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パソコンが古い、子どもがいると不可能、家族が我慢…「在宅勤務」に関するみんなの不満を調査 → 見えてくる改善点

2020年5月15日

感染症対策でオフィスに集合しない働き方が推奨され、当編集部のように早々に対応したところは、もう在宅勤務が3カ月近くになる頃だろう。家族と過ごせる、通勤時間が不要、無駄な人づきあいをしなくていい、など歓迎ムードも感じられたが、もちろんメリットばかりではない。

「不満買取センター」を運営する株式会社Insight Tech(東京都)が在宅勤務に関する不満の投稿を集計。「仕事の環境・子ども・健康・電車通勤・お金」の5つがピックアップされた。

ちなみに「不満買取センター」とは生活の中にある不満をポイント制で買い取るサービスで、企業の商品開発やサービス改善に役立てるらしい。筆者もかつて研修で「改善のヒントはクレームの中にこそある」と習った。どんな不満が出ているのか、みんなの声を見てみよう。


・パソコンがダメダメ

大きな不満の1つは自宅のIT環境に関するもの。パソコンが古い、動作が重い、Wi-Fiが使えない、周辺機器を揃える出費が増えるといった声だ。幸いにも当編集部は業務の性質上、普段からパソコンが仕事道具で、ライターも全国在住なのでそれほど不便は感じていないが、これが違う職種であったら他人事ではない。

突然自宅のパソコンで作業しろと言われても、必要なアプリケーションがない、USBやマウスなどの小物を買うのは結局自腹になる、情報格差が生まれるなどたくさんの問題が出てくるだろう。

その他、業務用の大型シュレッダーや印刷機など、家庭では揃えることができない機器もある。調査では自宅でシュレッダーをかけたゴミは処理場に持ち込まないとならず、一般家庭ゴミに出せないという声もあった。そのような「目に見えにくい困りごと」はなかなか上層部に伝わりにくく苦労すると思う。


・子どもがいると仕事にならない

「子育てしながらの在宅ワークはほぼ不可能」「誰かもう1人(子ども専属の)大人がいない限り無理」という切実な声も。 介護や育児をしながらの在宅勤務はコロナ以前から推進されてきた感があるが、確かに「在宅勤務=時間を自由に使える」というのは大きな誤解。子どもも療養者も「いま仕事中だから待って」は通用しない。

むしろ仕事と家事の境目がなくなり、目が回るような忙しさだと思う。多くの人が子どもと過ごせる喜びと引き換えに、生活がカオスになっていることだろう。


・個室がない、家族が(に)気を遣う

Web会議・オンラインミーティングには利点も多いが、同居の家族がその間ずっと「音を立てたり、会話もできず」ストレスが溜まるという意見も。短期間ならともかく、毎日のこととなると確実に神経がすり減る。家族が仕事をしている部屋に入れず、「着替えも取りにいけずまだパジャマ」という声もあった。

逆にミーティングに参加する立場になると、家族の行動に気が散ったり、イライラすることもあるはずだ。調査では「家族がいて集中できない」「それでいて成果を求められるのは普通に働いている以上にストレスが溜まる」という意見があった。

そもそも「家に作業場所(個室)がない」という問題が根本にありそう。前述の「家族の我慢」も生活音が届かないような距離を取れれば即解決だが、日本の住宅事情では仕事専用スペースを用意できる人はそうそういないだろう。少し前に話題になった押入れをデスクにするアイディアのように、知恵と工夫で対処するしかない。


・収入面できつい、職業格差がある

「テレワークでは残業代が出ない」など収入減にも関わらず、「家族全員が家に居ると食費や光熱費がものすごい」という経済的な不安も挙がっている。今後さらに深刻になっていくポイントだろう。

さらに「休めない職業、休める職業、テレワークできない職業、テレワークができる職業」「非正規は毎日出勤しないと生活できない」という格差を指摘する声も。これはあまりに大きな問題すぎて、筆者には意見を述べることができない。

世界中で職業を選べる人と選べない人がいるという圧倒的な現実があって、では全員が「選べない人」になればいいかというとそれも違うし、富を分配すればいいってものでもない。生きやすい社会のために個々人ができるのは、せめて周囲の人、それは身内だけではなく店員でも医療従事者でも道路工事の作業員でも、自分に関わる人に思いやりを示すことしかないのではないか。


・メリットもある

調査結果からは、在宅勤務のメリットもたくさん読み取れる。例えば「満員電車に乗らなくていい」「メンタル疾患の軽減」「地方の活性化」などなど。人の悩みの大部分は人間関係が占めているだろうから、職場の人づきあいから距離を置けることがメリットになっているケースもある。また、大都市でなくてもインターネットさえあれば働けるというのは地方在住者には大きなチャンス。

では、在宅勤務の普及を阻むものは何かというと「印鑑文化」と「情報セキュリティ」が挙がっていた。自宅のパソコンなんて、あっというまにサイバー攻撃の標的にされるよね、ということだ。


・改善できるところ

今回の調査対象は家族と同居している人が多かったのか、「家族との折り合い」が1つのキーワードだったように思う。「コロナ離婚」なんていう言葉も生まれたが、家庭と仕事の境界線がなくなることで、つい家族を邪魔に感じたり、理解してくれないと怒ったり……。

筆者も最近似たようなことを経験したのだが、変化が起きるときには必ず摩擦が生じる。良くも悪くも安定していた家族の形、生活の形が揺り動かされる経験になっているはず。「こうやればいいんだ」という感覚をつかみ、折り合いをつけて再び安定していくまでは時間が必要だ。

「前から折り合ってなかったよ」というなら別だが、在宅勤務でけんかが増えた、普段は気にならない欠点が見えてきた、などという現象はある意味当然のことのように思う。なので、諦めずにとにかく話し合うしかないだろう。

「時間を意識して行動する」「それを家族に宣言する」「場所を区切る」、そしてテレワークする側は「家族が気を遣うのが当然と思わない」、迎える側は「家で仕事に集中する大変さを知る」というところだろうか。新しい生活の形が肌に馴染むまでの過渡期を乗り切りたい。いつか来る終息を願って、もうしばらく頑張ろう。


参考リンク:@Press不満買取センター
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.

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