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いつの間にかカップヌードル「しお」がリストラされていたので、新発売の後任「ねぎ塩」を食べてみた / アグレッシブな味わい

2023年4月19日

たまに食べるカップヌードルの、あの美味しさは何なのか。あの「たまに」の感動を味わうために、筆者は日頃カップヌードルを節制している。これは完全に憶測だが、時間を置くことで体内のカップヌードルホルモンのようなものが活性化し、化学反応を促しているのだと思う。

ともあれ、そうしたカップヌードルとの距離感ゆえに、筆者は「ある事件」に気付くのにも遅れてしまった。いつの間にか、そう、いつの間にか「しお」味がリストラされていたのである。そしてその後任として、「ねぎ塩」味が新発売されていたのである。

改めて説明すると、事件が起きたのは2023年2月27日、オリーブオイルの風味が利いた洋風の「しお」味に代わり、新たに和風の「ねぎ塩」味がデビューした。確かに他の定番の味に比べて「しお」味はマイナーな感があったが、この大胆な刷新には驚かされた。

公式HPによれば、2003年の発売以来、旧「しお」味は約20年のあいだ登板し続けた。日清としても苦しい決断であっただろうと推察していたところ、たまたま目に入った「ねぎ塩」味のCM内にて、軽やかなメロディとともに「さようなら 売れてない しお味」という歌詞が歌われていた。

https://twitter.com/cupnoodle_jp/status/1630779898750021632

あまつさえ、「ねぎ塩」味のカップヌードルを模したキャラクターが、旧「しお」味のキャラクターに向かってドロップキックを放っていた。

激しくドライである。すがすがしいまでの利益主義に、こちらも「売れていないなら仕方ない」と思わされる。一方で、ラーメンに対する権利意識が発達した社会であれば、「旧しお味を守る会」などが発足してもおかしくない処遇にも感じる。

とはいえ、あの日清のことだ。物議を醸したとて、それも織り込み済みであろう。むしろ筆者は、「ねぎ塩」味への多大な自信のようなものをCMから受け取った。ここまで深入りしておいて、「塩の新定番」を担う同商品を素通りするわけにもいくまい。


そういうわけで実物を入手したのだが、特徴的なのが蓋部分に付属している、炭火焼き風味の鶏油(チーゆ)だ。通常通り熱湯を注いで3分待ったのち、この鶏油を加え入れることで「ねぎ塩」味は完成する。

一体どんな仕上がりになっているのか。心中で期待しつつ、しかし実のところ、方向性に関する予測はついていた。そして一口食べた瞬間に、「やはり」と思う。

最初に感じたのは匂いだ。炭火とネギの香ばしい匂い。鶏の炭火焼きそのもののような芳(かぐわ)しさは流石ながら、鼻を突くようにパワフルである。また、鶏の旨味がふんだんに溶け込んだスープも、鶏油の甘さで角が取れてはいるものの、しっかり塩気が強い。

いずれも高いクオリティだが、クセがある。定番を任されているにもかかわらず、安全志向とは程遠い。大人しく万人受けを狙うことなく、刺さる人を全力で刺しに行っている

まあ、そうであろう。あのCMを見た時からわかっていたことだ。ドロップキックを使うような商品が「置きに行った」仕上がりであるわけがない。何の話をしているのかわからなくなってきたがラーメンの話だ。カップヌードル「ねぎ塩」味の話だ。

旧「しお」味に「席を譲ってくれ」と頼むような真似などせず、自分で持ってきた椅子で旧「しお」味に殴りかかるような、凶器攻撃を仕掛けるレスラーのような攻撃性。アグレッシブな味わい。つまりはそれこそが「ねぎ塩」味の醍醐味であり、ひいては挑戦的な日清らしさとも言えよう。


さて、そんな「ねぎ塩」味が筆者に刺さったかと言えば、答えはかなりイエスである。香りもスープも好みだ。極めつけに、公式Twitterが紹介するアレンジ法を試した結果、これが絶妙に美味しかった。そのアレンジとは、残ったスープにライスを投入するだけの簡単な雑炊だ。

「めっちゃ売れているカップヌードルねぎ塩」と前置きされているところに若干のしこりを感じるが、それでもこの雑炊におけるスープとライスのマッチング具合を体験してしまうと、心のメーターが旧「しお」味ではなく「ねぎ塩」味の方に振れてしまう。

ただ敢えて書いておくと、筆者がそうだというだけで、何だかんだ旧「しお」味の方が好きだという人もいるかと思う。同じ塩味と言えどタイプは全く異なる。上でも「好み」という表現を遣ったように、勝敗の判断は個人の嗜好によるところも大きいだろう。

加えて最後に再び強調しておくと、日清が窺わせた自信の通り、「ねぎ塩」味がハイレベルであることは確かだ。何にせよ、まずは多くの人に味わってみてほしい。今回、「ねぎ塩」味は不意打ち気味に出番を得たが、その出番がいつまで続くか、味わった上で見守るべきだ。

これは完全に憶測だが、もしかしたら旧「しお」味も、腐ることなく虎視眈々と再登場を狙っているかもしれない。復活した時の感動を最大限に味わうべく、カップヌードルホルモンをみなぎらせておくとしよう。

参考リンク:日清 公式HPカップヌードル 公式Twitter
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.
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