ロケットニュース24

【泣きそう】ヨーロッパの寝台列車で国境を4つ越える間、軽くイジメられてた話

2023年10月3日

チェコから寝台列車でクロアチアへ行くことになった。「行くことになった」ではなく「行くことにした」が正しい。寝台列車が趣味なのだ。チェコからオーストリア、ハンガリーを経由して早朝のザグレブ(クロアチアの首都)に到着する全12時間超の旅程。

料金は52.9ユーロ(約8365円)。安いのか高いのかは分からん。ただ、これまでアジア諸国で何度か乗った寝台列車はどれも格安で超快適だったため、きっとヨーロッパもそうだと踏んでいた。

それが甘かった。

・募る不安

乗車するのが首都のプラハだったため、てっきり始発駅だと思い込んでいたら、ここも経由地のひとつだったらしい。大量の乗客たちがプラハ駅のホームに降り立つ。どこから来たのかは知らん。


電車とホームの隙間が広く、危ないな〜と思いながら乗車したところ……



尻に当たる勢いで扉が閉まった!! おい危ねぇな! ちゃんと確認してるのか?


気を取り直して、自分の席を探す。区切られた個室が延々と並んでいる、寝台列車によくあるパターンだ。……お! ここだな、私の部屋は。失礼しまーす!


(嘘だろ…………)



・けっこうキツいヤツ

恐るべきことに、私は “ティーンエイジャーの女子3人組” と同室を引いてしまったのだった。なお以前の記事でご紹介した中国の寝台列車も4人同室だったが、アレは乗車時から寝台が4つあって、各自のパーソナルスペースが確保されていた。

しかし今回は “就寝時間になると寝台が出現するパターン” の列車であり、今のところ個室で4人向かい合って過ごすしかないのである。まだ16時半だが、いつまで続くというのか?

私の座席は彼女らの荷物に占領されており、「移動させてほしい」と頼むと、右隣の女子がため息をつきながら荷物を隅に移した。私が発した「ハロー」に対する返事は、ついに最後まで無かった。

彼女たちに悪意はないのである。仲良し3人組で寝台列車の個室に乗っていたら、突然オカンみたいな年齢のアジア人が割り込んできたのだ。そりゃ「やだな」って思うよね。私が逆の立場なら、きっとそう思うはずだ。

ただ、この部屋で最も「やだな」と思ってるのがそのアジア人であることに、彼女たちが気づくのは……たぶん10年くらい先の話か。無邪気にUNOなどを始めた彼女たちを尻目に「そろそろ国境を越えただろうか」とGoogleマップをのぞくと……


ゲェーーーーーッ!!!! ほとんど進んでねぇよマジかよ!



・車内をさすらう

いたたまれなくなって車内パトロールへ繰り出したところ、ややグレードが高そうな席の存在を確認。

「追加料金を払うので席を移動したい」と乗務員の方に伝えたら「満席なのでムリ」と返されてしまった。ちなみにこの列車の乗務員はみな信じられないほどラフな服装をしていて、バーテンみたいにノリが軽かったぞ。

車内は広いが、残念ながらフリースペースなどは設けられていないようだ。帰りたくないな、あの席へ。


お兄さん、アンタも同じ気持ちなのか……?


・蘇る中坊の記憶

所在なく車内をフラついていた私に、なんと! 先ほどのチャラい乗務員が「次の客が乗ってくるまで、ここに座ってていいよ」と話しかけてくれた。

どうやら私が部屋でハミゴ(西日本の方言で仲間外れの意味)にされていることを気にかけ、空いている座席を教えてくれたらしいのだった。ホンマありがとう!

2度と見ることはないかもしれない車窓を眺めながら、私は中学時代のことを思い出していた。小学生の私は教室の隅で1日じゅう本を読んでいるような子だったが、中学に上がるとなぜか急に、1人でいることが怖くなった。

そのため大して気も合わない女子同士でグループを組み、休み時間は全員でトイレへ行ったりしていた。そうこうするうち “仲間外れの順番” みたいのが、私にも何度か回ってきた。あれは最悪だったなぁ。逆の立場だったこともあるので何も言えないが。

とにかく早く大人になりたかった中学時代。幸いにも現在は組織に属さず、嫌いな奴とは縁を切り、穏やかな日々を送っているが……まさかこのトシになって、ヨーロッパへ来てまでこんな思いをするとは。女子って本当、業の深い集合体だよな。


さて。19時が近づいた頃、残念ながら予約客が乗車してきてしまった。そろそろ寝台が設置されているかもしれないし、席に戻ってみることにする。すると……

車内で知り合ったとおぼしき男を連れ込んでいた同部屋女子たち。中学時代の忌まわしい記憶が再び蘇ったのは言うまでもない。



・緊迫の国境越え

ヨーロッパの昼は長く、日が暮れたのは21時を過ぎてからだった。寝台が設置され、同部屋の女子たちが静かになったのは22時ごろ。「私はこのベッドを使っていいかしら?」と尋ねたらシカトされた。

ああもう、本当に疲れた。「旅の苦労は借金してでも買え」と言うけれど、精神への攻撃系はマジ勘弁だ。到着予定時刻は早朝5時過ぎ。眠れなくても目だけは閉じておこう。

そして午前4時20分。どこからともなく聞こえるザワザワ音に私は目を覚まし、部屋の外に目をやった。すると……


わ!!!! オマワリおる!!!!!


意味も分からずただ不安になったが、どうやらここはハンガリーとクロアチアの国境。ポリスは乗客全員のパスポートを確認しに巡回していたのだった。

この検問が毎回行われるのか、はたまた抜き打ちなのかは不明。しかしこの段階で到着時刻をとっくに越えていたことから、運悪く検問に引っかかった可能性もある気がした。私のパスポートチェックはあっさり終了。よかった〜!


・そして衝撃のラスト

国境を越えたら目的地のザグレブはそう遠くない。私は身支度をととのえ、その瞬間を待った。

ちなみに私はヨーロッパ全域を網羅するSIMカードを使用していたが、オーストリアを越えたあたりから、スマホの電波が “たまに繋がるけど基本ゼロ” 状態であった。駅ごとの停車時間は日本だと考えられないほど短い。ここからは気を抜かずにいきたいと思う!!!


…………あれ?



気のせいかもしんないけど、これザグレブ通り過ぎてね……?


〜完全に乗り過ごしたまま後編へつづく〜


執筆:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24. / Googleマップ

モバイルバージョンを終了