2024年9月6日、ついにエイリアンシリーズの新作『エイリアン:ロムルス』の上映が始まった。『エイリアン』と『エイリアン2』の間の時期に起きた出来事を描いている。

監督は『ドント・ブリーズ』シリーズなどの話題作を連発しているフェデ・アルバレス。ホラー・スリラー界で今もっとも注目度の高い監督の1人がエイリアンの新作を作ったらどうなるのか……? 

これが気にならないシリーズファンはいないだろう。私も試写会で視聴させて頂いたが、もしかしたら今作は、シリーズで最も初代に近しい視聴体験を持つタイトルの1つかもしれない。

・若者が主役

エイリアンシリーズと言えば、基本的には何らかの目的を持った科学なり戦闘なりのプロフェッショナルな大人たちが主役。彼らが不運にもエイリアンと遭遇、あるいは意図的に接触し、大変なことになるのがいつもの流れで、SFとホラー・パニック・スリラーの要素が複合した作品だ。

しかし『エイリアン:ロムルス』の主役は、特に何かしらのプロフェッショナルではない若者たち

彼らはウェイランド・ユタニ社が管理だか所有だかしていると思しき、ジャクソンズスターという、陽光すら無い何もかもが劣悪な星で、資源の回収だとか鉱山での労働をして暮らしている。

どうにかしてウェイランド・ユタニ社のブラック労働から逃れ、まだ見ぬより住みやすい星に脱出するのが共通の夢だ。そんな彼らが、ジャクソンズスターの近くで活動を停止している宇宙ステーション「ロムルス」を発見する。

これをビッグなチャンスだと考えた彼らは、こっそりと「ロムルス」に侵入するのだが……というのが、予告編でも公開されている本作の導入だ。



・新鮮な恐怖

ゼノモーフなど各種エイリアンたちの恐ろしさというのは、戦いに慣れた屈強な者でも一瞬でやられてしまったり、天才的な科学者たちが色々と知恵を絞っても全く手に負えないという、生物としての圧倒的なスペック差を見せつけられることによるものが多かったと思う。

今回は主人公陣が普通に素人で、見通しも甘めの不運なヤングたち。エイリアンに対峙する人種が従来のシリーズとはだいぶ異なる。その設定もあってか、恐怖の演出方法に新鮮味がある

やはり監督の特徴なのだろうか。ホラー・スリラー感の強いものとなっており、今までのエイリアンとはちょっと違うスリルを味わえる仕上がりだった。上映中に悲鳴をあげてしまっても、今作ばかりは仕方がないだろう。


・根源的

さて、視聴前に初代と二作目の間の時間軸という情報を得た時、私は今作が1や2と強い関連性を持っており、何かしらストーリーを補完するものなのかと思っていた。しかし、今作はそうではなく、独立した存在だ

つまりこれ1作だけで完結している。時系列的に過去を描いた『プロメテウス』や『エイリアン: コヴェナント』、そして直近の『エイリアン1』の視聴は必須ではない

ネット記事で「必須ではない」と書くと、私が過去に同様の表現を使用した際の反応的に「見ない方が良い」だとか、その手の方向で理解されていることが多いので断っておこう。必須ではないという言葉にその意味はないので、純粋に言葉の意味通りに受け止めていただきたい。

しかし過去作を見ておくことによるアドバンテージが無いわけではない。例えば、本作に登場するとあるアンドロイドがその1つだ。詳しくは語らないが、2020年に亡くなられたイアン・ホルム氏と同じ顔と声のアンドロイドが登場している。

ウェイランド・ユタニ社製の、同じ時期の同一モデルのアンドロイドということ以上の意味は無い気がするのだが、懐かしい顔が出てきたなと、少しニヤッとすることができるだろう。

他にも今作のラスボス的な相手のデザインで、あの時のアイツみたいなヤツが出てきたなぁなどと思えたりなど、エイリアンシリーズの正当な遺伝子を感じさせる点は少なくない。

しかし事前の予習が一切不要なまま十全に楽しめる点。そして細かいことや小難しい哲学的な要素が無く、マンネリ感薄めでフレッシュにエイリアンたちの恐ろしさを堪能させてくれる点などは、まるで初めて初代を見た時の感覚を彷彿とさせる

洗練されたキモかっこよさを持つデザインのエイリアンがめっちゃ怖く、頭を空っぽにしてウワーーーーッ!! と恐怖していたら、あっという間に終わってしまった……というような、小学生の頃に初めて『エイリアン』を見た時の感覚だ。みんな、初めて『エイリアン』を見た時、そんな感じだったでしょう?

ということで、新しいタイプの主人公陣に、新鮮なアプローチの恐怖演出で新しさもある『エイリアン:ロムルス』なのだが、根源的な視聴体験としては最も初代に近しいものの1つではないかと私は感じた

ゲームや小説、TVシリーズなども含めたら、もはや追いきれないほど関連作品が出まくっているエイリアンシリーズ。ここにきて破綻なく新鮮でピュアに怖いエイリアンを作れるのは、凄いことだと思う。古参ファンはもちろん、エイリアンを1度も見たことが無い人にもお勧めだ!

参考リンク:エイリアン:ロムルス
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.

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