上海から車で2時間ほど(高速鉄道で1時間弱)南下したところに杭州という都市がある。中国人の友人に「箱根行こうぜ」くらいのノリで誘われたので、箱根行くくらいのノリで杭州へ行ってみることに。
杭州の見どころ……それは西湖(世界遺産の湖)とお寺。なんかもっとロケットニュースっぽいネタは無いのか? そう友人に尋ねると「杭州といえばアリババだ」と教えてくれた。
アリババ(阿里巴巴)は言わずと知れた中国の超巨大ECサイト。実はアリババグループの本拠地は杭州で、郊外に巨大な本社があるらしい。なるほど、それは行くっきゃないな。
・アリババGO!
アリババ本社周辺へは電車だと行きづらいらしく、ホテル近くから路線バスに乗ることにした。
なお事前にアリババ本社についてリサーチした結果、社内には大きな社員食堂があり外部の人間も利用可能らしい。しかし全く関係ない外国人観光客がアポ無しで利用できるか? というと……中国人の友人に調べてもらったが「よく分からない」ようだった。
「ま、行って聞いてみたらいいじゃん」と友人。たしかに、もし門前払いを食らったとしたら『門前払いを食らったでござる』というタイトルでギリ記事として成立するかもしれない。
それにしても、アリババ本社があるにしてはのどかな風景だ。もっと電子都市みたいな雰囲気かと思ってた。
ここがアリババ本社最寄りのバス停。地上100階建てくらいのビルを想像していたが、見渡す限りそういう建物は無さそう。
・緊張の瞬間
バス停から少し歩くと、すぐアリババ本社が見えてきた。
これがアリババ本社の入り口ゲート。管理人小屋っぽいものがあるにはあるが、普通に黙って入れてしまいそうである。でも勝手に入って怒られたら困るので、管理人っぽい人に「入ってもOK?」と聞いてみた。
すると「ハ?」みたいな感じで返された。「中で記念撮影をしたいんだけど……」と伝えると、今度は「勝手にせえよ」みたいな反応。「じゃ、お言葉に甘えて……」みたいな顔をして、私は晴れて合意のもと入り口ゲートを通過することができたのだった。
私は今、たしかにあのアリババの敷地内に立っている。とくに感動とかはないが、日本人の多くが経験しない経験をしていることは間違いない。
マスコットキャラクターっぽいやつと記念撮影。日本人の多くは撮影する機会がない写真だ。
・それはそうと……
ところで、敷地内へ入った時からずっと気になっていたことがある。
それは「あまりにも静かすぎる」こと。広大な敷地内には多くの建物があり、普通に考えれば数千人規模の出入りがありそうな雰囲気だ。が、私が記念撮影を始めて20分ほどの間、見かけたのはフードデリバリーの人だけ。
まるでSFホラーの世界のように、誰もいない。
その意外な理由が明らかになったのは、敷地内のスタバに立ち寄ったときだ。あまりの暑さにアイスラテでも飲もうとしたところ……
定休日、だと……?
・【悲報】日曜だったでござる
ここへきてようやく気づいたが、なんとこの日は日曜日。アリババ本社は大部分が非稼働状態にあるようなのだった。マ、マジか……!
言い訳になるが、私は今日が日曜であることを完全に忘れていたワケではない。しかし「24時間・365日いつでも注文可能」がウリのネット通販を主軸とするアリババが、よもやカレンダー通りに休んでいるとは思いもしなかったのである。
便利さに慣れすぎた現代人の愚かな先入観っ……!
仕方がないので、敷地内で唯一営業中だったファミマでスタバのラテを購入。ベンチで休憩することにした。
アリババ本社敷地内には多くの植物や休憩スペースがあり、勤務地としては最高レベルの環境。記念撮影の名目で入場させていただいている身の上のため、多くを語ることは控えるが、「アリババ本社」と聞いて我々がイメージするものとはかけ離れたノドカさだ。なんか眠たくなってきた……。
今回、人がいなさすぎて社員食堂どころじゃなかったことは無念。しかし「誰もいない日曜日のアリババ本社へ潜入」という体験も、これはこれで激レアだったのではないか……そんなことをボンヤリ考えながら、帰りのバスに揺られる杭州の昼下がりでありました。
執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.