3年ぶりに開催された東京モーターサイクルショー2022。会場には数えきれないほどたくさんのバイクが展示されていた。

展示会で実車を見ると、つい買いたくなってしまうのは筆者だけではないだろう。なんとかローンを組んで無理をすれば、1台や2台は増車できるような……気がしなくもない。

しかし1台の車両を前にして「どれだけ頑張ってもコレだけは絶対買えない」と認めざるを得なかった。何故ならそのバイク、高級車の代名詞であるポルシェすら2台買えちゃうぐらいの超・超・高額車両だったのだから!!!!

・珍し過ぎて人だかり

そのバイクが展示されていたのは、高級外車の車両やパーツを取り扱うMOTO CORSE(モトコルセ)のブース。

ブース内に飾られていたのはどれも1000万円近くするような高級車ばかり。圧倒的なオーラを感じる展示であったのだが……中でも人だかりができていたのが、コチラの車両。

Vyrus 988 Alyen(ヴァイルス 988エイリアン)


注目の車両価格は……

なっ、なんと!


2288万円!?!?!?


どっひゃぁぁぁああ~~~~! ケタひとつ見間違えたのではないかと疑い、何度も目をこすってしまった。

しかしこんな高級感のあるバイク、228万円で買えるハズがないもんな。改めて見ても、間違いなく2288万円だ。

筆者のような平凡な人間では、一生買うことができないような超高級バイク。それを、手を伸ばせば届きそうな距離から観察できるというのだから、モーターサイクルショーって凄すぎるぜ。(もちろん実際に触るのはNGだ)


・オーナーが寛大すぎて笑った

興奮冷めやらぬまま、スタッフの女性にお話を聞いてみた。

筆者「すみません。もしかしてコレって、今回の東京モーターサイクルショーで一番高額な展示車両ですか?」

スタッフ「左様でございます。世界に20台しか製造されていないうちの1台、しかも先日ようやく日本に到着したばかりの車両を、オーナー様のご厚意で展示させていただいております」

筆者「んぇっ! 既にどなたかが購入された車両なんですか!?」


思わず変な声が出てしまった。後ほど調べてみたところ、988エイリアン、2020年に発表されて即完売したらしい。2288万円のバイクを即決で買える人がいるなんて……今までも、そしてこれからも筆者には縁がなさそうな世界である。


筆者「……あれ? さり気なかったので聞き流しかけましたが、あくまでご厚意で展示されているんですか?」

スタッフ「はい。おそらく今後は見ることができない展示かと思います」


もしも筆者が988エイリアンのオーナーになったら、誰の目に触れさせることもなく自分だけで眺めて楽しむだろう。寛大な人っているんだな、太っ腹過ぎて思わず笑ってしまった。


スタッフ「ヴァイルスは、アスカニオ・ロドリゴ氏による独自の世界観を持つ二輪メーカーです。エンジンやタイヤなどごく一部を除いて、ほぼすべてのパーツが988エイリアンのためだけに設計されています」

スタッフ「展示車両は、オーナー様のご希望で紫の差し色を入れております。それ以外はすべてヴァイルスにお任せしたデザインです。」


スタッフ「排気パイプに取り付けられたヒートプロテクションの内側には、金箔が貼られています。F1マシンにも使われる手法で、遮熱性に優れております」


スタッフ「車体サイドにあるエアボックスは、ロゴも含めてアルミ削り出しです」

筆者「な、なるほど……」


実を言うと他にもたくさん説明をしていただいたのだが、一般人程度のメカ知識しかない筆者には到底理解できない内容であった。

ただひとつわかったのは、これまでの常識を覆すような技術が、お金を惜しまずふんだんに使われているということ。もはやアートの域に達した1台ということなのである。


・壮大な夢の一部を垣間見た

ライダーの数だけ価値観があり、バイクに対する考え方は人それぞれ。極端な話をすれば「走れさえすればOK」という考えもあれば、988エイリアンのように作品として高みを目指す方向性もある。

正直筆者の収入では「世界最高峰のバイクを所有したい」なんていう夢は、そもそも概念すら持ち合わせていなかった。しかし今回の東京モーターサイクルショーで「夢」の一部を垣間見られただけでも、取材へ行った意味があるのかもしれない。

参考リンク:MOTO COURSE
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.

▼一般的なバイクであれば、前輪はフロントフォークという 金属の棒状のパーツで挟んで固定されているのだが、

▼988エイリアンはハンドルが浮いている!?

▼と思ったら、スイングアームで支えられているという、奇抜な構造。どういう仕組みでハンドルを切るのか、想像もつかない。

▼右側から見ると、シートとタイヤが宙に浮いている。ホイールも信じられないぐらいに薄くて細い!

▼筆者が見たことがあるどのバイクとも、まったく違う構造をしている。周りの来場者たちも思わず「えぇ……? どうなってるの?」と声をあげていた。

▼一度見たら忘れられないほどに特徴的なデザインのフロントは、まさにエイリアン!