ロケットニュース24

「エヴァンゲリオン」作曲家・鷺巣詩郎に聞いた音楽の作り方 / 映像+生演奏ライブ『BACK TO NEON GENESIS』徹底レポ

52分前

ネットとは何が起こるか分からないものだ。まさか気ままに書いていた『エヴァンゲリオン』の記事を公式に捕捉されていようとは。私(中澤)が「壁に耳あり障子に目あり」を感じたのは一通の問い合わせからだった。そのメールにはこう書かれていたのである。

「突然のご連絡失礼いたします。当方は、3月28日(土)に大阪にて行われるコンサート「BACK TO NEON GENESIS」の宣伝窓口でございます──」。『BACK TO NEON GENESIS』ってエヴァンゲリオンの映像+生演奏シネマティックコンサートやがな……!

なお、本記事にはライブ演出に言及する部分がございます。そのため、コンサートのネタバレを避けたい方はご注意ください。

・一旦ビビる

本当に突然のご連絡にブルった。なにせこちとらテレビシリーズ放送時には13歳で終了後に14歳になり、1997年の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』に合わせた深夜再放送時はまさしく14歳だったリアルタイム世代である。

もちろん、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』でも記事を何本書いたか分からないくらい熱狂していた。大した情報や深い考察もなくただ好きだから書いただけのコラムも多い。まさか、そのエヴァ公式から怒られる以外の問い合わせが来ることがあるなんて。

・落ち着いて読んでみよう

いや、落ち着け。よく見たら宣伝窓口って書いてるじゃないか。なんかボヤかしてるな、これひょっとして新手の詐欺か? そこで続きを読んでみたところ……


「本コンサートの指揮をつとめる鷺巣詩郎先生より中澤さんに本コンサートの取材をお願いしたいとの事をご相談預かりましてフォームへご連絡させていただいております。本当に突然のことと思われますでしょうが、鷺巣先生が中澤さんのご執筆記事にご注目されており、たってのご希望ということでした。(中略)

本件につきましては、お電話いただいても問題ありません。ぜひご確認くださいませ。よろしくお願い致します」(※メール本文は送信元の許諾を得て掲載しております)


──詐欺どころか、鷺巣詩郎先生で笑った。いや、笑えない。エヴァ作曲家が私の記事を読んでるって? 半信半疑だが、これ逃げちゃダメなヤツか?

・横転

そこで連絡を返したところ、一旦担当者たちとオンラインミーティングをする運びに。私としてもここで見極めようと思って急遽セッティングされたオンラインミーティングに出席したところ、その場に来たのは……

ガチで株式会社カラーの人たちで横転。公式も公式、ド公式であった。まさかカラーの中の人と仕事でかかわることがあろうとは。そんなわけでコンサートの撮影許可もいただくことができたため、大阪まで行ってみた。

・現地の雰囲気

2026年3月28日にグランキューブ大阪(大阪国際会議場)のメインホールで開催された『BACK TO NEON GENESIS』大阪公演。開場の際の行列からは沸々とした静かな熱気があった。

私も行列に並んで会場に入ってみたのだが、お客さんの楽しみな気持ちが伝播(でんぱ)してくるような雰囲気に、好きの濃度の濃さが感じられる。並ぶのさえちょっと楽しい!

入口では入場者特典ももらえる。入場特典はタイトルロゴアクスタのようだ。こういうグッズって見る度に一生その時の記憶が蘇るのが良いよね。現地に足を運んだ体験を保存しておく装置的役割が大きいと思う。

それで言うと、グッズコーナーも会場限定販売商品や数量限定のレア商品が揃っているところが良い。鷺巣詩郎先生の手書きスコアトートバッグや高橋洋子さんのオリジナルグッズもあった。

・コンサートスタート

会場の席に座ると、ステージ正面奥に大きいスクリーンがあって、その前にオーケストラがセットされている。このスクリーンで『エヴァンゲリオン』シリーズの映像を流しつつ、それに合わせて生のオーケストラコンサートをするというからファンとしては贅沢に感じざるを得ない。

始まる前から高まる期待感。一方で、私的には楽しめるかちょっとした不安もあった。それは何枚も出てるサントラ全部を聞いてるわけじゃないから、セットリストにピンと来なかったらどうしようということ。と思いきや……


<これ以降、演出に言及するためネタバレ注意>



いざ始まってみると、1曲目から『残酷な天使のテーゼ』だった。キタァァァアアア!

もう鳥肌。音楽が流れ出した瞬間から、杞憂が全て吹き飛んだ。鷺巣詩郎作曲じゃない曲もやってくれるのね。完全に窓辺から飛び立ってしまった。それにしても嵐のように切り替わる映像とオーケストラの同期具合が半端ない。

・指揮姿に感じる人柄

クリックを使用してるとはいえ映像とピッタリ同期させる超一流スタジオミュージシャンたちの演奏! それゆえ、鷺巣詩郎さんはポジション的には指揮者だけど、動きが自由だ。っていうか……


指揮棒投げてはる……!

どちらかと言うと魅せる方向に振り切った指揮に人柄が垣間見えた気がした。映像はTVシリーズ中心に構成されていて、久しぶりに見るシーンもあり、音楽とシンクロして当時の記憶が蘇る

・漂う記憶

戦闘BGMの「DECISIVE BATTLE」の重厚な雰囲気や、初号機暴走の時の「THE BEAST Ⅱ」の荘厳さは中二心にたまらんかった。『まごころを、君に』の挿入歌「Komm, süsser Tod/甘き死よ、来たれ」とか、シンジくんのSDATプレーヤーのごとく永遠に聞いたものだ。

当時は、鷺巣詩郎さんのことを知らなかったけど、こうして改めて聞くと、エヴァンゲリオンで最初に私に刺さったのは音楽だったのかもしれない。ほとんどの曲が口ずさめる。染みこんだ記憶が辺りを漂うみたいだ。まさしく魂のルフランである。


コンサートが終わった直後、しみじみとため息が出た。補完されてしまいそうな2時間だった。

・鷺巣詩郎に真相を聞いてみた

返す返すもこんな人が私の執筆記事に注目してるなんて信じられない。ワンチャン、人違いじゃないだろうか。そこで念のため本人に確認してみた。鷺巣先生、ロケットニュース24見られてるんですか?

鷺巣詩郎「見てます見てます。僕は普段日本にいなくて、ロンドンかパリにいるので、日本のサイトで見れないものが多いんですね。例えば、Yahoo!関連とか一切見れないですし、大きいニュースサイトでも見れないものがたくさんある。

ロケニューの一番良いところは割と時事ネタをやってくれるところですね。しかも、松屋の新しいメニューとかだから和むじゃないですか。こういうご時世で変なニュースばっかりの中で」

──ロケニュー呼び……! ありがとうございます!! でも、その中で私を指名した理由とは?


鷺巣詩郎「まず今回大阪なんで大阪出身の方がいいなと思ったのと、なんと言っても中澤さんの良いところは同業者のミュージシャンでソングライター、なおかつJASRACの正会員じゃないですか。僕も正会員なので仲間です。JASRACの明細を公開したり、立ち食いそばの記事も興味深く見てます」


──私がミュージシャンなことを知っているのはガチ勢だ。光栄すぎてL.C.L.になりそうだが、せっかくだからミュージシャン視点の話を聞いてみることにした。「甘き死よ、来たれ」のアレンジが凄くバロック調になってたんですが、あのアレンジは今回が初めてですか?


鷺巣詩郎「そうですね。初演です。普通だったら劇中の挿入歌は、あまり周知されてないからアレンジを変えても意味がないんですけど、ありがたいことにエヴァンゲリオンの場合、『甘き死よ、来たれ』は世界的に知られた楽曲になったので、色々小ネタを仕込んでます」


──僕、あの曲が一番好きで、元々のUKロック的な高揚感も大好きなんですが、バロック調にグッと寄せたアレンジがまた別の曲に聞こえました。


鷺巣詩郎「どうイジっても話題になってくれるというのがあるので、凄くイジり甲斐があります。なので、中澤さんがそこに食いついてくれたというのはしてやったり(笑)

今回は『BACK TO NEON GENESIS』ということで、1995年から始まったTVシリーズの『新世紀エヴァンゲリオン』のフィルムコンサートです。厳密に言うと『甘き死よ、来たれ』は1997年の劇場版で流れたものなので、今回はひねりにひねってサプライズ的な内容になりました

──1997年の劇場版と言えば、アスカの弐号機が量産機と戦うシーンが印象に残ってます。ゆったりと美しいJ.S.バッハの「エール(Air)」の旋律との対比でより絶望的な部分が当時突き刺さったんですが、ああいった引用というのは鷺巣先生もかかわってるんですか?


鷺巣詩郎「いえ、TVシリーズで第九が流れたり、劇場版でバッハが流れたりする引用は庵野秀明監督の指示です。おっしゃる通り、音楽演出は画期的ですよね」


──ミュージシャンとしては1つのエヴァの特徴だと思っています。そして、もう1つミュージシャン視点で言うと、鷺巣先生の曲って『THANATOS』とかはもちろんなんですけど、日常的な『ASUKA STRIKES!』でも、メロディーが鼻歌で勝手に出てくるくらい強烈ですが、作曲の時にメロディーから考えてるんですか?


鷺巣詩郎「んー! 素晴らしい質問ですね。同業者らしい。やっぱりメロから作る人とか、シンガーソングライターで言うと詞から作る人とか、ポップスの中でもリズムのグルーヴから作る人もいますし。色んな人がいますけども……

僕は全部同時に作る。どんどんどんどん色んなものが湧いてくるんですね。特にエヴァンゲリオンのような劇伴はメロディーもアレンジも一緒くたになって湧いてくる。それをとにかく譜面に書くスタイルです。僕の場合は、メロディーも伴奏もリズムも譜面の状態で湧いてくるので、それをそのまま残すという感じです

──凄すぎる。実は私はミュージシャンにこの質問を結構するのだが、一緒に出てくるパターンはあれど「譜面で湧いてくる」というのは初めて聞いた。解像度高すぎるだろ。いやはや勉強になりました。

・次は東京

そんな鷺巣詩郎先生が指揮する『BACK TO NEON GENESIS』は、オーケストラメンバーも30年前にオリジナルの劇伴録音に参加したミュージシャンを中心に編成されているという。

次の公演は2026年4月19日の東京国際フォーラムホールA。とは言え、この公演もすでにソールドアウトとなっているようだ。ゆえにチケットをゲットできた人は稀有なチャンス。今回のインタビューも含めて見てみると、より音楽に深みが感じられるはずだ。

参考リンク:EVANGELION「BACK TO NEON GENESIS
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
©︎khara/Project Eva. ©︎1997 khara/Project EVA.

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