
アメリカをはじめとする世界44カ国で初登場1位を記録し、気鋭の映画スタジオ「A24」と、『ストレンジャー・シングス』の制作陣がタッグを組んだことでも話題の映画『バックルームズ(Backrooms)』が、日本でも2026年9月4日より劇場公開が始まった。
この作品はYouTubeの若きクリエイターが初監督を務めた作品ということもあって、制作陣の豪華さと相まって、公開前から注目を集めていたのである。
私(佐藤)も事前にYouTubeでしっかり予習をして、公開初日の1回目の放映で観てきたのだが、その正直な感想は……。う~ん、私の思っていたのとちょっと違ったし、人にオススメしづらいな~。う~ん…………。
・21歳の鬼才監督
先に1点お断りをしておく。映画とその世界観を区別するために、映画を「バックルームズ」と呼び、世界観を「バックルーム」と記載させて頂く。この作品はその世界観を理解するために、いくつか説明が必要なのでそれらは後述させて頂こう。まずは監督についてお伝えしたい。
監督を務めたのは21歳のケイン・パーソンズ氏である。そんな若い彼が、どうして豪華制作陣を従えてメガホンをとることができたのか? それには理由がある。
彼は「ケイン・ピクセルズ」という名前で、YouTubeチャンネルを運営しており、チャンネル登録者数360万人以上、総再生回数4億回を誇っている。彼が2022年、16歳の時に手掛けた短編動画「The Backrooms(Found Footage)」が世界的に話題となり、以来、シリーズ化すると共に、彼の動画の手法を参考に、類似するバックルームの動画が続々と投稿されるようになったのだ。
・バックルームとは?
さて、そもそも「バックルーム」とは何か? まったく知らない人は、それが何かをまず知りたいはずだ。バックルームとは、もともと海外の匿名掲示板「4chan」から端を発した、いわゆる都市伝説のひとつ。
2019年5月頃、誰かが壁面が全面黄色の何もない部屋の写真を投稿。そこに「現実世界の壁をすり抜けて落ちると、この空間にたどり着く」といった旨の1文をそえた。これがネットユーザーの想像力を刺激して、あとからあとから設定が加えられて、「バックルーム」というひとつの共同幻想が構築されていったのだ。
付け加えられた設定には、バックルームの世界は複雑に階層化されているだとか、「エンティティ」と呼ばれる怪物がいるだとか、「オブジェクト」と呼ばれる現実世界にはないモノが存在するだとか。
いわゆるシェアドストーリー(共有された物語:代表的なものに『クトゥルフ神話』がある)のように、その世界は果てしなく拡張していき、2つの代表的なWikiサイトで日夜議論が行われたのである。
そして2022年になってケイン氏が動画を投稿したことをきっかけに、YouTubeでも爆発的にヒットし、その盛り上がりは途絶えることなく、映画化して世界的にヒットしたというわけ。
・じっくり鑑賞するために
ここまで大まかにバックルームそのものを取り巻く環境についてお伝えした。私は公開初日に、東京・新宿の歌舞伎町タワーにある「109シネマズ」の初回上映に足を運んだ。新宿ならほかの劇場でも上映されることは知っていたが、プレミアムな環境でじっくり見たいと思い、4500円も払ってチケットをゲットした。
ちなみに私が予約した段階で、予約済みの座席は0(ゼロ)だったので貸切になるかと思ったら、上映時間には私を入れて6人になった。貸切じゃないのは残念だったけど、それでも混み合うことなく快適に鑑賞できた。
何より、ここはポップコーン・ソフトドリンク無料なのがいいね。上映前ならおかわりできるってことなので、最初からコーヒー2杯もらって、シアターに入りました。
・感想を一言でいうと
それで、126分鑑賞しました。本編ネタバレなしで率直な感想を申し上げると、一言でいって……。
「いろんな意味で難しい……」
だ。正直、私がこれまでYouTubeで観ていたケイン氏の動画と、結構異なっている。それは良くも悪くも違っているのだ。その明白な理由は、これまでのケイン氏の動画が「Found footage」(発見された記録映像)という手法で描かれている。
これは「フェイクドキュメンタリー(モキュメンタリー)」のひとつの手法で、臨場感を出すために古めかしい一人称で撮られた映像のことを指す。ケイン氏はこれまでその手法で動画を公開していた。
だが、映画では三人称視点での映像も取り入れているため、見え方と臨場感が異なる。発見された記録映像にはBGMがなく、ささやかなノイズが緊張感を演出しているのに対して、映画ではしっかりBGMがのっていて、演出感が出ている点に違和感を覚えた。
とはいえ、それはバックルームの世界観を知る人にとっての話なので、全然知らない人にはその点は気にならないかも。
しかしながら、世界観を一切知らないと果たしてこの内容を理解できるのか? という疑問も湧いた。おそらく「これは今、どうなってるの?」という疑問が絶え間なく続くはずである。
とくに構成上、冒頭とエンドクレジット後の映像で「?」が浮かぶ可能性が高い。これは予習なしで理解できるだろうか? 含みがあるとかないとか、そういうことではなくて、かなりわかりづらい気がする……。
予備知識がある私には、「誰かの気持ち悪い夢」を見させられているように思えた。強いて例えるなら、直接的な恐怖演出の多いデビッド・リンチ監督作品といったところか。
・これを見ておくと良いかも
もしも作品を観る予定で世界観を知らないなら、少しだけ予習することをオススメする。映画視聴に関して、非常にわかりやすい説明動画をYouTubeチャンネル「Backrooms Japan」で公開しているので、あらかじめそれを見るとより深く理解できるはずである。
それからケイン氏が最初に上げた動画「The Backrooms (Found Footage)」も観ておくと良いだろう。当時16歳だった彼の手掛けた映像作品、それだけでも驚嘆に値する。
世界的なヒットを考えると、おそらく続編が作られることになると思うのだが、日本ではどれだけ受け入れられるだろうか。ドラマ化した方がウケる気もするのだが……。とにかく興味深い世界観なので、興味のある人はぜひ劇場でご覧頂きたい。
参考リンク:バックルームズ
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
▼『バックルームズ』本予告
▼ケイン・パーソンズ氏がYoutubeに最初に上げた動画「The Backrooms (Found Footage)」
▼BackroomsJapanの映画視聴前の予習ポイント