ロケットニュース24

【スラムダンク】山王工業ここにあり!沢北や河田が暮らす高校バスケの聖地・能代を訪ねる

2023年8月10日

前回、映画『THE FIRST SLAM DUNK』で「沢北栄治が参拝した神社では!?」と噂される秋田県由利本荘(ゆりほんじょう)市のスポットを訪ねた。秋田県にはもう1か所、聖地とされる場所がある。

山王工業高校のモデル、能代工業高校のある能代(のしろ)市だ。前回ご紹介した神社は噂の域を出ないが、同校は違う。かつてのマネージャー・新岡潤さんが映画に音響監修として参加し、OBが能代工業の応援を忠実に再現したことでも話題に。

映画に沸くいま、高校バスケ界の伝説、能代工業高校のお膝元を歩いてみた!


・バスケットボールの街「能代」

由利本荘市からおよそ100km、秋田県の北部にある能代市。作者の井上雄彦先生も何度も同市を訪れているとか。

かつて怪物級の伝説を残した能代工業高校の所在地ということもあり、とにかく街全体がバスケ推し! 駅に降り立つと、ホームにはいきなりバスケットゴールがある!

これはオブジェではなく、本当に使えるバスケットゴール。列車の停車時間にフリースローを体験できるイベントがあるらしい。

「大館能代空港」という空路もあるが、航路や便数は少ないので、山王工業の選手たちも帰省などで駅を頻繁に利用しているはず。

駅全体としては、かなりのどかな雰囲気だ。無人駅ではないものの、時間帯によっては駅員・乗客含めてほぼ無人。のんびりした時間が流れている。

そもそも能代市は人口5万人ほどの小さな地方都市。ここに全国の中学校で名を馳せたバスケ部員が集まり、寮生活を送ってきたことに不思議な感慨もある。



駅から街の中心部までは徒歩10分ほど。筆者は車だが、これからご紹介するスポットはほぼ徒歩で巡れる。

駅からほどなくアーケード街にたどり着く。シャッターが降りている店も多いものの、商店が所狭しと建ち並び、かつては相当な賑わいだったことがうかがえる。

以前は能代駅を中心に4つの商店街、4400店もの商店があり、「東洋一のアーケード通り」とも呼ばれていたのだとか!

いま見ても立派な造りで、往時にはかなりハイカラでモダンなストリートだったんじゃないだろうか。しかし現在、そのおもかげはない。

昭和レトロな店舗がずらりと並ぶのに、人の気配がほとんどなく、ひっそりと静まりかえっている。ここだけ時間の流れが違うような独特のおもむきを醸し出している。異世界に迷い込んだみたいだ。

その一角、しっかりと “生きている” ことがわかる建物があった。「能代バスケミュージアム」だ。

その名のとおりバスケットをテーマにしたユニークなミュージアムで、入館無料、写真撮影OK。

館内には「常勝」の一時代を築いた名将・加藤廣志先生のコーナーや


昭和30年代の能代工業高校のユニフォームといった貴重なアイテム


スラムダンクと井上雄彦先生のコーナーなどが並ぶ。創刊号からすべてそろっている「月刊バスケットボール」は見どころ。

ワンフロアだけの決して広くはない館内だが、所狭しとバスケに関する資料が収められ、とにかくバスケ愛がすごい!

先ごろ行われた山王工業 vs 湘北戦の全国同時上映では、山王への応援メッセージを全国から募ったり、試合の模様を公式SNSで実況ツイートしたりと、粋な企画を実施。まるで山王工業や湘北が実在の高校であるかのような演出が話題を呼んだ。


対象を問わず、なにかを「めちゃくちゃ好き」「愛してる」という人に触れると、自分までプラスのエネルギーに感化されて元気がわいてくる。博物館というよりはギャラリーと呼んだほうがいいくらいの、本当に小さく素朴な場所なのだが、愛にあふれていた。


ほかにも街にはバスケットボールをかたどったバス停や


マンホールなど、バスケにちなんだデザインが多数。先ほどの「能代バスケミュージアム」ではマンホールカードも用意する。まさに「バスケの街」といった雰囲気だ。



さらに、探訪の目玉となるのは能代科学技術高校だ。「能代工業は?」と思うが、残念ながらその名は現存しない。

反対の声もあったと聞くが、学校の統廃合で「能代工業高校」の名はなくなり、「能代科学技術高校」として再スタートを切っている。

個人的見解だが、せめて愛称として残す、とかできなかったものだろうか。商売でも芸術でもウェブの世界でも、「誰もが知る名前」というのは努力したり、お金を積んだりしたからといって手に入るものではない。遠い未来にわたる大きな損失のような気がする。

話を戻すが、なんと能代科学技術高校バスケットボール部の活動は、誰でも見学可能!

体育館内の写真撮影やSNS掲載は不可で、練習の邪魔をしないなどルールがあるが、一般の人でも2階ギャラリーから練習を見学することができる。予約や事前申込は不要で、入館時に記名するだけでよい。これもかなり珍しいのではないだろうか。

大会前など非公開になる時期もあるとのことなので、詳細は公式サイトで確認して欲しい。

ちなみに筆者の訪問日は急きょ練習日程が変わり、運悪く誰も練習をしていなかった! くぅぅぅぅぅ無念!!

涙を拭きつつ、最後は秋田のご当地ラーメンとして知られる「吾作ラーメン」で締めた。能代市内には2店舗あるが、ここだけは徒歩だとちょっと厳しいので、車かタクシーがよいと思う。

バターたっぷりの濃厚な札幌風ラーメンで、汗をかいた真夏の身体に染み渡る。とても美味しかった。



・聖地巡礼MAPを参考に

森子大物忌(もりこ おおものいみ)神社のある由利本荘市と、能代科学技術高校のある能代市。両市は連携して「聖地巡礼MAP」を発行するなどスラムダンク関連スポットをPRしている。インターネット上でもMAPを閲覧できるので、訪れる際には参考にして欲しい。

少子化による学校の統廃合や、空き店舗の並ぶ商店街など地域の課題も見えるが、バスケットボールへのアツい情熱を感じられる街だ。

なお、映画『THE FIRST SLAM DUNK』は8月31日に終映を予定している。長い夏がついに終わる。感動をありがとう。


参考リンク:能代バスケミュージアム能代科学技術高校バスケットボール部だより能代観光協会(聖地巡礼MAP)
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

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