身の上話になってしまうが、今までの人生でどれだけセブンイレブンに助けてもらったかわからない。主に食生活において同店を利用した回数は数えきれないし、それゆえに愛着もある。死ぬならセブンイレブンで、たくさんの弁当や惣菜などに看取られながら死にたいと思わなくもない。

そんなセブンイレブンに、最近妙な食品があるのを発見した。自分が長年見てきた中でも、かなり上位の異彩を放っているように感じる。何が妙かと言えばネーミングだ。その名も「バブカ」……いや、「バブカ!!」である。

もっと言うなら、正式名称は「バブカ!!(チョコレート)」である。この「バブカ!!」とは一体何なのか。店頭で実物を前にした筆者は、それを考えて硬直してしまった。

チョコレートという表記と、パンの棚に並んでいることと、白い粉砂糖がたっぷりまぶされた菓子パンめいた見た目から察するに、自信はないがおそらく菓子パンだ。しかし正確な正体は筆者の知識量ではわからなかった。そしてなぜ商品名が語気強めなのかもわからなかった。

二重の謎が螺旋を描く中、せめて「バブカ!!」の味だけでも知りたいという思いが強まり、気付けば税込149円を正体不明のパンに捧げていた。何ならそのあと家路を急ぐことまでした。

が、帰宅して商品を開封するや、「やってしまった」という後悔の念に襲われた。フワリと漂うシナモンの匂い。筆者はシナモンが苦手なのである。

苦手といっても顔面にうっすら難色が浮かぶ程度なので食べられないことはないが、シナモンが入っていると前もって知っていたら買うのをためらっていたかもしれない。

しかし、ここまで来て食べないというわけにもいかない。何より長きに渡り筆者に安寧をもたらしてきたセブンイレブンの食品ならば、多少苦手な要素があろうと満足させてくれるはずだ。そう思い直して一口頬張ってみたところ、結果として正解だった。

バターを含んだデニッシュ生地はサクサクというより柔らかめで、しっとりとしつつも歯切れ良い。中に入ったチョコチップの硬さと重奏を織りなし、こちらの食欲を弾ませる。

驚いたのは、前述した通り糖分みなぎる見た目であるにもかかわらず、食べてみると意外にも甘さは控えめであったことだ。なめらかな口溶けのチョコフィリングは、しつこく主張せずにすっと消えていく。

そしてシナモンの匂いに関しても、口に含んだ瞬間はやや強く香るものの、不思議なまでに後を引かない。要するに美味しい。しっかり甘い菓子パンを求める方には物足りないかもしれないが、個人的にはこの塩梅が丁度良い。

味わいを強いて例えるなら、チョコクロワッサンに近いだろうか。とはいえ、やはりこれは「バブカ!!」という名の独特のパンだ。いや、高級感のある食感や上品な風味を鑑みると、むしろ感覚としては「バブカ……」とそっとこぼしたくなる一品であった。

改めて、このネーミングには謎がある。その一方で、今となってはしっくりくる部分もある。偶然の出会いを通じて、こちらの心を不意打ち気味に射抜いてきた憎らしさに一言物申すなら、こうなるからだ。「やってくれたな、バブカ!!」と。

参照元:セブンイレブン「バブカ!!」商品ページ
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

▼食後に調べたところによると、「バブカ」はもともと東欧発祥のパンで、ニューヨークで人気に火が付いたらしい