香川といえば、言うまでもなくうどんである。先日、金比羅山を訪れた際のこと。参道の入り口付近にあった店のメニュー看板に、私(耕平)の目は完全に釘付けになった。その名も……
『温玉ぶっかけうどん風ソフトクリーム』
うどん風のソフトクリームらしい。そういえば名古屋で「ひつまぶしアイス」、秋田で「みそラーメンアイス」なんてものがあったが、ご当地の名物をアイスにする流れが、ついにうどん県にも到達したということか。しかも温玉ぶっかけうどんは、私の好物でもある。好物だからこそ、本物との違いも分かるはずだ。
果たして、どこまで本物に近づくのか? 本物の温玉ぶっかけうどんと同時に注文して、その再現性を検証していこう!
・参道で衝撃の看板
金刀比羅宮の表参道、その入り口付近に構えていたのが『こんぴらうどん参道店』だ。
木造2階建ての和風建築で、紺色の暖簾には黄色い文字で「こんぴらうどん」。ちなみに2階の横長の木製看板には、右から左読みで「こんぴら算額茶屋」とあった。
そして、私の足を止めたのが店頭のこの商品看板である。
オレンジの縁取り文字で『温玉ぶっかけうどん風ソフトクリーム』。白地に大きく「580円(税込)」。温泉たまご。レモン。しょうゆ。もうソフトクリームの説明ではない。
一方、店頭のメニュー表を見ると、本物の『温玉ぶっかけ』は730円。
これは再現性を検証するしかない! その想いと同時に、すでに食事を済ませていたが、いつの間にか吸い込まれるように入店していた。
・食べ比べ開始!
なかなか「〇〇風」のスイーツと、オマージュ元の料理をその場で食べ比べられる機会は、そうそう無い。待つこと約5分。うどんとアイスが揃ってテーブルに運ばれてきた。
『温玉ぶっかけうどん風ソフトクリーム』が入っているのは、外側が白、内側が藍色の刷毛目のどんぶり。対する本物の温玉ぶっかけうどんは、白地に藍の縞模様のどんぶり。器の形も大きさも、ほとんど変わらない。
中身がまた芸が細かい。白いソフトクリームが、うどんの麺束を模して細い筋状に絞り重ねられている。手前には殻をむいた温泉たまごが丸ごと1個。その上にレモンの輪切りが1枚。麺の隙間には、しょうゆだしらしき茶色いタレがうっすらとかかっている。
唯一の違いは、添えられているのが箸ではないこと。持ち手を紐で巻いた木のさじが添えられていて、そこでようやく「あ、こっちはアイスだった」と思い出す始末だ。それくらい、見た目の再現度が高い。
まずは本物から。麺を持ち上げて一口。
普通にうまい。
やはり香川のうどんは一味違う。エッジの立ったコシと、だしの塩梅が完璧だ。温泉たまごを崩して麺に絡めれば、角がとれてまろやかになり、そこに天かすの油と青ねぎの香りが乗ってさらに手が止まらない。参道の入り口でこれが出てくるのだから、香川は本当に恐ろしい。
続いて、いよいよ『温玉ぶっかけうどん風ソフトクリーム』である。白い球体が割れ、オレンジの黄身が白いクリームの上にとろりと流れ出す。麺状の絞り目が残っている面と、黄身が混ざり始めた面が同居する、なんとも罪深いビジュアル。
卵黄を絡めて口に運んでみると……
なんじゃ、こら?
黄身のコクと塩気が甘さを押さえ込み、「甘いもの」から「食事っぽいもの」へと重心がスライドする。卵黄とアイスがこんなにも相性バッチリだとは思わなかった。
よく考えればカスタードもアイスクリームも卵黄が原料なわけで理屈としては当然なのだが、それを温泉たまご丸ごと1個でやられると納得の質が違う。
次にレモンを絞ってみたらどうなるのか? まずは本物の温玉ぶっかけうどんから試してみる。
一口食べると、やっぱり王道というか、普通に美味い。そして『温玉ぶっかけうどん風ソフトクリーム』の上に乗っていたレモンを絞ってみる。
これがまた効く。酸味が入った瞬間に後味が一気に軽くなり、甘さと塩気とコクの三つ巴に「爽やかさ」という審判が割って入る感じ。うどんとまではいかない。いかないが、普通にスイーツとして新感覚の味だ。まじでハマりそうである。
そこからは、うどんとソフトクリームを交互に食べてみた。
うどん!
ソフトクリーム!
うどん!!
ソフトクリーム!!!
……だんだん味が麻痺してきたので、最終的にうどんとアイスを混ぜて食べるという、美味すぎて脳がバグり凶行に走る。
で、これはこれでビックリするくらい相性が良くて、ペロッと平らげてしまった。
── そんなわけで『温玉ぶっかけうどん風ソフトクリーム』は、うどんをオマージュしたスイーツで、ここまでのクオリティは少なくとも私の人生の中で味わったことがなかったというのが感想だ。
器と盛り付けで「うどんに見せる」ところから、温泉たまごとレモンで「味を動かす」ところまで、設計が徹底的に考えられていて、ネタで終わらせる気がまるでないのである。
好物の温玉ぶっかけと並べて食べても、こっちはこっちでちゃんと成立していた。琴平を訪れる機会があれば、ぜひ本物とセットで頼んでみてほしい。730円と580円、締めて1310円の贅沢をぜひ味わってほしい。
・今回ご紹介した店舗の詳細データ
店名 こんぴらうどん参道店
住所 香川県仲多度郡琴平町810-3
時間 8:00〜17:00
定休日 年中無休(公式サイトに「現在は不定期営業のため新着情報でご確認ください」の注記あり)
参考リンク:こんぴらうどん
執筆:耕平
Photo:RocketNews24.
▼本場のうどんをオマージュした、ここまでの完成度のスイーツを味わったこたがない