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一般道路と滑走路が交差するレアスポット / 岡山県「笠岡ふれあい空港」の成り立ちから現在の用途まで徹底調査してみた!

2021年12月13日

飛行機が飛びたつための助走区間である滑走路は、限られた人間しか入ることができない。稀にイベントなどで一般開放されることはあっても、通常であれば車どころか人ですら立ち入り禁止である。

ところが、だ。岡山県笠岡市には、なんと滑走路と一般道が交差している場所があるというではないか。これはチェックせずにはいられない、ということで現地調査へ行ってきたぞ!

・しっかりと交差しているぞ!

その場所は「笠岡ふれあい空港」という。道中は両サイドを田んぼと畑にはさまれた、もはやこれが滑走路と言ってもいいんじゃないだろうかってぐらいにまっすぐな道をひたすら進む。


そろそろかな? って思ったぐらいに現れたのが……

こちらのゲートだ。


「航空機離着陸中 立ち入り禁止」

なるほど、滑走路を使用する際はここのゲートを閉じることで道路を封鎖しているらしい。空港というともっと厳重に管理されていそうなものだが、その気になれば簡単に入り込めそうなぐらいの軽めのゲートで驚いた。

これがあるということは、すぐ先は滑走路ということなのだが……


あった!


あったぁ!!

写真奥から 滑走路 → 道路 → 滑走路の続き である。


全長800m、幅25mとかなり小さいが、紛れもなく滑走路。話に聞いていた通りしっかり道路と交差しているぞ!


・元々は農道空港だった

空港の入り口は、滑走路を通り過ぎてグルっと回った先にある。入り口には「笠岡ふれあい空港」と立派な看板があるのだが、実は空港としては2021年現在 閉業している。

なお「笠岡ふれあい空港」は最近つけられた名称で、現役時代は「岡山・笠岡地区農道空港」という名称。名前の通り 一般客ではなく、農産物を移送する飛行機のために作られた発着場ということなのだそうだ。

当時のパンフレットを見ると、空港が完成したのは1991年。桃やぶどう、バラ、魚介類など様々な農・海産物を全国7カ所へ向けて出荷することが想定されていた。

ところがトラックによる陸路輸送が発達して費用面から飛行機を飛ばす機会が減ったため、廃業。その後は主にイベント会場として使われるようになっていったのだという。


・元々は道路と交差していなかった!?

笠岡市の担当者にお話をうかがってみた。


──よろしくお願いします。滑走路内を道路が横切っている場所って全国的にもかなり珍しいですよね。滑走路を使用する際は、道路を封鎖するのですか?

担当者「そうですね。道路を封鎖した上で仕切りを動かし、普段は道路で区切られている滑走路を開放します」



担当者「滑走路と道路を仕切るポールにはタイヤが付いており、可動式になっているんですね。そして実を言いますと建設直後の滑走路は今よりも200mほど南にあり、道路と交差していなかったそうなんです」

──えっ!? というと、建設後に滑走路を北へ200mズラしたということなんですか?

担当者「そうなんです。滑走路の周りに障害物を置かないことが航空法で決められているのですが、完成後、南側に工業団地ができてしまったんです。このままでは航空法に引っかかってしまうということで今の位置までズラした結果、一般道と交差をする現在の状態に落ち着いたと聞いています」

──なるほど……。ちなみにここ最近はこちらの滑走路から飛行機が飛び立つ機会はあるのですか?

担当者「年に1回飛行機を飛ばすイベントを開いています。2021年は11月13日にエアレース世界チャンピオンの室屋義秀さんをお招きして、笠岡市の空に飛行機で白線を描くイベントを開催しました。自衛隊のJASDF Kawasaki T-4やHONDAのHA-420といった飛行機にも来ていただき、大変盛り上がりました。

また今後は「空飛ぶクルマ」と呼ばれる無人飛行機のテスト用の発着場としても使っていこうと考えています。2021年6月に国内で屋外初の無人試験飛行ということで、中国のイーハン社が作った飛行機のデモ飛行を行いました。大阪万博での実用化に向けて今後はこういったテスト飛行を増やしていきたいと思っています」

──国内初! 元空港だからこその使い方ですね!! 普段は飛行機以外のイベントも多いのですか?

担当者「そうですね、車を展示したり、小さいコースを作ってバイクが走るようなイベントも開催しています。年間200日以上は何らかの形で使っていただいております」

滑走路内にはタイヤ痕が残されていた。滑走路内で車がパフォーマンスしたこともあるのかもしれない。


・無人飛行機の未来がかかっているかも

正直に言うと、現地へ行ってお話を聞くまでは「せっかく作ったのに使われていない空港ってもったいないなぁ……」と考えてしまっていた。しかし実際にお話をうかがうと想像以上に頻繁に使われていることがわかっただけでなく、元空港だからこそできることを探して実行されていることが伝わってきた。

また取材当日も現地にはたくさんの方が遊びに来られていた。建設当時の想定とは違う使われ方なのかもしれないが、笠岡市にとって笠岡ふれあい空港は、他の自治体が持ち得ない大切な財産であると感じた。

大阪万博は2025年開催予定。4年後上空で空飛ぶクルマを見かけたら、もしかするとこの小さな滑走路でのテストを経た機体かもしれない。実に夢のある未来ではないだろうか。

参考リンク:笠岡ふれあい空港
執筆:高木はるか
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]

▼滑走路は道路を挟んで約600mと200mに分断されている。

▼小さくとも立派な滑走路だ!

▼この日、空港内では大型バイク、ハーレーのイベントが開かれていた。

▼滑走路1本を贅沢に使い、最高速アタックをしていた。こういう使い方も滑走路ならでは。

▼過去には鳥人間コンテストの参加者が試験のため使っていたこともあるそうだ。

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