
昨年の冬、父が他界した。葬儀も済ませ、その他もろもろの手続き関係も終了。お墓は作らず、海に散骨するという形をとった。
それはさておき。
父が使っていた部屋を、遺品整理がてら大掃除していた時のこと。引き出しから、ひとつのサングラスが出てきた。そして母はこう言った。
「これは、あなたが使いなさい」
こうして私のもとにやってきた、かなり年季の入ったサングラス。たまに父がサングラスをかけていたような気もするが、あまり「サングラス=父」という印象はない。
しかし、このサングラス。デザイン的にはかなりレトロなのだが……
めちゃめちゃカッコいい!
ツルを見てみると……
DUNHILL(ダンヒル)!
おお。親父、なかなかシャレたもの持ってたんだな……と思ったら、違った。このサングラス、もともと父のものですらなかったのだ。
・さらに1代さかのぼる
母によると、このサングラスは、もともと母の父が愛用していたものらしい。つまり私の母方の祖父。我が家での通称「じいじ」である。
じいじ → 父 → 私。
なんと、このサングラスは3代にわたって我が家を渡り歩いていたのだ。
ちなみにレンズには度が入っている。ためしにかけてみると……
クラクラする。
じいじが亡くなったあと、形見として私の父が受け継いだものの、度が入っていることもあり、父自身はあまり使わなかったようだ。
実際、我が家に残っているアルバムを確認してみても、父がこのサングラスをかけている写真は見当たらない。
唯一あるとしたら、いつぞやかの年賀状用に撮影した、「我が家は音楽一家」というギャグ写真のみ。
※父母はギター、姉はバイオリンを弾けるが、私はできない(うそ)なので鍵盤ハーモニカ。
それでも父は、ずっと大切に保管していた。そして父が亡くなったあと、今度は私のところへ回ってきたというわけだ。
・じいじに似ている
ちなみに、私はじいじと非常に顔がよく似ている。私の感覚で自分の顔を分析するなら、おでこの広さも含めて……じいじ40%、母40%、父20%──てな感じ。
なので、あらためてこのサングラスをかけて鏡を見てみると……
じいじのような男が映っていた。しかし、じいじではない。私である。
これは使いたい。めちゃめちゃ使いたいぞ。
でも……度が入ってるんだよなぁ……。
きっと父もこう思っていたに違いない。
・パリミキへ
そこで私は、足しげく通っているメガネの「パリミキ」に相談しに行くことにした。私が持っているサングラスの9割くらいは、この店で購入している。店に入れば、店員さんが「羽鳥さん」と呼んでくれるくらいには常連だ。
しかし今回の相談は、新しいサングラスを買いたいというものではない。
「このサングラス、レンズだけ交換できますか?」
祖父が使い、父が大切に保管していたダンヒルのサングラス。フレームはそのままに、度の入っていないレンズへ交換したいというわけ。
すると……
「できますよ」
おおっ! ただし、話はそう簡単でもなかった。
このダンヒルのサングラス、レンズのカーブがかなり強いらしい。
一般的なレンズに交換することもできなくはないが、この独特な曲面を生かすのであれば、ダンヒルに直接お願いした方がいいという。
そこで、パリミキからダンヒルへ依頼してもらうことになった。
〜そして数週間後〜
完成したとの連絡を受け、受け取りに行ってみると……
おおおおお! じいじの度が入っていたレンズが、度なしのレンズに交換されている。
しかも雰囲気は以前のまま。完璧じゃないか!! さすがダンヒル。そして、さすがパリミキ。
ちなみに価格は1万4300円。もっと高くなると思っていたので、個人的にはかなり意外だった。
そして実際にかけてみると……
これが非常によろしい!
今ではなかなか見かけないようなレトロなデザイン。そして何より、私と顔がよく似ているじいじが愛用していたサングラス。
私に似合わないはずがない。
サイズ的にもバッチリ。最近のサングラスは、私には少し小さく感じるものも多い。なにせ私は顔がデカい。ところが、このダンヒルは、そんな私の顔もしっかりと受け止めてくれる。
そう、懐が深い。
じいじの懐のように。
・3代目
じいじが使い、父が受け継ぎ、そして今、私のところへやってきたダンヒルのサングラス。
ということで……
私が3代目を襲名します。
父は自分ではほとんど使わなかったのに、このサングラスを捨てずに大切に保管していた。おそらく父にとっても、義父であるじいじから受け継いだ大切なものだったのだろう。
そして今度は私が使う。もちろん、父がそうしてきたように大切に扱いたい。
でも、大切だからといって引き出しの奥にしまっておくのではなく、私はガンガン使っていこうと思っている。「度なし」になったことだし、サングラスなのだから、やっぱり使ってナンボ。
そして、いつの日か。私の次の誰かへ、このサングラスを渡す日が来るのかもしれない。
じいじから父へ。
父から私へ。
そして、私からその次へ。
そんな歴史を背負ったサングラスに負けないような生き方を、私もしなければならない。
じいじのように。
親父のように。
執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24
▼父と私が祖父のダンヒルでキメた1枚