ひさしぶりに実家に帰ったら、家が花壇(?)で囲まれていた。正しい呼び方がよくわからないのだが、玄関ドア以外、家の出入り口という出入り口に、植木鉢やらプランターやらが立体的に置かれているのだ。
なにごとかと母に聞くと「バリケードだ」と言う。このところ毎日のように報道される「闇バイト強盗」に対抗するためのバリケードであるとのこと。私はそれを見聞きして、ケニアのマサイ族を思い出した。
・植物バリケード
母がやろうとしていることは単純明快。窓などから容易に侵入できないようにしているのである。奥行きも十分にとり、外から窓を開けようとするのも困難なほどの立体的なガーデニング構造。
とはいえ目隠し的にはなっていない。外から完全に見えなくなってしまうと、逆に「強盗しやすい(隠れやすい)」という面もあるし、日当たりも悪くなってしまう。その点、実にちょうど良い塩梅になっていた。
私はそんなバリケードを見て、私の親友でもあるケニア・アンボセリ在住のマサイ族の戦士「ルカ」から教わったことを思い出していた。
・マサイ族のセキュリティ
マサイ族の集落は、必ず「トゲトゲの木々」で囲まれている。有刺鉄線よりも鋭角で痛いのではないか? というほどトゲトゲした木々で集落全体が囲まれているのだ。それはまるで『進撃の巨人』の壁(ウォールマリア)のごとく。
日中、集落の「入り口」は開放されている。しかし日が暮れるとその入り口も「移動式トゲトゲの木々」でピシャリと閉じられ、外からは誰も入ってこれない状態になる。それはなぜか?
野良ライオンや、野良ゾウの侵入を防ぐためである。
当たり前だが、ライオンやゾウなどは、言葉が通じない。「監視カメラが付いています」や「警備会社と契約しています」なんてシールなんて読めるはずもないので意味がない。なので物理的に「トゲトゲの植物」で防御しているのである。
ついでに言えば、マサイ族はトゲトゲ以外にも、数匹の「セキュリティ犬」もとり入れている。不審者や、不審な動物が集落に入ってこようものなら、犬がワンワンと吠え、住民たちに知らせるのだ。
・日本の治安の底が抜けた感
少し前、「あまりにもバカが多いことに絶望。闇バイトについて潜入調査中の「ベテラン迷惑メール評論家」が感じた知の格差」という記事を書き、思った以上の反響があった。
なぜここまで反響があったのかといえば、多くの人たちが「闇バイトをする人たちは本当のバカ」だと思っているからであると私は思う。ニュース等で逮捕者の供述を見ると、あまりの無知さに恐怖さえ感じる。
犯罪を実行してしまう彼らには社会的な常識が通用しないし、なんなら会話・言葉さえ通じない可能性すらある。それでいて凶悪・凶暴。となるとそれはもう人間というより「どう猛な動物」に近く、身を守るためにはとりあえずバリケードするしかない。
私の母がやっていることは、マサイ族たちが常日頃から行っている防衛策とほぼ同じ。いよいよ日本の治安もケニアのサバンナなみになってしまったのだな……と暗澹(あんたん)たる気持ちになっている今日この頃なのであった。
・ケニアに学ぶことも多い
ちなみに、アフリカにおける「治安の悪い国ランキング2024」においてケニアは第4位となっている。また、ケニアの首都ナイロビは世界3大危険都市(世界3大凶悪都市)のひとつともされている。
私は過去、何度もナイロビに行ったことがあるのだが、ホテルというホテルはほぼすべて、触れたら即死レベルであろう高圧電流の電気フェンスで覆われている。当然、入り口は分厚い鉄のバリケード門。
そのうち日本もケニア・ナイロビのようになってしまうのかも……なんて思いつつ、少しでも親が安心して生活できるよう、なる早で実家にセキュリティカメラなどを設置しに行こうと思っている。
参考リンク:ビィ・フォアード「アフリカ治安ランキング」
執筆:迷惑メール評論家・GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
こちらもどうぞ → 『GO羽鳥の【実録】迷惑メールシリーズ』
▼マサイ族の集落はトゲトゲのバリケードで囲まれている(空撮)
▼マサイ族のセキュリティ犬。
▼ドライバーのチャオスがマサイ族の集落で購入した戦闘用の武器。
▼ナイロビの一般的な家のバリケード。
▼別の家の原始的なセキュリティ。よじ登れないようになっている。
▼ホテルもバリケードで守られている。
▼高圧電流の電気フェンス。
▼私の名前は羽鳥(HATORI)だが、ケニアの「HATARI」は、ケニアNo.1のセキュリティ会社である。
※参考リンク:HATARI(英語)