
比較的郊外に取材に出かける機会の多い私(佐藤)は、スマホを手放すことができない。GoogleMapsのアプリを見ながら、目的地まで歩くことが多いからだ。基本的に歩きが好きなので、30分や1時間は平気で歩いてしまう。その途上、ずっと地図を確認しつつ、「ここの道を右だな」とか「もう1つ先の筋を左だな」と、逐一確認しているのである。
スマホ・アプリがある限り、迷うことはまずない。したがって、困らないのは良いのだけど、その一方で最近「たまには迷子になりたい」と考えるようになった。はたして利便性は私を賢くしてくれているのか、疑いを持ち始めたのである。
・昔は何とかなった
今でこそ、スマホは当たり前の存在になった。だが、昔はスマホではなくガラケーだった。いや、それよりも前はガラケーすらなく、ポケベルだった。
ポケベルは基本的に電話番号が画面に表示されるというもの。後期の端末はカタカナ・アルファベット・絵文字が表示されるようになったが、それでも地図を表示させることはできなかった。手元で現在地を確認して地図を見るなんて考えられなかった時代だ。
そんな時代ですら、私は地元島根から東京まで何度も遊びに行っている。夜行バスで19時に島根から出発して、朝6時半に渋谷駅に到着。早朝の渋谷はどこにも行く場所がない。新宿駅では自分が何口にいるのかすらわからなかった。
何度迷子になったことか。交番で「ここはどこですか?」と、今となっては、何を言っているのかわからないような聞き方をしたものである。
それでも何とかなった。
今はどうか? 交番で聞くまでもなく、自分がどこにいるかわかる。GPSで現在地が表示されるので、自分の居場所を容易に確認できるからだ。
地図アプリで目的地までのルートを確認し、場合によってはナビを使えば画面上に矢印が表示されたり、イヤホンでアナウンスを受けたり。便利だ、これで迷う方が難しいくらいになった。それは喜ばしいんだけど……。
今は自分の頭の中で地図を描けなくなっている。ポケベル以降、パソコンを所有するようになった後は、家のプリンターで地図を出力して、目的地周辺の看板とか目印と付き合わせて、地図を頼りに出かけていた。それがあったから、不慣れな土地の地理を覚えられたし、何度も迷うことで頭の中の地図を更新し続けることができていた。
今はもうできない。どこにいるかわかるし、道を間違えたらアプリがルートを変更してくれるから。
段々と自分で考えること、体験することから遠ざけているような気がしてならない。世界は広くなったのか? いや、頭の中の地図は更新されないから、広くなっていない。ずっと数年前の地図のままアップデートできていないのではないか。
・地図アプリをオフにして
いっそのこと、スマホを置いて出かけるか? できるならそうしたいけど、一切の連絡手段を断つのは逆に不安だ。たとえ数時間であっても、いざという時に対処できない。では、アプリを見なければいい。それも考えたが手元にスマホがある限り、思わずタップしてしまう気がする。何かいい方法はないか……。
AIと相談したところ、アプリの使用を制限する機能を使えばよいという結論に至った。
Android端末なら「設定」>「Digital Wellbeing と保護者による使用制限」から「フォーカスモード」を呼び出して……。
(Google)マップにチェックを入れるだけ。
iPhoneなら「設定」>「スクリーンタイム」と進み、「許容時間」からマップの使用時間を設定すれば良いようだ。詳しい設定方法は、各自で確認していただきたい。
そんなわけで無事に迷子になる術を見つけたので、次回遠方に出かける際には、思い切ってGoogleMapsに頼らず、向かって行きたいと思う。いや、仮に近い距離であっても、地図アプリに頼らずに向かっていけば、ちょっとした冒険になるかも? たまには迷子になる。利便性からあえて離れて、不便の中で見出せるものを探したい。
執筆:佐藤英典
イラスト:Gemini
Screenshot:Android