あまりにも限界すぎる設備が爆誕してしまった。2023年8月22から「ネスカフェ 睡眠カフェ in 原宿」で体験できる、仮眠用ボックス「ジラフナップ」だ。
立ったまま寝るってマジかよ! ブラック社畜社会が産みだした限界労働者のための棺桶にしか見えねぇ! しかも設置場所がコーヒー屋のカフェ。カフェインをキメて限界を引き出せというメッセージにとれなくもない。
ネットではビジュアル公開から早々に「ディストピア」「ビクトリア朝の労働者」などと言われている。普通に予約して試したのだが、いやぁ、これはヤバすぎるだろ……!
・コーヒーナップ
ネスレの公式HPを見たところ、この仮眠用ボックスを発明したのは、北海道の広葉樹合板株式会社なもよう。
睡眠不足による日中の眠気と、寝るためのスペース不足に苦しむ多くの日本人のために、立ったままでもくつろげるよう開発されたらしい。
コーヒーでカフェインを摂取してから眠るというのは、コーヒーを飲み、カフェインが効くまでの短い時間で眠り、起きる頃にカフェインが効いてスマートな目覚めに至るみたいな、そういう考えのようだ。
最近たまに聞くようになった、いわゆるコーヒーナップというヤツだ。
ちなみにネット民が言う「ビクトリア朝の労働者」というのは、”two penny hangover” でググると出てくる、白黒のロープにもたれかかって眠るビクトリア朝のイングランドの低所得な労働者のこと。
彼らも相当にブラックな労働環境のなか、2ペニーで泊まれるかわりに立ったまま眠るしかない限界安宿で疲れをいやしていたらしい。どれくらいコモンだったのか知らんけど。
・825円から
ビクトリア朝Verは2ペニーだったが、令和の原宿版は30分程度でコーヒー1杯がついて825円。
飛び込みでも空きがあれば利用できるようだが、私は予約した。ログイン必須で、アンケートもするもよう。
体験前か後に食べられるサンドイッチをオーダーするオプションもあるらしい。せっかくなのでこれも試してみよう。
こうして予約完了。30分程度の睡眠と、コーヒー1杯とサンドイッチが揃って1585円。原宿駅から徒歩数分という、何もかもがお高い立地を考えたら、まあそんなものかもしれない。
・睡眠カフェ
以上を経て、体験開始初日に最速でやってきたのがトップの写真の「ネスカフェ 睡眠カフェ in 原宿」。
中に入ると、色んなメディアの取材班が来ていた。TBSの取材は断ったがロイターの取材は受けたので、どこかで流れるのかもしれない。利用者として最速でやってきたのは私だったもよう。
まず出てきたのは、コーヒーと「海老のテリーヌサンド」だ。
いかにもオサレなカフェにありそうなサンドイッチという感じで、安定した味わいだった。こうしてサンドイッチとコーヒーを流し込み……
・ボックス
いざボックスへ。木材多めなバージョンと無機質なバージョンがあるのだが、私は後者の「スペーシア」というやつを選んだ。
なるほど。そういう感じか。
私は入る瞬間をどこぞの海外のメディアに撮影されていたが、外から見たら相当にシュールだった感は否めない。
たぶんそれを見るのであろう海外のネット民からは “過労死文化のジャパニーズの成れの果て” みたいな感じでミームにされるヤツだと思う。
しかし安心してほしい。入る時はいささか微妙な姿が外から丸見えだが、ドアを閉めれば外からの視界は完全に遮断できる。
まず、ボックス内に余剰スペースは殆ど無い。ドアと、自分の体を固定する様々なパーツ類の間には、リュックサック1個をギリで置ける程度の幅。約30㎝くらいだろうか。
腕や頭などを乗せる台には、衛生のため使い捨ての紙のシートのようなものを渡される仕組み。クッションの上にこれを敷いて寝る。
頭上前方には換気扇がついており、頭上後方には小型の扇風機。どちらも右手のスイッチでON・OFFできる(扇風機にはリモコンもある)。騒音は気にならない。家のエアコン程度。
右手下方には尻を乗せる部分と頭を乗せる部分の台の高さを操作するためのスイッチがある。これで各自、自分の体形に合わせてベストなポジションを探す感じだ。ちなみに尻を乗せる台は、強く押すと手動で角度を変えられるようになっている。
その辺には照明のリモコンもある。ボックス内の設備に対してできることは、全てここにまとまっている。黒い四角いヤツは扇風機のコンセントで、その隣にはUSBポートがあった。たぶんType-Aだと思う。
頭を乗せる台を跳ね上げた状態で、上からボックス内をお見せするとこうだ。この時私の体は、主に尻と膝~脛あたりのクッションで支えられている。ボディは完全に固定状態だ。
こんな感じだが、不快な閉塞感は無い。ドアの上と下に、三角形の採光窓が開いているのだ。ただし、寝るという目的を考えた場合、この上の窓からの光は少し邪魔かもしれない。カーテンとかあると良さげ。
内部に入った状態で撮影するのは非常に困難だったので、外から。これ等の他に、尻を乗せる台の下には、薄い空気清浄機も設置されている。以上が、ボックス内の設備の全てだ!
・快適
こんな感じで環境整備系装置がフルアーマー状態なボックス。はたして快適なのか? 立ったまま寝ることなど可能なのか?
_人人人人人人_
> 寝られる <
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マジで。ぜってぇ無理だろって思っていたが、これが思いのほか快適。普通に一般人として予約して参加したため、この記事はネスレから何の提供も受けていないし、公開前の記事のチェックとかも無い。
ゆえに忖度の必要は皆無なので、ガチに正直な感想だ。例えるなら、ヨギボーみたいなデカいクッションに、うつ伏せに寄りかかってダラけている時の感覚に近いものがある。
むしろヘルニアを抱えた私の腰は、うつ伏せよりも楽だった。ソシャゲがはかどるぜ!!
写真とか撮りまくっていたら30分のうち20分が経過してしまったので寝なかったが、これは寝られる。長時間だと首を痛めそうだが、30分ならアリだろう。いや、1時間くらいイケるかもしれない。
・ヤバい
ということで、実際に試したら、ビジュアルからは想像できないほど快適だった仮眠用ボックス。利用者にとっては、”2ペニーのハングオーバー”のような過酷さは無い。
しかしそうか……労働者をこのボックスにブチこんでおけば、それなりに回復して出てくるのか……ふぅん。
会社にこのボックスを設置して、限界サビ残で強制終電逃しからのボックス入りの無限ループで、究極の労働効率を……。
いやいや、この仮眠用ボックスは快適だし、オフィスに設置で健全な範囲での効率アップも狙えそうだが、やっぱ誰もが家で横になって十分に眠れる、睡眠不足ゼロな社会がいいっすわ。
それよりこのボックス、もうちょっと大きくして中にデカいモニターと冷蔵庫とPCやゲーム機を置くスペースを設置して、ゲーミングボックス的な感じにならないっすかね。体を固定する仕組み自体はマジでよかったんですよ。
参考リンク:ネスレ
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.
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▼試さなかった木の方。こちらは壁全体がうっすらと光を透過するようになっている。明るいので、閉塞感はさらに無いものと思われる。
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