闘牛と言えば、スペインをイメージする人が多いのではないだろうか。猛然とダッシュしてくる牛をひらりひらりとかわす闘牛士。少なくとも、特にマニアではない私(中澤)が「闘牛」と聞いて真っ先に思い浮かべたのはあの華麗なる戦いであった。
じゃあ、どこでその言葉を聞いたのかと言うと、鹿児島県の離島・徳之島である。2024年12月22日に「道の駅 とくのしま」がオープンしたことは以前の記事でお伝えした通りだが、そのオープン記念で闘牛が開かれるというのだ。こんなところに闘牛場が!?
だが、観に行ってみたところ思ってたのと違った。
・徳之島の印象
奄美大島を中心とする奄美群島の1つである徳之島。奄美大島ってなんか近いイメージがあるかもしれないが、徳之島は鹿児島県の南約468kmのところに位置しており、東京から行くなら鹿児島や奄美大島を経由する必要がある。鹿児島港からフェリーで来てみたら15時間かかりました。
レンタカーで島を走って感じたことは、景色が屋久島に似ているということ。ちょっと小高いところを走ると、すぐに見える水平線。そして、その逆側には深緑の山々。屋久島と違うのはサトウキビ畑だらけなところか。背が高いサトウキビが防風林のように生えているのがなんか良い感じ。
・思てたんと違う闘牛場
と、私の少ない経験値の中で徳之島を表現してみたが、有体に言うと、牛がダッシュする闘牛場みたいなデカイ施設があるような雰囲気じゃないんだよなあ。景色を見ながらそう考えているうちに会場に到着したのだが……
めちゃめちゃ良い味を出していた。ちょっとした広場くらいのところに牛が待機する様子にほのぼのせずにはいられない。
受付もほぼ町内会の祭の様相を呈している。子供の頃のマラソン大会を思い出して血がたぎる想いだ。ちなみにチケットは1000円である。
・思てたんと違う闘い
会場では牛小屋みたいな小屋が併設され、そこから「ブモォー!」と勇猛な鳴き声が聞こえる。やる気満々になっている牛を横目に階段を上ると、ついに闘技場が見えた。が、闘っていたのは……
牛 vs 牛。
そう言えば、桃鉄で宇和島の闘牛場を買った時に開催されるイベントは牛対牛だった。闘牛ってそっちの闘牛だったのか……!
期せずして、忘れていた子供の頃の思い出が蘇ったが、もちろん生で見るのは初めてである私。さぞやヤバイ激突が展開されるに違いない。と思いきや……
\もぉー/
\もぉー/
_人人人人人_
> 平和か <
 ̄Y^Y^Y^Y ̄
スピード感が相撲みたいなところに日本っぽさを感じた。客観的に見ると微妙に間抜けさが漂ってるんだけど、牛たちはガチ中のガチなのが愛らしい。牛ってホント良いものですね。
・ミリしら闘牛
それにしても、どうなったら勝ちでどうなったら負けなのかがいまいち不明だ。現場では実況の人がいて、NHKの相撲の解説みたいにアナウンスしてるのでどっちが勝ったかは分かるんだけど、なんで勝ったのかがよく分からないのである。まさしく、ミリしら闘牛状態。
ルール的なものの説明や明示とかは当たり前にない。優しくないところも伝統を見ているという感じがする。そんな気持ちで見ていたところ、片方の牛が逃げ出し、もう片方がそれを追いかけて丸い闘技場をくるくる回り出す2頭。
なんかよく分からないうちに、調教師さんたちが総出で牛を捕まえる流れになった。投げ縄みたいなのを牛の角に投げて捕まえようとする調教師さん。しかし、角が短く丸いために投げ縄がスルッと抜ける。
「牛の角は丸みがあるので捕まえるのも大変です」と実況。実況が続いているのがなんかシュールだ。そのドタバタした雰囲気はまるでギャグ漫画のトホホENDである。こち亀みたいになっとるやないか!
思わず、大丈夫なのか心配になったが、老若男女が見守る会場には一体感がある。結果として、ミリしらでも十分楽しめた。
・島民に話を聞いてみた
なお、後で調べたところ、「逃げると負け」という単純なルールらしい。ちょいちょい「逃げてね?」って瞬間あったけどね。ルールはあるが解釈の幅が広く「盛り上がればOK」的な雰囲気にも日本の伝統っぽさを感じた。
それにしても、会場では小学校低学年くらいの子供たちが前を陣取って声を張り上げていた。子供が闘牛に夢中ってそんなことある? そこで道の駅とくのしまのスタッフである安岡さんに島民にとって闘牛ってどういうポジションなのか話を聞いてみたところ……
安岡さん「闘牛は、子供の頃から勝った牛に乗せてもらったりするので、みんなもちろんルールを知ってますし、チャンピオンとかもチェックしている感じですね。推し牛がいる子も多いですよ」
──とのことであった。牛の顔の見分けがつかない私としてはなかなか興味深い。とは言え、実際肌で感じた闘牛の雰囲気を思い出すと、牛に愛着が生まれるのは十分理解できた。見たのはたまたまだったが、ただ島の景色を巡るだけよりもずっと風土が感じられたのであった。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
▼1試合終わったら牛が出て行って、次の牛が入場して次の試合へ
▼サクサク進んでたけど、長い時は1試合1時間を超える場合もあるという