一般的に、人はハミ出た部分に目が行きがち。もっと言うならば、ハミ出た部分こそが人の記憶に焼き付きやすいものである。
そういう意味で、ガストの期間限定商品『はみでるステーキ(税込1099円)』は人の心理を巧妙に突いているように思う。なぜなら実物が……
名前のとおり、鉄板から豪快にハミ出しているのだ。お行儀のいいメニューが並ぶファミレスの中で、コレはなかなかのインパクト。少なからぬ人に対して、「肉のボリュームがエゲつない」という印象を与えるだろう。
実際に、『はみでるステーキ』を報じた各種メディアは “超巨大” だとか “ボリュームがハンパない” といった内容の記事を掲載している。たしかに、注文してみるとステーキ肉が鉄板を覆い尽くしているが……
これは見た目のトリックなのでは?
という気がしないでもない。意地悪な見方をすれば、もっと大きめの鉄板を用意するだけで肉をハミ出させずに済むような気がする。強いて例えるならば、あえてピチピチのTシャツを着ることで筋肉を強調するやり方と似たテクと言おうか。
──そうなると気になるのは、ピチピチのTシャツを脱がしても『はみでるステーキ』は本当にボリューミーなのか? という点。シャツを脱いだら「全然普通やん」となる可能性だって否定できない。……そのあたりを確認すべく、テイクアウトしてみた。
持ち帰って開封してみると、当然ながらテイクアウトでは容器から肉がハミ出していない。ここで肉がハミ出していたら色々な意味で問題だったが、やはりガスト。商品コンセプトよりも常識を優先させてくれたようだ。
・肉の分厚さは?
それにしても、実物を見るとやはり肉々しい……が! お世辞にも肉は分厚くない。部位にもよるが、4ミリから7ミリの間だろうか。ステーキという商品名である以上、もう少し分厚さが欲しいと思ったのが正直なところだ。
おそらく、この分厚さを受け入れられるかどうかで味の印象は大きく変わるだろう。「もうちょっと分厚い方がいい」と思ったらステーキ感はあまり無いかもしれないが、一方で「肉とソースがしっかりしていたらOK」という人にはコスパの良いメニューとなる気がする。
・重さを量る
で、何より気になるのがお肉自体の重さである。それを量るため、スケールでお皿の重さを引いてからお肉を乗せていく。ソースをどうするか悩んだが、今回はソースありルールで計量することにしたい。そしてその結果は……
163グラム!
……なので、ガストの『はみでるステーキ』は163グラムの牛肉に付け合わせが付いて税込1099円ということになる。
・ワイルドステーキと比較
これが高いのか安いのかイマイチわからないので、「いきなり! ステーキ」のワイルドステーキと比較してみよう。ワイルドステーキは200グラムで税込1113円。ただ、200グラムは火を入れる前の重さなので、調理すると200グラムより少なくなるはず。
実際に200グラムのワイルドステーキを買ってきて、肉やらバターやらをスケールに乗せたら……
182グラム
・ワイルドステーキの方がコスパはいい?
ここで情報を整理すると、以下の通り。
・はみでるステーキ(1099円、163グラム) → 6.7円 / グラム
・ワイルドステーキ(1113円、182グラム)→ 6.1円 /グラム
……ご覧の通り、お肉だけを見るとワイルドステーキ(200グラム)の方がボリューミーで、グラムあたりの価格も安いということになる。
したがって、『はみ出るステーキ』が「超特大」とか「半端なくボリューミー」だと紹介されるならば、200グラムのワイルドステーキは「超超特大」ってことになるし、400グラムのワイルドステーキなんて「フードファイター用サイズ」ってことになるのではないか?
——と意地の悪いことばかり言ってしまったが、もちろん私だって分かっている。格安ステーキチェーンと比較すること自体が、ファミレスのガストにとって不利な勝負だってことを。
そして、ファミレスのメニューの中では『はみ出るステーキ』がボリューミーな部類だってことも。ただ私が思うに、これはボリュームに対して賛辞を送るべき商品というより、その見せ方を楽しむ商品な気がするのだ。
何より、見せ方という1番大事な要素を犠牲にしてでもテイクアウト対応にし、社会状況に合わせてくれたガストの姿勢。そこがもっともポイントだと思うのだが、どうだろう。
どちらにせよ、この商品で私が何より印象的だったのは、ハミ出たお肉ではなく、テイクアウト容器にきっちりと収まった『はみでるステーキ』の様子だった。肉は一切ハミ出してはいなかったが、商品コンセプトから大きくハミ出していたのだから。
こういうハミ出しもまた記憶に残るということか。
参考リンク:ガスト「はみでるステーキ」、GoogleNews #はみでるステーキ
執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.