ネパールの国民食「ダルバート」――日本で言う “定食” のようなもので、ほとんどの日本人が毎日のようにご飯と味噌汁を食べているように、ネパール人は毎日ダルバートを食べている。
「ダルバート」はダル(ひき割り豆のスープ)とバート(米飯)というワードを組み合わせたもので、ここにカレーやスパイスで味や香りづけをした野菜などのおかず(タルカリ)とピクルスのような漬物(アチャール)がつく。
・日本人とも相性抜群
日本人に親しまれている定食もご飯と大豆由来の味噌を使用した味噌汁、野菜系のおかずに漬物という構成のため、ダルバートは日本人の舌にもフィットすると私は考えている。
そんなダルバートの魅力を発信するため、以前から気になっていたネパール料理店に足を運んでみた。
・激戦区路地裏のちょっと入りづらい外観「ソルマリ」
訪れたのはJR大久保駅、JR新大久保駅からそれぞれ徒歩5分ほどの路地裏にたたずむネパール料理店「ソルマリ(SOLMARI)」。
大久保駅と新大久保駅周辺は韓国料理店を中心に「ガチ中華」と言われる本格中華料理店、ベトナム料理店、中東料理店やアジア系食材店がひしめき合っているが、以前からネパール料理店の激戦区でもある。
多くのネパール料理店でダルバートを提供していて気軽に食べられるため、私も足を運ぶことが少なくないが、少し前から気になっていたのが今回紹介するソルマリだった。
しかし、なかなか入る決心がつかなかった。大久保の路地裏の年季の入った建物の2階。1階には韓国料理店、ソルマリへと連なる階段の装飾も何となく物々しい。
「今度にしよう、今度こそは……」とついつい先延ばしにしていたが、この機会に入店してみることに。
・階段の先にはネパールが広がっていた
階段を昇っていくとネパールの伝統行事を描いたようなイラストがあしらわれ……
昇り切ると想像以上に立派なエントランスが待ち受けている。現地の写真が貼られ、装飾も施されていて“本場感”をビンビンに放っている。
店内は赤を基調としたなんだかおめでたい雰囲気。土曜のランチタイムに訪れたが、すでにビールで盛り上がっている日本人グループ、ランチを楽しむネパール人グループの姿もあった。店員さんも親切だし、心配する必要なんてなかった。
・謎の「クワティカレーとアルボデタマカレー」
ランチメニューは6種類。これだけランチメニューに選択肢があるのは嬉しい。
Aセット(650円)とBセット(950円)とネパールスペシャルセット(1250円)がいわゆるダルバートと言われるダルスープとライス中心のメニューだ。
Aセットにつくのはチキンカレー。Bセットはチキンカレー、マトンカレー、豆カレー、クワティカレー、アルボデタマカレー、野菜カレー、豚肉カレー、フィッシュカレーから1種をチョイスできる。
まずはBセットを選択。
気になるクワティカレーとアルボデタマカレーについて「どんなカレーですか?」と店員さんに確認してみたところ、クワティカレーは豆のミックスカレー、アルボデタマカレーはジャガイモや豆、発酵タケノコを使用したカレーとのこと。
クワティカレーと迷ったが発酵タケノコが気になったのでアルボデタマカレーを注文してみた。
後に調べてみたところ「アル」がジャガイモ、「ボディ」が豆の一種、「タマ」がタケノコとのことだった。ストレートな料理名だ。
グランドメニューは思いっきり日本の居酒屋風。前回訪れた店のメニューと箸入れは蕎麦屋風だったがネパール料理店にいったい何が起きているのだろうか。
・野菜も肉も楽しめるバランス食
Bセットが到着。
ライスの真上のダルスープから時計回りにアルボデタマカレー、ネパール風羊肉の串焼き、シメジたっぷりのおかず、紫タマネギとキュウリとニンジンとダイコンのスライスにレモンスライス、トマトベースのピリ辛ソース、ダイコンや豆などを使用した漬物が並ぶ。
そして中心にこんもりとライスが盛られ、パパド(豆から作られた煎餅のようなもの)が添えられている。
・ライスにダルスープをかけて「ネパール式ねこまんま」を楽しむ
ダルスープの色は結構濃い目。
しっかりとした豆の甘みと塩気が感じられ、これだけでもご飯が進みそうだ。
パパドをふりかけのようにライスの上に砕き、
ダルスープをかけて食していく。さながら「ネパール式ねこまんま」といったところ。
・発酵タケノコを使った「アルボデタマカレー」の味
アルボデタマカレーにはその名前の通りゴロッとしたジャガイモが入っている。
さらに豆もたっぷり。
気になる味は……発酵タケノコを使用していることで全体的に優しめの酸味を感じる。ダルスープとは違うしっかりと粒の立った豆も満足感ある。タケノコの食感は柔らかく、ライスとの相性がいい。
温かくて酸っぱいスープと言うとタイのトムヤムクンがお馴染みだが、あそこまで前面に出た辛味や酸味はなく、あくまでも奥のほうに酸味とスパイスを感じる程度だ。発酵食品だし、胃腸にも良さそうだ。
ダルスープやカレー、周囲のおかずや漬物をライスに浸透させたり、乗っけたりして食べ進めていく。
・肉系おかずはやっぱり嬉しい
今回は肉や魚といった動物性タンパク質不使用のアルボデタマカレーを注文したがBセットにはややスパイシーで炭火の香りを感じるネパール風羊肉(マトン)の串焼きがついている。これが嬉しい。
結構塩気があるのでコイツをかじってライスを頬張るとちょっとした焼き肉気分。もちろんカレーやダルスープと一緒に食べても美味しい。
そのままの勢いで完食。最初からライスたっぷりだったのでおかわりすることなく大満足。
食後、店名の「ソルマリ」の意味を調べたところネパール語で「居酒屋」のことだという。だからグランドメニューが本気の居酒屋風だったのだろうか……。
・今回訪問した店舗の情報
店名 ソルマリ(SOLMARI)
住所 東京都新宿区百人町2-20-23 2階
営業時間 11:00〜16:00(ランチ)、16:00〜23:00(ディナー)
定休日 無し
執筆:田中ケッチャム
Photo:RocketNews24
▼案ずるより産むが易し。一見入りづらいが入ってみれば明るい雰囲気でツマミ系メニューも充実。店名通り、居酒屋として利用するのも良さそうだ。