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【初体験】湯のみが欠けたので “漆” を使って修理してみた! 初心者にはちょっと難しかったかも…奮闘した10日間の軌跡

2020年9月5日

愛用していた湯呑のフチが欠けてしまった。欠けた部分からヒビも入っている。特別素敵な思いでがある訳ではないが、ひとり暮らしをする際に実家から持ってきたものだ。捨てるには忍びない。

そこでかねてより興味のあった金継ぎに挑戦してみることにした。初心者専用の、必要な材料と道具がすべて入った「金継初心者セット」というものがあるので、そちらを使用。果たして、成功するのか!? 詳しくは続きをご覧いただきたい。 

・小筆を別途買うと便利

まず「金継初心者セット」について、簡単に案内しておこう。同セットは、漆と漆工芸に必要な道具を扱う播与漆行(はりよしっこう)という会社が販売しているものだ。記者は税別7600円で購入。上記したように必要なものがすべてそろっているところが、ありがたい。

このセット以外にあったほうが良いモノを敢えて挙げるとすれば、小筆だろうか。ホームセンターなどで数百円で売っている先の細い筆があれば、漆を塗ったりする際に便利であると思われる。

さて、金継ぎと聞いてピンとこない方もいらっしゃるに違いない。ここまでの話でお気付きかもしれないが、 “漆” を使う修理法だ。割れたり欠けたりした部分を漆で接着し、継ぎ目に金などの粉を蒔いて飾るのだ。

セットに添付されている説明書によれば、11工程なのだとか。乾かしたりする時間も必要で、湿気が多ければそこそこ短めで済むが、冬であればかなり時間がかかることだろう。ちなみに記者は10日間かかったぞ(2020年8月)。これでも、スピーディーにできた方のようだ。

・全11工程

はじめて金継ぎにふれる方は、なにをどうするのかイメージが沸かないに違いない。記者は身近に漆職人ほか漆に詳しい人が数人ほどいるが、いざ自分でやってみると全くわけがわからなかった。以下、時系列でザックリとした工程を記しておきたい。

【金継ぎ 工程】

0. 準備。アルコールで器を奇麗にふく。

1. 漆固め。割れている部分に透漆(すきうるし)を塗っていく。次に塗る際に漆を吸い込み過ぎないよう、漆をしっかり染み込ませる。余分な部分についた漆はふき取る。

──乾燥──

2. 接合。割れた器を接着する作業。記者は真っ二つに割れていたわけではないので、こちらの工程は省略。

3. 接合続き。はみ出した部分を削るなどする。記者は省略。

──乾燥──

4. 刻苧(こくそ)付け。欠損部分を補修する。

ご飯と同量の透漆を混ぜる。

刻苧わたを加え、よく混ぜる。

ペースト状にするため木っ端を混ぜる。パンを作る時のような感じで、よく混ぜる。

すぐ乾くので、ラップで包むと良し。漆のついた板はテレピンもしくはアルコールでふき取る。

竹へらで欠けている部分を補う。空気を抜くように、ぴったりとくっ付けるようにする。

──乾燥──

乾燥したらカッターなどで平らにする。

5. 錆漆(さびうるし)付け。

塗る部分の周囲にマスキングテープを貼る。

砥粉(とのこ)に水を加え、ペースト状にする。それに漆を見た目5割程度加えて煉り合せる。

乾き予防でラップに包む。

竹へらで薄く塗っていく。

──乾燥──

6. 錆研ぎ。

マステを取り、砥石で錆付けした部分が平らになるよう優しくていねいに研ぐ。

7. 塗り。錆研ぎ下部分に、弁柄漆(べんがらうるし)を薄く均一に塗る。

──乾燥──

8. 塗の研ぎ。砥石で弁柄漆を塗った部分をていねいに研ぐ。黒い部分が見えないように気を付ける。研ぎ終わったらよく洗う。

──乾燥──

9. 金粉蒔き。弁柄漆を薄く均一に塗り、少しだけ乾燥させる。真綿に金粉を付けてそーっと乗せるように金粉をまぶす。

──乾燥──

10. 金粉固め。透漆を金粉の上に塗り、ティッシュペーパーなどで押さえるようにしてふき取る。ティッシュに漆が付かなくなるまで奇麗にふき取る。

──乾燥──

11. 仕上げ。メノウで金の部分を磨いて完成。

・最初から最後まで大変

はじめに断らせてくれ。早々に「あ……よくわからん。無理だ」と思った記者は、近くにいた漆のプロにご指導いただいた。ちなみに上の工程部分には、プロによるワンポイントアドバイスも入れている。

いやはやしかし、詳しい知識を持った人に頼りたくなるくらい、加減がわからず難しいのだ。まず時期によって乾かす時間が変わるため、初心者が判断することが難しい。漆を塗る量も良くわからない。何なら正しい扱い方もわからない。正直、説明書だけでは完成させることは難しいのではないかと思う。

いずれにしても、完成イメージが沸かないのが初心者の辛いところだ。記者は錆漆付けのあたりで若干、心が折れそうになってしまった。先が見えないって、ヤル気に関わるよなあ。加えて細心の注意を払わなければ、漆にかぶれてしまうしで、最初から最後まで大変だ。

そんなに簡単に漆が塗れるのであれば、職人さんは商売あがったりなのでそりゃあそうである。この記事を読んで「やってみたい」と思う方がどれだけいらっしゃるかわからないが、その際は心して取り組むことをススメたい。流れを大体把握できたことだし、記者はもう1回くらいはチャレンジしてみても良いかな……と思っているぞ。

参考リンク:東急ハンズ「金継初心者セット」
Report:K.Masami
Photo:Rocketnews24.

▼なんとかかんとか、プロの手を借りて完成

▼自分で金継ぎした湯呑で飲むビールは最高だね

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