2023年10月6日から公開となる、映画『イコライザー THE FINAL』(以下、イコライザー3)。デンゼル・ワシントン扮する元米国防情報局(DIA、日本語版はCIA)エージェントのロバート・マッコールが、ボランティア的に目についた悪人を虐さt……否、粛清していく『イコライザー』シリーズの最終章だ。
シリーズを通し、手心の無さと痛々しさ(物理)が限界突破している処刑シーンのラッシュ。正義の味方だが、サイコ感は明らかに悪役以上な主人公のマッコールさん。その他多くの特徴で、圧倒的な唯一無二の世界観を持っている。
人を選ぶのは確かだが、心酔するファンは多い。私もその1人。先に拝見させて頂いたのだが……いやもう、すんげぇ良かった!
過去最高に凄惨なのに、ガチで美しく見える処刑! そしてあまりにも穏やかで心地いい幕引き……!! シリーズものの終わり方でこれ以上はねぇぞ!! 公開前に円盤買うの決まった映画はこれが今年の1本目っすわ。
・本作はガチ
マジで掛け値なしに良かったので、思わず本文に入る前に400文字くらい書いてしまった。
2023年の「強すぎる主人公 vs 敵」なバイオレンス度の高いアクション映画は、言うまでもなく『ジョン・ウィック:コンセクエンス』と『イコライザー THE FINAL』の2トップの独壇場。
ファン層は100%被っていると思うので、遠慮なく対抗馬の名前を出していこう。もしイコライザー3が2みたいな内容だったら、はっきり言ってジョン・ウィックの圧勝だったと思う。
しかしそうはならなかった。3はあまりにも完成度が高く、そしてファンが「イコライザー」に求める唯一無二の要素が超絶に濃厚な仕上がりなのだ!
・1と2
3を視聴するにあたり、1と2は絶対に見ておいた方が良い。感動と納得の度合いが違ってくる。アマプラで視聴可能(2023年10月5日現在)だが……Amazonのことなので、いつ隙を見て100円とか300円とかにするやもしれん。
3を見る直前に、立て続けに見ておいた方が良い。すでに視聴済みの方も、記憶をフレッシュにする意味も込めて、見直した方が良いだろう。
1はマッコールさんの背景がほとんど明かされなかった。やたら強い謎のホームセンターのおっさんが偶然視界に入った悪人を処刑したら、流れでロシアンマフィアと敵対することになり、全滅させてしまったという感じ。
2ではDIA時代の元同僚などが登場。イコライザーの世界観は広がった。元気のいいアクションも多め。しかしそこはかとなく「よくあるアクション映画」っぽさが強かったように感じている。
1で描写された、マッコールさんのキャラクター性を示すいくつかの要素が薄まっていたのが原因だろう。まあ粉塵爆発とかそういう、我々が大好きなテクニックが登場してエンタメ感はあったけれども。
・極まった3
そして3。完全に2とは違う方向性だ。どちらかと言うと1に近いのだが……1よりも圧倒的に洗練されている。
まず、マッコールさんのマッコール濃度が高め。紅茶が出てくるし、本も出てくるし、紙ナプキンも出てくる。
マッコールさんが、いい感じに枯れているのもグッド! 1で感じた、複雑な過去を抱えた影のある引退者みたいな雰囲気がよく出ている。
悪役たちも良いぞ! クソ具合が、どんな目にあおうが微塵も同情が湧かないほど徹底的にクソなのだ!
病気のドブネズミの反吐の中で泳ぐウジ虫の方がよっぽど情を注げるくらいに、今作の悪役は分かりやすく徹底したクソさを備えている。
そいつらは、もちろん主人公のマッコールさんに粛清される。その際の処刑をビリヤードに例えると、ナインボールで球が9個最初のブレイクショットで穴に落ちたくらいに気持ちよく決まっていく……!!
マッコールさんの強さは圧倒的だ。まるで超強力なプレス機がゆっくりとアルミ缶を押しつぶすかのごとく、一切揺らぐことなく確実に処刑を遂行していく。彼の強さの盤石感はシリーズ随一かもしれない。
そして全ての処刑シーンのビジュアルが、まるで錆びたノコギリを束にして体の一番柔らかく敏感なところをゴリゴリ削るくらいに容赦ないのも素晴らしい。マジで信頼しかねぇ!
かと言って、不必要にグロ・ゴア趣味に走っていないため、視聴体験として好ましくない痛々しさが無い。これはあまりにも洗練された匠の技。
ネタバレを避けるために抽象的な表現となるが、光の加減とカラーグレーディング、そして画面に映す時間が凄まじく芸術的なのだ。
グロさを無駄に見せつけて陳腐にするのではなく、不可避な粛清の結果として生じた当然の光景を、必要十分に見せるだけにとどまっている。まあ、その “当然” の基準がマッコール的である点には注を添えるべきかもしれないが。
・美
結果として、非常に気持ちよく、美しいのだ。マジで。見ればわかる。これは美しい。処刑美って言葉を思いついてしまったくらい美しい。
あと、ちょくちょくはさまれる、マッコールさんのサイコ感を全員にわからせる、いくつかの病的なムーヴ。これによって我々も悪人も、マッコールさんが ただの凄腕ジャスティス仕置人ではないことを、常々忘れずにいられる。
そしてラストに明かされる、あまりにも “マッコールさん” すぎる事実。いやぁ、そうだよな! マッコールさんなら、そうだよなァ! となり、あまりの気持ち良さに試写会の場で納得と完全同意による笑いを堪えられなかった。
つまり本作は、1を見てハマり、シリーズを追い続けているファンの予想を超える満足感を与えてくれる、究極の「イコライザー」に仕上がっている。
放映時間のかなりの割合が暴力と一方的な粛清シーンなのだが、幕引きは心穏やかで平和な、そして詫び寂びすらも備えたものとなっている。誰もが、本作が完ぺきな最終章であることを確信するだろう。
ファンが求めていたものを、期待していた以上のクオリティで。それが実現されている稀有なシリーズもののラスト。心底良かったので、15歳以上(R15+なので)は全員見にいくべき。
やべぇなぁ。ガチにプライベートで3時間くらい、いかにこの最終章が良かったかを語りあいたいくらいだ。2023年のもっとも優れたアクション映画の1本だと確信している。
参考リンク:イコライザー THE FINAL、Instagram @theequalizermovie
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.