
日本最強の “粉もの” と言えば、ご存じ「お好み焼き」である。たこ焼きと違って専用の調理器具が無くていいのがイイ! 誰が作っても安定的に美味しいことも人気の秘訣だろう。
ところでみなさんは「お好み焼き」と聞いて「関西風のお好み焼き」と「広島風のお好み焼き」のどちらを思い浮かべるだろう? 私は前者なのだが、広島県民にとってはそうではないらしい。
・関西風の方が一般的?
私は大阪及び関西圏とは縁もゆかりもない東京生まれ千葉県育ちの人間だ。それでも自宅では定期的にお好み焼きが出て来たため、ちょっとした “おふくろの味” として捉えている。
もちろん我が家のお好み焼きは関西風で、生地にキャベツやら肉を入れてまとめて焼くスタイル。薄い生地の上に大量のキャベツと麺を後から入れる広島風を知ったのは、ずいぶん大人になってからのことだった。
そのため私は悪気なく「広島焼き」と呼んでしまうのだが、広島出身の親友からはいつも「お好みじゃ」と訂正されていた。その他、彼以外の広島県民からも何度か「お好み焼きね」と注意を受けている。
・広島の人に聞いてみた
全国的な認知度はわかりかねるが「大阪焼き」もしくは「関西焼き」という名称が一般的でない以上、広島風のお好み焼きは「広島焼き」でよくないだろうか? 名前がどっちだって俺は広島焼きが大好きさ!
というわけで、広島出身 or 広島在住の友人らに「広島焼きって言われるとイラっとする?」とヒアリングすることに。合計4名の回答は下記の通りである。
「イラっとはしないけど、戸惑いはする」(30代女性)
「イラっとはしない。でも広島の人ではないんだなと思う」(40代女性)
「する。お好みはお好みじゃ」(40代男性)
「する。控えめに言って “おたふくソースぶっかけんぞ!” と思う。特に大阪の人に言われるとイラつく」(30代男性)
なるほど。どうやらイラっとはせずとも「広島焼き」には違和感を覚える人が大半らしい。では「広島風お好み焼き」ならばどうなのだろう?
「関西風のお好み焼きと紛らわしくないから許せる」(40代女性)
「私も関西風お好み焼きと呼んでるのでフェア。許せる」(30代女性)
「だからお好みはお好みじゃ。一応、おっこんとも言う」(40代男性)
「お好み焼きの名称は入れて欲しい。アレンジっぽさはあるけど “お好み焼き” が入ってればまだ許せる」(30代男性)
・熱い理由
回答者は4名だけであるが「広島焼き」はダメでも「広島風お好み焼き」ならまだ許せるという人が多かった。その中の1人に「でも広島焼きでも広島風お好み焼きでも一緒じゃないですか?」と聞いてみたところ……
「お好み焼きは戦後の “一銭洋食” から始まって、復興のシンボルとしての一面があるんです。時代と共に復興が進み、具材もボリュームアップしたりしてるんですね。
おそらく多くの広島県民には、お好み焼きにある程度の誇りがあるのかなと。我々はお好み焼きという名称で育ってきているので、やっぱりお好み焼きという名前は入れて欲しいです」
熱いッッッ!
「一銭洋食」とはお好み焼きのルーツとされる、小麦粉と具材で作る鉄板焼き料理のこと。そこから独自の進化を遂げたのが広島焼き……いいや「お好み焼き」らしい。
つまり広島の人にとってお好み焼きはお好み焼きであり「広島焼き」ではないということ。その根底には戦後の復興を伴った歴史、さらには地元愛が絡んだ熱い理由があるようだった(記者調べ)。
いずれにせよ、少なくとも広島県に出かけたら「広島焼き」ではなく「お好み焼き」と呼ぶのが礼儀というものであろう。郷に入らば何とやら、である。
執筆:P.K.サンジュン
Photo:RocketNews24.