ゴキブリ……って文字を書くだけでもうすでに嫌だァァァアアア！ 部屋に出てきたら大戦争。というか、どちらかと言うと私（中澤）が逃げ惑う。無理無理無理ーーーーーーッ!!
奴らを部屋に存在させてはならぬ。絶対にDA！ そこでゴキブリのプロに対策を聞くべく、兵庫県赤穂市のアース製薬研究所まで行ってみた。
・人里離れた場所にそびえ立つ白い建物
最寄りのJR坂越駅を出ると、のどかな風景に桜が咲き乱れていた。駅前ですら時間がゆっくり流れているかのようだが、研究所に行くにはここからさらにタクシーに乗る必要がある。
駅から20分くらい走ると、山道の木々の合間に海が見えた。山と海に囲まれた広大な敷地にアース製薬の白い建物が輝いている。タクシーの運転手さんによると、この辺り一帯がアース製薬の村みたいなものなのだとか。
・殺虫剤のプロ中のプロ
アース製薬が殺虫剤の名門であることはもはや説明の必要もないだろう。この研究所には日夜、殺虫剤を研究するプロたちが集っている。会議室で我々を出迎えてくれたのは研究所員の川口美香子さん。川口さんは研究所ではどういったポジションなんですか？
川口さん「研究開発本部研究部部長としてチームを率いています」
──部長さんでしたか。普段はどういったことをされてるんでしょうか？
川口部長「ゴキブリを駆除する商品を開発しており、そのためにゴキブリを育てています。60万匹」
地獄か。
川口部長「見ます？」
見ません。
言われてみれば、殺虫剤を研究するには効果を試す害虫が必要である。だが、本日来た目的はゴキブリ対策を聞くためで、地獄に飛び込みに来たわけではない。何度でも言おう。絶対見ぃへんからな！
そんなゴキブリ60万匹を川口部長は毎日見ているという。山と海でほぼ隔離されたこの場所で。ゴキブリ好きなんだろうか。
川口部長「家に出てきたら発狂します」
──逆によく仕事に耐えられますね。なぜ、この職に就こうと思ったんですか？
川口部長「就職氷河期で……」
──地獄か。この話をこれ以上掘り下げるのはやめておこう。今日は、対策を聞きに来たわけだし。
・アース製薬がオススメするブラックキャップの仕掛け時期
ゴキブリ対策と言えば、私がお世話になっているのはブラックキャップだ。巣ごと全滅させるその威力は、対ゴキブリ戦線において必須の罠と言える。
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とは言え、出てきてから罠を仕掛けていたら、最低1度はゴキブリの姿を見ることになってしまう。願わくば知らないところで勝手に滅んでほしいのだが、仕掛けるタイミングって何月がベストなのだろうか。アース製薬としてのオススメはありますか？
川口部長「まずは、4月、5月が一番オススメですね」
──それはなぜですか？
川口部長「そこから活動が盛んになり、増え始めるんですよ。冬の間ってあんまり活動が盛んじゃないんですよね」
──冬の間もいるんですか？
川口部長「家が温かいので1年中います。休眠状態から覚めてくるのが4月でお腹が空いているのでより効果的です」
──「外から入ってくるのもこの時期なんですよ」
誰!?
「研究部グループリーダーの原田恵理です！」
原田リーダー「外で休眠している個体もいるんですが、そういった個体は休眠明けに家の中に入ってこようとするので、外用のブラックキャップを置いておけば安心ですよ！」
でも、ブラックキャップって誘引効果がありますよね？ それで引き寄せられてゴキブリが増えるってことはないんでしょうか？
──「その点に関してはご安心を」
誰ッ!?
「研究部研究業務推進室学術教育課係長の浅井一秀です」
浅井係長「ゴキブリの探査能力がそこまで広くないので、遠くから見つけてやってくるということはないんですね。なので、入ろうとする個体をシャットアウトする効果が期待できます」
──「8月と9月も忘れてはいけないわ」
誰だよォォォオオオッ!?
「研究部研究業務推進室生物研究課課長の有吉立よ」
有吉課長「ゴキブリは8月、9月に爆発的に増えるわ。卵1つあたり24匹の幼虫が孵（かえ）るの。大体メスは3日、4日おきに1つ卵を産んで、一生で平均20個の卵を産むから、1匹見たら500匹というのはあながち都市伝説でもないのよ」
──すみません。では、結局何月がベストなんでしょうか。
一同「4月から5月で」
どないやねん。
というわけで、ブラックキャップは4月から5月にいったん仕掛けよう。なにはともあれ、就職氷河期でここに流れ着いた川口部長が楽しくやってそうで何よりだ。と、その時……
有吉課長「ついてきなさい。良いものを見せてあげるわ」
と、窓から出ていく有吉課長。一応取材先の人だし、放っておくわけにもいかないので、ついていったところ……ギャァァァアアア！ 閲覧注意閲覧注意閲覧注意ーーーーー!! 次ページは閲覧注意！
ちなみに記事で登場する、ブラックキャップとおすだけアースレッドは、Amazonで期間限定セールを実施中だから気になる人は急いで購入だ。
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執筆：中澤星児
Photo：Rocketnews24.
・【衝撃】ゴキブリ絶対無理な女性が60万匹のゴキブリも平気になった理由（その2）
怪しげな言葉を残し窓から出て行った有吉課長を追いかけていくと、ある建物に入っていった。中に入ってみると、壁には無数のガラス窓がついており、その中にはダニや蚊、そして多種のゴキブリの姿が。生きている。まるで、害虫の水族館だ。これはまさか……
川口部長「研究所ですね」
やられた……。来るつもりはなかったのに有吉課長の笛についつい踊らされちまった。その有吉課長は扉に「！」のついた謎の赤い部屋へと入っていった。何を企んでやがる！ 待ちやがれ!!
ギャァァァァァアアアアアアッ！
あまりに衝撃的な光景だったため、本文中の画像でもモザイクを入れさせてもらったが、どうしても見たいというもの好きは画像をクリックしてくれ。60万匹のゴキブリが無修正でこんにちはするから。それはさて置き、なんで見せたんだコラァァァアアア！
有吉課長「特に意味はないわ！」
ちなみに、ネットでは「幸運を呼ぶ白いゴキブリ」なんていう都市伝説があるが、普通に白いゴキブリがいる。にもかかわらず、研究所員たちが特に幸せに見えなかったことは内緒だ。
・ゴキジェットで実験
さて置き、せっかく研究所に来たし普段の実験を一緒にやろう的なオーラで物事を進めていく研究所員たち。水を得た魚みたいになってるとこ悪いけど、正直、全然やりたくないんですが……
浅井係長「やらないと終わりませんよ」
嘘だろ。
しかし、浅井係長の眼鏡の奥の瞳はまっすぐだった。まっすぐすぎるその目に圧倒されていると、気づけば一緒に実験することになっていた。
地面に的のように中心からの距離が書かれた部屋で、プラカップに入れた数匹のゴキブリにゴキジェットを7秒間噴射。
カップをひっくり返してゴキブリを放つ……
って放つなら先言ってェェェエエエ！ 余裕で動き回ってるからァァァーーーーー!! と思いきや……
ほぼ中心の円の中で死んだ！ 凄い速効性!!
ゴキジェットTUEEEEEEEE!! この実験は二度とやりたくないけど、とりあえずゴキジェットのパワーだけは身をもって実感することができたぞ。
・ゴキブリ絶対無理な女性が平気になった理由
というわけでやっと会議室に戻ってきた。しかし、研究所員はみんな普通にゴキブリを触っていたが、やはり、川口部長が珍しい例でナチュラルにゴキブリOKな人たちが集まっているのだろうか？ そこで聞いてみたところ……
原田リーダー「研究所に来るまではゴキブリは絶対無理派でしたよ。でも、研究所に来て研修期間に最初にやるのがゴキブリの世話なんです。正直、どうしてもできなくて泣いてしまう人もいますね」
──原田リーダーはどうやって克服したんですか？
原田リーダー「最初は嫌々だったんですが、じっくり観察していると、音とか風ですぐに引っ込むし、なんかシャイなところが自分と似てるなって思い始めて。今では研究所のゴキブリはむしろ可愛いです！」
川口部長「そうそう、研究所のゴキブリはなんか大丈夫だよね」
原田リーダー「家に出ると嫌なんですけどね」
有吉課長「子供みたいなものよ」
──そんな原田リーダーが開発した新商品が『おすだけアースレッド無煙プッシュ』。これは言わば簡易版アースレッド。アースレッドと言えばスモーク状の駆除剤で部屋のゴキブリを全滅させる最強アイテムだが、精密機器にカバーをかけたりしなければならず、準備と処理が手間だ。
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『おすだけアースレッド無煙プッシュ』はそんな手間がなく、使い方は家具の隙間などにシュッと吹きかけるだけで終わり。しかし、ゴキブリに直接かけるならともかく、隙間にかけるだけで本当に効き目があるんだろうか。
原田リーダー「ゴキブリにはグルーミングの習性がありまして。何か体についたらすぐにグルーミングするんですね。
『おすだけアースレッド無煙プッシュ』は、隙間に吹きかけることで、まず床などに付着し、そこを通ったゴキブリの脚につきます。そして、その後グルーミングで全身に薬剤がいきわたるんです。もちろん、脚などに付いた薬剤がそのまま体内に吸収され効く場合もあります」
──ちなみに、ワンプッシュしてからどれくらいの期間効果があるんでしょうか？
原田リーダー「1カ月です！」
──長い！
原田リーダー「効率的に殺せますよ！」
──自分と似ているのではなかったのか。一瞬、原田リーダーの笑顔がサイコパスみを帯びている気がしたことはさて置き、その観察力が活かされている商品であるように感じた。
愛をもってゴキブリ駆除のアイテムを開発するアース製薬研究所。数々の悲しみを超えて今日も奴らは征く。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と言うならば、これほど心強い存在もいないだろう。明日のゴキブリの可能性を摘み取りたい方は今のうちに！
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執筆：中澤星児
Photo：Rocketnews24.
▼オマケ。アース製薬研究所での中澤記者。ゴキブリが出てくるので苦手な方は閲覧注意。
