札幌のグルメとして各種メディアで必ず紹介されるのがジンギスカン。現地には多くの専門店があるらしいが、その中でも頭一つ抜けて道外でも知られているのが、すすきのにある「だるま 本店」だ。

昭和29年に開業した老舗で、関東民的には札幌で行くべき店としてよく名前のあがる店の1つ。その「だるま」が、2024年7月14日に都内にもオープンした。さっそく食べに行ってみたぞ!

・御徒町

そんなわけで、18時頃に御徒町へ。新しくオープンした「成吉思汗だるま 上野御徒町店」は、御徒町駅から徒歩5分ほどのところにある。上野広小路駅からなら3分くらいだ。

着いてみると、雨にもかかわらず店の裏側までぐるりと待機列が伸びていた。オープン直後というのもあるだろう。けっこう話題になっているからな。


待っていると、お店の人がこのような紙を配っていた。待機列の解消を早めるための施策だと思われる。


飲食は1時間制限で、代表が一人だけ並ぶスタイルはしないよう注意喚起している。これは行列に並ぶ客からすれば有難い話だ

数人しか並んでいないと思ったら、そのうちの1人が10人グループの代表だった……とかされたら待ち時間の推定が狂いまくるしな

それに入った客が1時間以内に出てくるとなれば、最長でどれくらい待てばいいのか計算しやすい。営業時間も午前2時までだったのが、23時までに変更されている


・初ジンギスカン

公式HPによると座席は23席。待機列の状態的に、長くて2時間くらいは見ておいた方が良さそうだ。待っている間に、少し話をしよう。

実は私は北海道産まれ。いわゆる道産子だ。しかし札幌というか、北海道の記憶自体が無い。1歳とか2歳で引っ越したからだ。そして以後40年間で、1度も道内に侵入したことが無い。

辞書によると、道産子という言葉を人間に対して使う場合の条件は “北海道で産まれた人” の他に無いもよう。つまり私は純度100%、生粋の道産子を名乗れるわけだが、道民としての知識は1つも無いし、愛郷心的なものもない。

おそらくこの世で最もインチキ臭い道産子だろう。道民は私のような者をはじくため、道産子を名乗るための条件をもう少し厳しくした方がいい。

そんな感じで驚くほど北海道と無縁な道産子である私は、今まで1度もジンギスカンを食べたことが無い

フライパンで焼いた牛肉のステーキを皿に盛って「牛ジンギスカン」の名で出している関東の店でなら食ったことがあるし、羊のステーキも食ったことがある。

しかしそれらはノーカンでいいと思う。凸型なり凹型なりのジンギスカン鍋で羊肉を焼いたものが未経験なのだ。当然、札幌の有名店である「だるま」も未経験。

北海道的な経験値が実質0のまま40年生きてきた札幌産まれの道産子が、ついに生まれ故郷の名物を、現地の有名チェーンで食べる日が来たわけだ。

もちろん、「十万石まんじゅう」を食ったことが無い埼玉民や「みっちゃん」でお好み焼きを食べたことのない広島民が珍しくないのと同様に、本物の札幌民はそんなに「だるま」でジンギスカンを食べない可能性も認識しているが……まあそこは札幌に行かなければ実態を暴けないので。


・炭火

おっと、いよいよ私の番だ。並び始めて1時間40分。やはり時間制限があると、待ち時間が把握しやすくて有難い。


通されたのは2階。カウンターに炭火のジンギスカンマシン的なモノが設置されている。


メニューはこんな感じ。「成吉思汗(1290円)」がいわゆるノーマルのジンギスカンなのだろう。他に「上肉(1690円)」と「ヒレ肉(1690円)」がある。


生粋の道産子である私はジンギスカンの作法が1ミリもわからないので、初手はスタッフが勧めたセットをそのままオーダーした。


ってか、ライス(大)が本当に大きいぞ……! ライス(大)がちゃんと大きい焼肉チェーンって実在するんだな!


そしてこれが「成吉思汗」。


目の前には「最初の野菜(230円)」と脂的なモノをセットしたジンギスカン鍋が準備されている。


ここにジンギスカンを投下し、自ら焼いていくスタイルだ。1人焼肉みたいなもんだな。


けっこう火力が強く、なかなかの速度で肉が焼けていく。


タレにつけて食ってみたところ……この羊うめぇな!


写真を撮ったりしていたため火が通りすぎた感があるが、それでも美味い! 羊特有のスメルがほとんど皆無で、牛肉などとは違う独特の歯ごたえが、この肉が羊であることを教えてくれる。


・上肉

続いて「上肉」をオーダー。メニューによると数量限定らしい。


デカいし厚いし期待値が高い。そしてこいつのクオリティが……


……

……

……

……

_人人人人_
> 優勝 <
 ̄Y^Y^Y ̄


1番美味いのはこれだ! 絶対に頼んだ方が良い。「成吉思汗」も美味いが、「上肉」のクオリティはガチだぞ……!! 

歯ごたえのある香ばしい肉から、チュルッチュルな脂が滲み出てきてマジでたまらない。「成吉思汗」をメインに攻めつつ、1皿だけでも「上肉」をオーダーするべき。売り切れていたら仕方ないけど。


・ヒレ肉

最後は「ヒレ肉」だ。


1つ1つは小さいが、厚みがあるタイプ。しかし一番柔らかい。これも美味かったが、個人的には「上肉」が圧倒的だった


それともう1つ。最初に進められるがまま頼んだ「チャンジャ(330円)」もとても美味かった。みんなも頼んだ方が良い。ぶっちゃけチャンジャとライス(大)だけで3セットくらいイケる気がする。


最後は残ったタレに番茶を注いでもらい……


飲んでフィニッシュ。焼肉に使ったタレに番茶ってどうなんだよと思いつつ、他の客がやっていたのを盗み見て真似たのだが、これも美味かった。別に道民の風習とかそういうものではなく、「だるま」のスタイルらしい。


ちょうどこの分量でそれなりにお腹がいっぱいになり、お値段は5855円。ちょっとイイ感じな焼肉に行ったくらいの価格だろう。


ということで人生初のジンギスカンを、東京に進出したばかりの「だるま」でキメたわけだが、なるほどね。これが「だるま」のジンギスカンか。

牛などと比較して、羊の肉は好き嫌いが分かれるものだが、札幌観光における定番グルメになっているだけのことはある。どの肉も羊スメルがほとんど無かった。

ところで、これは絵面が地味なので撮らなかったのだが、野菜がとても美味かった。肉の周囲で脂などにまみれ、焼くというか煮えるというか、その中間みたいな状態になっていた青ネギなどだ。

あれがシナシナのジュワジュワで、羊肉の脂が良くまとわりついており、とても美味かった。脂と水分が周辺に溜まるジンギスカン鍋の独特の形状でなければ食べられないものだろう。

「だるま」とは無関係に、基本的なジンギスカン鍋でやるやつに共通の特徴に対し、平らな鉄板でやる焼肉との最大の違いを感じた点は、まさかの野菜の味だった。あの周囲の羊脂汁で雑炊とかうどんとかやっても絶対美味いと思うんだよなぁ。

参考リンク:だるま
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.