私の父親はNHKの『小さな旅』や日テレの『遠くへ行きたい』という旅番組が好きだった。


当の本人は旅行なんて一切しない “家大好き人間” だったが、若くして世界中を貧乏旅行しまくるバックパッカーの私に対し「お前はスゲ〜なぁ」と漏らしたこともあったので、おそらく “旅” に憧れていたのだろう。


そんな旅番組『遠くへ行きたい』のテーマ曲(作詞:永六輔、作曲:中村八大)も、また良かった。「知らない街を〜、歩いてみたい〜♪ どこか遠くへ〜、行きたい〜♪」。


歌の歌詞そのまんまな旅をする機会が唐突にやってきた。同僚・佐藤英典とのガチンコ旅対決。通称「はなれまSHOW」である。

対決の詳細や勝敗は、佐藤の書いた記事「予算5000円で東京駅からどこまで遠くに行けるのか? 北と南に分かれて対決したら激戦だった!」を参照してもらうとして、当記事は私(羽鳥)目線での旅日記。


最初にこれだけは書いておきたい。めちゃくちゃ面白かった! 本当に楽しかった! 海外ばっかり行っている私だけど、国内旅行も良いもんだなぁ〜と、しみじみ思ったのであった。


それではその日、私が何をしていたのか時系列に沿って書いてみたいと思う。ちなみに対決のルールは超簡単。予算は5000円。9時〜17時までの8時間で、どれだけ “遠くへ行けるか” の勝負となる。


【9時】

佐藤とは「午前9時に東京駅で待ち合わせ」との約束だったが、うっかり電車を乗り間違えた私は3分ほど遅刻してしまった。東京生まれの東京育ちのくせに、いまだに東京の地理や電車で迷子になる。


「どこに向かうか」は、コイントスで決めた。結果、私が北(東)、佐藤が南(西)へ行くことに。しかし私も佐藤も、どの方角が来ても良いように、あらかじめ “あたり” は付けていた。


私の作戦はこうだ。高速バスで一気に仙台へ。余ったお金で、さらに北上……。これで勝てると踏んでいた。ところが!


今からの時間ですと……今日の仙台行きはすべて満席です〜


ほげえええええええええ! こーゆーことがあるのが、行き当たりばったり、当日に行く方向が決まる「はなれまSHOW」の面白いところ。それにしても予定が大幅に崩れた。どうしよう……。


売り場の人に「できるだけ遠くへ行きたい」と、まるで逃亡犯のような相談をし、結局私は……


仙台よりだいぶ手前の「いわき駅(福島県いわき市)」までのバスチケットを購入。価格は3800円。これにて残りの交通費は1200円となった。


出発は10時なので、まだだいぶ時間がある。バス乗り場の近くで、自宅近くのまいばすけっとで購入したおにぎりを食べ体力チャージをしてから……


【10時】

バス旅の始まりである。



【11時】

11時すぎ、バスは友部サービスエリア(茨城県笠間市)へ。トイレを済ませて、再びバスへ。


【12時】

12時になっても、まだまだバスは北方面に爆走中。位置的には北茨城市あたり。ここで佐藤とビデオチャットを繋いでみると、


佐藤は熱海にいた。ここまでは想定内。


【13時】

東京駅出発から約3時間後の12時56分。バスはようやく「いわき駅」に到着!


で、ここからどうするか? だが、実はもう決まっている。バス乗車中に猛烈リサーチした結果、残り予算的にも手段はひとつしか残されていないことが判明したのだ。


それは……


15:21分出発の常磐線「原ノ町」行きに乗り、1200円以内で行けるところまで北上する……のみ。となると、出発まで2時間チョイも時間があるので、


いわき駅から徒歩10分ほどにある……


“いわきの台所” こと、「鮮場やっちゃば」へ行ってみることに。調べによると、この生鮮市場の中に、非常に評価の高い食堂があるとのことで──


それこそが、福島県最大級の魚屋「おのざき」の一角に併設している『潮目食堂』! このお店については、あまりにも美味し過ぎて別記事も書いたが、


栗原はるみ先生も絶賛の海鮮丼「わくわく潮目丼(2500円)」は、本当の本当にウマかった! 心の底から「駅から歩く価値あり!」と断言したい。


詳しくは過去記事『生鮮市場の鮮魚コーナーに併設されている小さな食堂の「栗原はるみ先生も絶賛の海鮮丼(2500円)」が感動級に絶品だった! いわき「潮目食堂」』にて。


その後、私は生鮮市場内にある業務スーパー的なお店も物色。くまなく乾物コーナーをパトロールすると……

いまだ見たことも味わったこともない干し蕎麦を2つも発見! もちろん両方、即ゲット。近日、連載「家そば放浪記」にて発表するのでお楽しみに!


【14時】

そんなこんなで「鮮場やっちゃば」を満喫してたら、時刻はもう14時を過ぎていた。とはいえ、次なる電車の出発まであと1時間以上あるので、とりあえずテクテクと駅に戻り……


ちょいと早めに切符を購入。価格は1170円なので、残りはたったの30円。今のご時世、30円で移動できる手段なんて東南アジアでも不可能だと思われるので、これがラストの交通手段だ。


ちなみに1170円の範囲で行ける駅は……

小高駅」。ここが私の、交通手段的な執着地点となる。



【15時】

定例となっている佐藤とのビデオ通話。と、ここで私は驚くと同時に焦った。というのも、佐藤が「浜松にいる」とかなんだとか言っていたからである。浜松! まじか! 思ってたよりも遠くに行ってる。これはヤバイ……。


かくして予定通り15:21分。常磐線「原ノ町」行きは出発した。すると、わりとすぐに……


海だ!!!


海が見えた〜!!!!!


海外でも日本でも、海が見えると私は無条件に興奮する。果たしてこの海は、どのあたりの海なのだろう。そういえば、冒頭でも書いた『遠くへ行きたい』の続きの歌詞は


知らない海を〜、ながめていたい〜♪」だった。


【16時】

車窓から見える景色は、海というより緑が多くなってきた。場所的には、福島県双葉郡の富岡町という場所あたり。そして16時36分。


小高駅に到着!


無人駅であり、切符はこちらの回収箱に入れるとのこと。趣(おもむき)があるなぁ〜。


思えば遠くへ来たもんだ……あっ、それは海援隊の歌だった。


さあ、佐藤との勝負の決着まで、残りあと20分ほど。


私は少しでも東京駅から離れようと、早歩きで北へ北へ。


佐藤も佐藤で、西へ西へと徒歩で『ゴー・ウエスト(ドリフターズの歌)』な動きをしていたもよう。



【17時】

そして17時! 私がたどり着いたのは


ここ!


東京駅からの距離は……


237km!


対して佐藤は……


233km!!


勝った! 勝った!! あまりの嬉しさに、意味もなくダッシュし始める私。人間、喜びがMAXになると走り出すのだな……と自分の行動を見て実感した。


勝負はここで終わったが、その後も私は徒歩で北上を続けた。というのも、あと20分ほど歩けば海にたどり着くことがわかったからだ。


どうせここまできたら海が見たい。

沈みゆく太陽。


暗くなる前に、なんとか海を見たい。ここからは佐藤ではなく太陽との勝負。急げ、急げ……!


結果、


私は勝った!


海だ〜!(村上海岸) 砂浜だ〜〜〜〜!


遠い街〜♪ 遠い海〜♪


夢はるか〜♪ 一人旅〜♪


……親父も、こういう旅をしたかったのかな。海を眺めながら、そんなことを考えていた。



ちなみにその後の私だが、


どうしても食べたいチャーハンが仙台駅にあったので、引き続き北上することに。ところが、仙台へ向かう電車の時刻が迫っている……というか間に合わない時間に達していたので、


海から「小高駅」までの約4kmを、リュック背負ったまま止まることなく全力でダッシュ(まじ)。


しかし予想に反してまったく息切れしなかったのは、おそらく朝におにぎり3つ、昼に豪華な海鮮丼と、パワー&スタミナのつくもの(炭水化物)を摂取していたからだろう。


かくして、Googleマップ的には絶対に無理だと判断されていた時間を、10分以上も巻いて小高駅に舞い戻り、電車を2本乗り継いで……


1時間40分後、仙台駅に到着。


ちなみに『遠くへ行きたい』の続きの歌詞は、「愛する人と〜めぐり逢いたい〜♪ どこか遠くへ〜♪ 行きたい〜♪」と続くが、


私は愛するチャーハンとめぐり逢っていた。


※詳しくは過去記事 → 【チェーンのチャーハン行脚】第22回:これを食べるためだけに仙台へ…。『中嘉屋食堂 麺飯甜(ミンパンティン)』のエビチャーハンに感じた “うそ” を参照)


食べ終えたらすぐ新幹線に乗り東京へ帰り……夜中に帰宅、荷解きをして、お風呂入って就寝し、


翌朝、普通に弁当を作り……


朝、ポールダンスの自主練をしたのち、普通に会社に出社したら、佐藤さんが「信じられない!」と本気でビビっていたことも付記しておきたい。


予算5000円の “小さな旅” だったが、思っていた以上に ”遠くへ行けた”。


心の底から楽しかった。


良い旅だった!


【完】


執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24
screenshot:Googleマップ

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