
絶えず発着する電車の音。行き交う人との間に隔たりはなく、ホームにむき出しのカウンターの奥から漂う美味しそうな香り。今や都内でも珍しい、駅ホームの立ち食いラーメン『西新井らーめん』が2026年3月31日に閉店する。
そんなわけで食べてみることにしたんだけど、実際食べてみると1時間の行列も割と納得であったためお伝えしたい。そう、めっちゃ行列になってたんです。
・ある晴れた土曜日
晴れた休日、東武伊勢崎線に乗って荒川を渡った私(中澤)。足立区も色々あると思うけど、東武伊勢崎線沿いの駅前は、昭和的な純喫茶もあって散歩に適した雰囲気であった。
陽気に誘われて荒川辺りまで来たけど、何か1つ目的を達成して帰りたい気分。今日の手ごたえがあったら完璧な休日なんだけどなあ。そこで西新井駅のホームにあるという都内でも珍しい立ち食いラーメン屋に寄ってみることにした。その名も『西新井らーめん』である。
・行ってみたら
昭和っぽい懐かしさということをテーマにするならば、駅のホームの立ち食いラーメンとか打ってつけではないか。そう思いながら『西新井らーめん』がある西新井駅3、4番線ホームに行ってみたところ……
めっちゃ並んでた。
立ち食いそば屋を巡る『立ち食いそば放浪記』も連載している私。駅そばにおいては、歴史ある駅ホームの店を結構見てきた方だと思うけど、こんなに行列なケースはなかった。今だこの人気は凄い。と思いきや……
店舗の貼り紙で3月31日に閉店することが書かれていた。この駅ホームの店は56年の歴史に幕を下ろすという。駅前に2号店があるらしいけど、別れを惜しむお客さんがつめかけているのかもしれない。なにしろここで半世紀以上だからなあ。
・失くしてしまった何か
ゆえに、外観も非常に味がある。ホームにむき出しのカウンターは現代の駅の飲食店ではお目にかかることがない。駅の雑踏と境界がなく、肩擦り合わせて食べる雰囲気には、時代の忘れ形見のような失くしてしまった何かが感じられる。
そこで私も券売機で食券を購入して行列に並んだ。じりじりと進む列。カウンターにたどり着き食券を引き換えできたのは1時間ほど後のことだった。
・ある意味納得の味
私が注文したのは「チャーシューメン(税込850円)」。メニューはいずれも素朴な内容で700円~850円の間。当然、チャーシューメンも手間をかけたこだわりの1品という雰囲気ではなく、気楽に食べられるチャーシューメンという感じだ。
スープを飲んでみると、町中華のなんでもない醤油ラーメンスープの味がする。ツルしこのストレート麺もなんでもなさに拍車をかけていて、極めて肩の力が抜けた味だ。
ただ、チャーシューに塩が効いており、そのチャーシューが味を引き締めるので最後まで全く飽きずに食べることができた。なんでもないのにバランスは良い。意外と思い出に残るのってこういう味なのかもしれないなあ。
私はラーメンマニアというわけじゃないけど、別れを惜しむ人がつめかけるのも理解できる味であった。なんでもない一瞬っていうのが実は一番得難いものなのかもしれない。
・消えゆく風景と引き継がれるDNA
なお、そんな『西新井らーめん』の歴史を継ぐ駅前の2号店の様子もサラッと見てみたところ、こちらはカレーライスとかチャーハンもある様子。そして、ステーションラーメンというメニュー名にはDNAが感じられた。
時代は令和となり、消えゆく昭和の風景。だが、時代が変わっても引き継がれていくものもある。時の流れの中に連綿としたものを感じたのだった。ラーメンだけに。
たまにはこんな休日も良いだろう。都内だけどなんだか旅をしたような気分になれたのでした。
・今回紹介した店舗の情報
店名 西新井らーめん
住所 東京都足立区西新井栄町2-1-1 東武伊勢崎線西新井駅3、4番線ホーム
営業時間 8:00~20:30
定休日 無休
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼その歴史は駅前店(東京都足立区西新井栄町2-8-2)に引き継がれていく