先日、立ち食いそば界を激震させたニュースがある。北海道音威子府にある駅そば・常盤軒の閉店だ。店主である西野守さんが、2021年2月7日に84歳で亡くなり、これを受けて閉店が発表されたのである。

「日本一ウマイ駅そば」と言われたこの立ち食いそば屋。行くことを夢見ながら結局行けなかった人も多いだろう。一度訪れたことのある者としては、西野さんのきっぷの良さを感じる笑顔を思い出さずにはいられない。この場を借りてご冥福を祈りたい。

一方、「日本一ウマイ駅そば」としてもう1つよく名前があがる立ち食いそば屋がある。姫路駅の『えきそば』だ。そこで姫路に行ったついでに寄ってみた。

・駅そばの魅力

そう「ついで」だ。これ凄く大事である。JR姫路駅は新幹線が乗り入れる日本有数のターミナル駅。そんな姫路駅の山陽本線5・6番線ホーム、7・8番線ホームにある『えきそば』はまさしくついでに寄ってしまう気軽な駅そばだ。

『常盤軒』のように、駅そばを目指して旅をするのもファンとしては味があるものだが、やはりこの気軽さは駅そばの強みの1つだと思う。そういう意味で『常盤軒』とは違う駅そばの魅力を持っているところも「日本一」に数えられる由縁なのかもしれない。

・そばではなく「えきそば」

と、店に入る前に分析したのだが、380円の「天ぷらえきそば」を食べてみると、その味もオリジナリティーにあふれていた

まず、つゆは出汁の味が強い関西風。関西風つゆの立ち食いそば屋と言うと味が薄くお湯みたいになっている店もあるが、しっかりとした出汁の味で薄さを感じさせない『えきそば』のつゆはちゃんとしてる。まあ、ここまでは普通とも言えるのだが、問題は麺だ。そう……


麺が中華麺なのである

いや、中華麺と言うとラーメン的な麺を想像するかもしれないが、味は中華麺でもラーメンほどつるつるシコシコしてない。どちらかと言うと食感はそばだ。なんだこの味は!?

とは言え、つゆとの相性は良く、初めて食べるのになぜか懐かしい。麺の食感のためか、そば屋のラーメンと呼ばれる山形県の鳥中華ともまた違う。そばと言うか、“えきそば” というオリジナル。唯一無二だから日本一。それが私が感じた姫路『えきそば』だった。

・なぜこうなった

しかしながら、気になったのは「なぜこうなったのか」ということ。そこで『えきそば』を運営するまねき食品に、この麺の成り立ちについて聞いてみた。

まねき食品「元々、うどんをメインにやっていたんですね。しかし、小麦粉が軍の統制品になって高くなり、またうどんは日保ちもしなかったので、試行錯誤の結果『かんすい(中華麺特有の風味、色、コシを作るために使用されるもの)』を入れて中華麺となりました。昭和24年(1949年)のことです」


──でも、ラーメンのつるつるシコシコした食感とも違うように感じたんですが、これは意図的に変えてるんでしょうか?


まねき食品「先ほども申し上げました通り、元はうどん屋ですので、味的にはうどんを参考に作られているんですね。なので、ラーメンほどはかんすいを入れず、うどんに近くなるように配合されています

──とのこと。まさに、そばでもうどんでもラーメンでもない第4の麺と言える。しかも、今年で開発されて72年が経ってるんだからもはや立派な歴史だ。

『えきそば』にしかないこの味。しかし、なんてことない気軽さも兼ね備えている。姫路に行った際にはついでに寄ってみてくれ。

・今回紹介した店舗の情報

店名 えきそば JR姫路駅在来線上り店
住所 JR山陽本線「姫路」駅構内5・6番線ホーム
営業時間 6:00~23:00(コロナ禍の影響で2021年4月21日までは21時閉店)
定休日 無休

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.


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