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【新発見】ピンクの容器でドリンクを飲むとしょっぱさマシマシに感じる! 思わず人に話したくなる豆知識

2021年8月3日

皿で料理の印象が変わる、スイカに塩をかけると甘くなる、溶けて初めてアイスの糖度にゾッとする……経験としては「知ってる」ということでも、科学的に立証するとなると難度がグッと高くなる。

とくに味覚というきわめて主観的な感覚は、科学の基本条件とされる実証性、再現性、客観性の担保が難しい。そんな中「容れ物が変わると、味めっちゃ変わるやん」ということを証明した研究成果が発表された。


・実験でわかったこと

千葉大学文学部卒業生の岡田和也氏、大学院人文科学研究院の一川誠教授による研究で、容器の色が、飲料の特定の味を強調したり弱めたりする効果があることがわかったという。

商品パッケージなどに応用することで「減塩や糖質制限にもつながることが期待されます」とのこと。へぇ~!

どんな実験だったかというと、中の飲み物が見えないように完璧に隠した8色(白、黒、赤、黄、青、緑、ピンク、茶)の容器を用意。

中には4種の水溶液(甘味、苦味、酸味、塩味)が入っている。食塩やクエン酸を溶かしたもので、特定のメーカーやドリンクではなく、汎用性があるところがミソ。

あとは被験者に飲んでもらい、味の強度を評価してもらう。本当に色の影響なのかを確認するため、アイマスクをして答えてもらうフェーズもあるぞ。



その結果、黄色い容器だと酸っぱさを強く感じ、ピンク色の容器だとしょっぱさを強く感じたのだそう。


逆に黒、青、緑の容器は甘味を弱める。せっかくの甘いドリンクも、これらの容器に入れると甘さを感じられなくなるということだ。


なぜこんな現象が起こるのかというと、ひとつにはイメージの力がある。研究チームは容器の色からイメージされる味と、実際の味が一致しているかどうか「調和度」も尋ねている。

わかりやすいのが黄色。「黄色=レモン=酸っぱい」というイメージは多くの人がもっている。実験に使われたクエン酸溶液も、レモン汁の味にそっくりらしい。

黄色い容器から水を飲んだ被験者はすぐに「レモンだ! 酸っぱ!」と思って酸味を強く評価したことは想像に難くない。


一方で、イメージでは説明がつかない部分もある。たとえば塩味を強めるというピンクだが、ピンク色でしょっぱい食べ物というのは筆者には浮かばない。

研究レポートでは「今後の解明が必要」としながらも「岩塩?」と考察していたが、多くの人に共通するイメージとはいえないだろう。

味覚と色彩との関係には、単に過去の経験や学習だけでは説明できない神秘の領域がありそうだ。


・味覚はあてにならない

ちなみに過去の研究(先行研究)では、味覚が実にいろいろな要素に引っ張られることがわかっている。

たとえば茶色の容器で飲むコーヒーや、橙色・茶色の容器で飲むチョコレート飲料は味がより濃く感じられるという。錠剤や液体の色も、味覚に影響を与えるのだとか。

デザートは黒い皿よりも白い皿の方が甘味が強く感じられるのだそう。白い食器は食材の色をよく映して味を強調する「映え」効果があるようだ。

興味深いエピソードをもうひとつ。実験に使用したのは甘味、苦味、酸味、塩味の4味なのだけれど、本当は「うま味」も検討されていた。

しかし予備的実験で「うま味とはどのような味か」についての判断が人によってまちまちで、共通の特性を定義するのが困難だったため、扱わないことにしたんだって。

読めば読むほど「味覚はあてにならん」と実感するばかり。


・生活改善にも活用できる

食材や料理の色を変化させるのは大変だが、食器やパッケージなら簡単に変えられる点に、この研究の意義があるのだという。

たとえば塩味を強調するピンク色の容器を使うと、少ない塩分で強い塩味を感じることができ、減塩効果につながる可能性がある。


イメージと合った色の容器で味わうと甘味が強調されるというデータも得られている。しょっぱさ増強のピンクだが、フルーツのイメージと結びつくと今度は甘味を強める。

ピーチジュースはピンクの容器で飲むと甘さマシマシになり、糖質制限など食生活改善にも応用が期待されるんだって。これダイエットにもいいじゃない!

研究成果は日本視覚学会出版の学術誌Vision Vol.33 No.3にて公開。Webでも全文が読めるから、興味のある方はそちらもどうぞ。


参考リンク:PR TIMES
執筆:冨樫さや
Photo:PR TIMES、RocketNews24.

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