
突然だが、あなたは蚕(かいこ)を食べたことはあるだろうか? 食べるもんじゃない……と思う人もいるかもしれないけれど昆虫食の定番でもある。ゆえに、私(中澤)は取材で何度も蚕を食べてきた。
虫が大の苦手で、なんなら生きてる蚕は触れない私。最初は当然ビビり散らかしていたわけだが、さすがに何度も食べるうちに慣れてしまった。相変わらず触れないけど食べることはできる。これぞ適応。
だがしかし、こんなにデカイ蚕は初めてだ。デッケェェェエエエ!
・謎のディナーに招待された
異文化の風が吹く池袋駅西口北側。チャイナタウン化しているこの一帯は、食べ物も中国人が食べにくるガチの中華料理店でいっぱいだ。そのため、日本に寄せてない “ガチ中華の聖地” として知られている。
飲食の中心は歓楽街の西一番街。駅から行くとストリートの入口に門がある。「ようこそ池袋中華街へ」という感じなんだけど、中央通りの門入ってすぐ左手のビル5階にあるガチ中華が『大豊収(たいほうしゅう)』だ。
本日、私がここにやって来たのは、以前の記事でランチビュッフェを紹介したところ、経営者から「ディナーに招待したい」という連絡が来たから。客も店員も中国人が集まっていた『大豊収』。その経営者って普段相まみえることがない謎の存在すぎてシンプルに興味が湧いた。
・行ってみた
ただ、『大豊収』は池袋中華街でも昇り龍みたいに名を上げつつある店だ。池袋中華街の夜の帝王みたいなマフィア的人物だったらどうしよう。入り混じる興味と不安。何も分からない中、『大豊収』のある5階までエレベーターを上ったところ……
全くマフィアではなかった。『大豊収』を経営する川辺(かわなべ)さんは中国から帰化した女性で、夫の李(り)さんと2人で出迎えてくれた。2人とも20年近く日本に住んでいて、日本で出会い結婚したのだとか。
・なぜ池袋中華街で3店舗を運営しているのか?
ちなみに、『大豊収』以外に池袋中華街の『湘聚・湖南菜館』と『太陽城』も川辺さんが経営に携わっているとのこと。やり手である。
──川辺さんはなんで飲食店を経営しようと思ったんですか?
川辺さん「大宮の飲食店に入った時シェフの腕に感動して、そこのお店は味は凄く良かったんだけどお客さんがいなかったんです。『このシェフと飲食店をやったら絶対にウマくいく』と思ったので、最初亀戸の駅から10分くらいのところにお店を開いて20席の狭いお店だったので連日行列になりました。
なので、広くすると共に池袋駅近くに引っ越して。そのお店が『湘聚・湖南菜館(しょうしゅうこなんさいかん)』になりました。それで『湘聚・湖南菜館(しょうしゅうこなんさいかん)』がうまくいったので、今の『大豊収』を昨年オープンしました」
川辺さん「私の店は自分の舌で信用できる人を集めていて、今もほぼ毎日、味をチェックしています。同じシェフでも体調などによってちょっと濃くなってしまうこともあったりするので、その少しの差を見逃さないようにしています」
──池袋中華街だけでお店を展開しているのはなぜですか?
川辺さん「店を回りやすいからですね。経営者が店に顔を出さなくなると飲食店はダメになると思います。ランチビュッフェは1300円という安めの設定なんですが、その価格から『品質が良くないのではないか』という推測が生まれる可能性もあるので、品質にはこだわっています。野菜もその日の朝仕入れたものを使っています」
・ガチの東北部料理
話を聞きながら食べた中国東北部の郷土料理「鉄鍋炖(テッカドン)」にもそのこだわりが感じられた。机に設置された巨大な鉄鍋に色んな具材を投入する中華版鍋なんだけど、蒸気で肉まんとか蒸しパンまで同時に作る豪快さには大陸を感じる。肉まんが肉汁だくだくでウマイ。
この鉄鍋炖を始め、夜はディナーメニューとなっている『大豊収』。酢豚とかも東北部の酢豚であるため、私が知ってるものと全然違った。
炒め料理という感じじゃなく、どちらかと言うと豚肉の天ぷらに甘酸っぱいタレがかけられているみたいな一品なのである。運ばれて来た時「これ何?」って聞いちゃった。カリカリや。
・東北の深淵
中国って広い。副菜ですらそう感じる『大豊収』のディナーメニュー。だが、広さだけではなく私が深さを感じたのが次の串焼きメニューだった。その名も……
「焼き蚕のサナギ串」である。茶碗蒸し、水煮と様々な蚕を食べてきた私だけど、串焼きは初めてだ。これいっとかないとダメだろ。
しかし、注文しようとしたところ「大丈夫ですか?」と何度も確認してくる川辺さん。本場の人が何を心配するというのか。蚕って普通でしょ。大丈夫大丈夫。こちとらロケットニュース24やぞ。と思いきや……
デッケェェェエエエ! さすが大陸。今まで見た食用の蚕の中で一番デカイ。羊肉の串焼きだと1本で事足りる串を2本使って支えてる。
川辺さんが心配していたのはこのサイズ感なのだろうか? そのデカさにはちょっとビビったけど、まあ食べる分には無問題だ。そこでさっそくかぶりついてみたところ……こ、これは!
エビっぽさが強い。虫は基本エビっぽい味であることはよく言われるけど、これまで食べた蚕はエビの奥に消せない虫オーラが感じられた。多分殻の味だと思うんだけど、この蚕は身の分量が多いゆえか、エビの比率の方が強く感じられるのである。
その身の味にはミルキーさすらあった。断言できる。「今まで食べた蚕の中で1番ウマイ」と──。
・衝撃
今まで食べた蚕って何やねん。知らないうちに蚕の品質が味で分かるようになっていたことに自分でも衝撃を受けずにはいられなかったが、なぜか川辺さんも衝撃を受けていた。いまだにちょっと心配そうなのである。どしたん? 蚕って普通に食べます……よね?
川辺さん「いえいえ普通ではないです! 中国でも無理っていう人多いですよ。どちらかと言うと、味よりも栄養価が高いのが良いところですね。中国では卵何個分の栄養価とかよく表します」
──期せずして本場の人をビビらせてしまっていた。中国人的には文化的に普通の食べ物になってるんだと思っていた。そっかー、中国東北部の人からしてもゲテモノ扱いなのかこれ。文化は違えど、人の感覚ってそこまで違わないのかもしれない。
・非日常が味わえる
とは言え、それだけ濃い東北が『大豊収』にはあることが伝わったのではないだろうか。もちろん、普通に羊肉や牛肉の串焼きもある。
鉄鍋炖はじめ、本場すぎた『大豊収』のディナー。見知らぬガチ東北料理があふれかえる非日常感は、会食などに盛り上がるに違いない。
・今回紹介した店舗の情報
店名 大豊収鉄鍋炖 池袋西口店
住所 東京都豊島区西池袋1-23-1 エルクルーゼビル5階
営業時間 11:00~23:00
定休日 無休
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼鉄鍋炖のスペアリブ鍋は税込7678円だけど、全員で分けれる豪快な量なので高いという感じもしない
▼ランチと比べると値は張るが、鉄鍋炖はじめ、ディナーは会食向きのラインナップが揃う
▼中国東北部で300年以上の歴史を誇る料理らしい
▼私と李さんは同じ1982年生まれだった。人生色々である。
池袋ガチ中華界の影の実力者・李さん、同い年でした pic.twitter.com/vfyX9pRyMC
— 中澤星児(ロケットニュース24) (@sorekara_jona) February 25, 2026