ロケットニュース24

なにをやってもコレステロール値が下がらずヤケクソになっていたら橋本病だった話

2023年10月5日

若い頃からずーっと高脂血症に悩んでいた。20代後半からLDLコレステロール値、いわゆる悪玉コレステロールの数値が高く、健康診断で「要精検」マークがつき始めた。

行く先々の医師から「運動するように」という助言を繰り返し受け、「それができたら苦労しねーよ」と、やさぐれながら生きてきたのだが、最近まったく別の病気がわかるという出来事があった。その体験談である。


・自尊心をむしばむLDLコレステロール値

LDLコレステロールそのものが自覚症状をもたらすことはないが、増えすぎると血管に蓄積し、動脈硬化を起こして心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めるとされる。

しかし動脈硬化を加速させる加齢や高血圧、肥満などは、若年の患者ではあまり問題とならない。なんなら筆者は血圧が低いくらいだ。

そのため医師も筆者もなんとなく本気で取り組む雰囲気にならず、「魚卵食べるな」「運動するように」という程度の一般的な助言で終わることが続いた。

そうこうしているうち、30代で見事に「脂質異常症」の診断を授与される。服薬すると簡単に数値は下がる。しかし薬をやめるとすぐにまた数値が上がる。自覚症状もないので、なんとなく通院をサボるようになる……を繰り返す。


症状はなくとも「身体によくないところを抱えている」というのは精神衛生上、非常~によくない。おまけに自己管理できないことが原因なのだから「自業自得だよ」と言われているようなものである。

別の目的でも血液検査をするたびに「また引っかかるんだろうな」と憂うつだし、運動不足を指摘されるのもわかっている。


「魚卵を食べないように」という助言もよくもらうが、もともと魚介は得意ではないので、おにぎりにタラコが入っていたときくらいしか口にしない。合計しても年に数回程度だろう。内心「食べてません」と口答えしたりする。

自分なりに努力はした。某「女性だけの30分フィットネス」に通ってみたり、特定保健用食品の高級野菜ジュースを定期購入したり、寒天で置き換えダイエットしてみたり……リングフィットアドベンチャーを始めたのも数値の改善を期待してだ。

まあ「ラクして成果を上げよう」という意図が透けて見える取り組みばかりではあるが、とにかく努力はした。


しかしコレステロール値はぴくりとも動かない。~139mg/dlが基準値(厚生労働省 e-ヘルスネット)とされるところ、160mg/dlを軽く超えることが続き、ついには190mg/dlオーバーに。

もうだめだ……。自尊心はずたぼろだ。ダメ人間の烙印を押されているような気がする。いや、それもあながち間違っていないが、数値でまざまざと見せつけられると心が折れる。


・そんな私に転機が訪れる

転機が訪れたのは最近だ。別件で首回りのエコー検査を行ったときのこと。医師が「ん?」という顔をする。甲状腺が腫れているという。

いつもはしない項目の血液検査をしたところ、基準の数百倍というものすごい異常値を発見。「橋本病(慢性甲状腺炎)」がわかったのだった。ドラゴンボールのスカウターが爆発するような測定不能値で一瞬びびったが、これ自体はさほど心配ないそう。

日本内分泌学会によると、橋本病とは甲状腺ホルモンが少なくなる自己免疫疾患で、女性に圧倒的に多い。成人女性の10人に1人が罹患する一般的な病気だという。

このうち治療が必要なほど甲状腺の機能が低下するのは4~5人に1人未満。ほとんどの人は無治療で経過観察となる。

自覚症状としては、甲状腺が腫れてきて首の圧迫感や違和感が生じることがあるという。

思えば筆者、寝るときに息が詰まるような不快感に悩まされ、オーダーメイド枕を買ったり、二重あごを気にしたりしていた。

さらに注目すべきは、血液検査でコレステロール高値や肝機能異常を認めることがあるということ。お前かぁぁぁぁ!

甲状腺機能低下症にまで至ると「全身の代謝が低下することによって無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声など」が生じるそう。筆者の場合、数値の異常はあるものの今のところ治療が必要な状態ではなく、潜在性甲状腺機能低下症と呼ぶようだ。

原因がわかったところでコレステロール値そのものは下がらない。脂質異常症の治療は続いていくのだが、筆者は憑きものが落ちたように優等生の患者となり、せっせと通院しては、1日の飲み忘れもなく服薬している。

因果関係がわかったことで、「こんなに気をつけているのに」「理不尽だ」という不遇感が払拭され、真面目に治療に取り組むようになったのだった。もう健康診断も怖くない。


治療に前向きに取り組むには、モチベーションがめちゃくちゃ大事。同じ薬でもイヤイヤ飲むのと、効果や症状を理解して自分から積極的に飲むのとではまったく気分が違う。見つけてくれた先生ありがとう。コンプレックスがひとつ軽減した出来事だった。


なお、ここに記載した内容は個人の体験談であり、もちろんすべての人に当てはまるものではない。気になる症状がある場合は迷わず主治医に相談して欲しい。


参考リンク:日本内分泌学会e-ヘルスネット
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

モバイルバージョンを終了