いまでこそ、スマホは生活に欠くことのできない当たり前の機器になっているのだが、その昔はパソコンもスマホもインターネットもなく、会えない人との意思疎通は電話か手紙しかなかった

家族間での情報のやり取りもアナログなやり方に頼らざるを得ず、たとえば母親の留守中に帰宅すると書き置きがあったりしたものだ。居間の机の上や冷蔵庫に付箋で一言貼ってあったりしてね。

あの連絡方法は今でも通じるのだろうか? ためしに後輩に「冷蔵庫にプリンとシュークリームがあります」と書き置きしてみた結果!

・あえての書き置き

先日私(佐藤)は足立区の洋菓子の工場直売所「アーモンドアイ」を訪ねて、安いのをいいことに少々買いすぎてしまったのだった。

ケーキを中心に7点を購入して編集部に持ち帰ったのだが、その日出社しているメンバーではさばき切れない。そこで、翌日出社予定の古沢崇道に書き置きをしておくことにしたのだ。


彼はたいてい1番に出社してくる。わざわざ紙とペンを用意しなくても、社内ネットワークやLINEをはじめとするメッセージアプリで伝えることもできる。瞬時に意志を伝えられる上に、手紙ほど時間差がないので齟齬(そご)も生まれにくい。電話のように手間を取らせることもないので、アプリを使うべきだとは思う。

だが、時間を経てこそ感じ取れるココロのつながりもあるはず。それを信じたい! そこで以下のように彼宛につづったのだった。


「たかみち 冷蔵庫にプリンとシュークリームがあります 食べてください さとう」


私は自分の母が私宛にそんな書き置きを残してくれたことを思い出しつつ、たかみちに食べてもらいたいという思いで付箋を冷蔵庫の扉に貼った。

はたして、彼はこのメッセージに気づいてくれるのか? そしてちゃんとプリンとシュークリームを食べてくれるのだろうか。明日が待ち遠しい……。


~~ 翌日 ~~


出社して冷蔵庫を見ると、付箋がない! これはきっと気づいてくれたはずだ。


いや待てよ、もしかしたら、たかみち宛のメッセージと気づきながら別の誰かが「食べていいんだ!」とばかりに、プリンとシュークリームを横取りした可能性もなくはない。残念だが、そういうイタズラにヨコシマな気持ちを働かせて思わずなんてことも。いや、それはみんなに失礼だ。でも……、もしかして……、ひょっとすると……。


さらに言えば、たかみちがメッセージを不信に思って、プリンとシュークリームに手を出さないという線も考えられる。これはもう、ただの言葉のやり取りではなく、私と編集部メンバー、そして私とたかみちの間の信頼関係を測るバロメーターなのである。


信じろ! 俺を信じろ! お互いを信じろ! 俺たちはひとつだ!!

ONE for ALL! ALL for ONE!(1人はみんなのために、みんなは1人のために)



はたして、扉を開けると……。


プリンとシュークリームがない! こ、これは食べたな、きっと食べてくれたんんだな!?


そしてたかみちに尋ねると……。

たかみち「プリンとシュークリーム、頂きました。ご馳走さまでした」

そう笑顔で答えてくれたのである。


よかった。令和になって、日々ココロを煩わすニュースは絶えない。この先、世の中はどうなってしまうのか? 5年後、10年後、いや来年の見通しすら怪しいなかで、私とたかみちは書き置きでココロを通わせることに成功したのである。

テクノロジーの進化は歓迎したい。便利になることは決して悪いことではないはずだ。だが、その利便性に目を奪われて、本当にココロを通わせることを忘れてはならない。たまには端末を置いて、アナログに頼ってみるのも悪くないもんだよ。

是非皆さんもご家族や友人、先輩、後輩に書き置きしてみて頂きたい。ただし、距離感を間違えると妙なことになってしまうのでご注意を。書き置きでココロを通わせよう!


執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24