと部屋を駆け回る音がしたかと思うと、麻呂が飛び出して行く姿が見えたのでした。
「けがを負わされていたらどうしよう。今日を境に麻呂が来なくなったら…」、そんな不安が頭をよぎりました。ところが、帰ってみると彼はすやすやと寝ているのです。私は安心するとともに感心しました。仲間には遠慮がちに接し、時には臆病な素振りさえ見せるのですが、敵と見るとひるむことを知らない麻呂。彼は本当はたくましい男(?)だったのです。
その後もデカトラと鉢合わせになることはあったのですが、麻呂が追い返すことさえ見かけられるようになったのでした。今、振り返ると、デカトラが最初に姿を現してから、麻呂は部屋の平和を守っていたように思えるのです。何日かすぎて、他の猫たちも彼がいることに安心して、ちょっとずつ姿を見せるようになりました。
【ノラ猫たちの名前募集】
猫たちの名前を募集します。7匹の猫たちに、「これは」と思う名前をお寄せください。(※猫たちについては、第3話「うちに来る猫たちの紹介」をご参照ください)
・ 猫の名前(7匹 すべてでなくても結構です)
・ ご自分のお名前(本名・ハンドルネームともに)
・ ご連絡用メールアドレス(ご本人確認用です)
・ 募集期間 11月15日(月)~19日(金)
応募先についてはこちら。ご応募は1人様1回とさせて頂きます。あらかじめご了承ください。
頂いた名前を集計後、Ustreamの番組「佐藤の部屋」で投票を行います。投票日は11月22日(月)21時からです。猫たちに素敵な名前をよろしくお願いします。ご応募、お待ちしております!
(文・写真=佐藤英典)