謎だ。富士そばはなぜこうも蕎麦ではないメニューの開発に余念がないのか? 2021年3月16日に販売開始となるメニューの名前を聞いて私(中澤)は、富士そばがまたやらかしたと思った。
その名も『ラクサそば』。ラクサって何やねん。日本蕎麦に使われる文字列じゃないぞ。危ない香りしかしなかったため、逆に試食会に行ってみた!
・あふれる東南アジアみ
で、試食会でどんなものが出てきたかと言いますと……
カレーそば……のようにも見える。ただし、使用されているのはいわゆる南アジア系のカレーを彷彿(ほうふつ)とさせるサラサラのタイプ。そこに海老、鶏ささみ、カニカマ、厚揚げ、ゆで卵、パクチーがトッピングされていて東南アジアみがあふれている。
・ひと足早く実食
予想通り普通の蕎麦ではない。しかし、食べてみると、クリーミーなカレーの味にガチ感があった。これはココナッツカレーかな? 甘めだがコク深いためご飯にも合いそうだ。
また、私はパクチーが苦手なのだが、ここにパクチーが入っている意味はなんとなく分かる。スパイスの後に来るパクチーの香りが口の中をスッキリとさせてくれるのだ。そこはかとなく「赤道に近いオーラ」すら漂っている。富士そばなのに。
で、肝心のそばとのコンビネーションだが、これもかなり良い。カレー味なのである程度合うことは予想がつくと思うが、カレーがやらしくない自然な味のため、そばの風味を塗りつぶさず引き立てているように感じた。正直に言うと、これまで食べた富士そばのメニューの中でダントツで一番ウマイしよくできている。
・ラクサそばの正体
と、客観的な目線で味を伝えるために、ここまであえて調べずにレポートしてみたが、結論は富士そばらしからぬガチのウマさ。どうしちゃったのよ富士そば。そこで本メニューの開発者である広報の工藤さんに話を聞いてみた。
工藤さん「ラクサはシンガポールで庶民レベルで根付いてるB級グルメのような麺料理なんですね。通常は米粉麺が入ってるんですが、ラクサそばは麺を日本蕎麦にしています。辛みがもっと欲しい時は付属のサンバルソースを足してみてください」
──言われてみれば、小瓶が付属でついてきていた。ひとすくい足してみたところ……
クッッッソウメェッ……!
唇ビリビリ系の辛さでクリーミーだったカレーに鋭い刺激がプラスされ味が締まる。サンバルソースSUGEEEEEEE! まるで夜間飛行中に見る香港の街のように、まろやかさの中で辛みがキラキラと輝いている。
っていうか、入れれば入れるほどにクソウメェッ! なんだこれ止まらねェェェエエエ!! なんで今まで誰も教えてくれへんかったん? ねえ、工藤さんなんで?
工藤さん「普通はひとすくいか、ふたすくい程度ですけどね」
──すみません、ウマすぎて取り乱しました。
工藤さん「私は出張でよくあの辺りに行くんですが納得の味にすることができました。シンガポールだとサンバルソースじゃなくて自家製の生姜入りチリソースを使っている店が多いですね」
──なんかいつもと違うじゃないですか。
工藤さん「何がですか?」
──富士そばってチャレンジスピリットだけしかないメニューが多いと思うんです。
工藤さん「それ私に言います?」
──今回ガチすぎないですか?
工藤さん「そうですねえ。実は……」
──実は……?
工藤さん「ラクサそばはシンガポールと日本の外交関係樹立55周年を記念したメニューなんです。だから下手なものは出せないなと。開発に5カ月かかりました」
──とのこと。普段からこれだけの気合でメニューを作ってほしいものだが、それだけに今回は気合が違うように感じた。ちなみに、価格は680円なのだそう。
前述の通り、東南アジアグルメを食べなれていない者の舌でもクソウマイラクサそば。個人的には680円の価値は十分にある。特にサンバルソースを入れた時のウマさはガチだ。富士そばについて「味は二の次」というイメージを持っている人ほど食べてほしい一品である。
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.