サバ缶の一番美味しい部分は「骨」だと思う人、手挙げてーーー! 大抵のサバ缶には、竹のフシのようになった背骨やその周りにある中骨が入っているだろう。その骨を崩さないように箸でつまむ。口に入れると、ホロッ……ホロホロッ! そしてたまに「くしゅっ」。まるでアーモンドボールクッキーのような繊細な食感が本当にたまらない。ビバ、サバの骨。

生のサバを家庭で調理すると、ほぼほぼゴミになるであろうこの部分が、サバ缶になると激ウマ中の激ウマ食品に生まれ変わる。ああ、あの部分だけを思いっきり食べられたらいいのに! サバの骨だけ缶、ないんですか? 何故ないんですか? 気になったのでメーカーに聞いてみた。

・メーカーに聞いてみた!

そんな疑問を正面から受け止めてくれたのは、大手食品会社「マルハニチロ」の広報担当の方だ。

同社は1910年から鮭缶の生産をスタートさせ、言わば日本における水産加工のパイオニアである。歴史だけでなく小さな疑問にも答えてくれる懐の深さに感謝しつつ、まずは「サバ缶の骨が美味しい食感になる理由」から聞いてみた。

──なぜサバの缶詰の骨はホロホロと柔らかく、味がしみて美味しいのでしょうか


マルハニチロ「サバの缶詰は、他の魚の缶詰同様、大きな釜で加圧加熱殺菌を行います。ご家庭の調理で言えば、圧力鍋で煮ているのと同じ原理です。したがって、骨まで柔らかく、味も全体に染みわたり、骨まで美味しく食べることが出来るのです」


なるほど! 「加圧加熱」がポイントということだそうだ。魚に限らず骨は高温高圧で加熱することで、中のコラーゲンが溶け出しホロホロ食感になるものだ。家庭の圧力鍋と同じ原理ということは、家でも骨を柔らかくできるということだろうか。一度試してみたい。

さて、その話は置いておいて本題である。マルハニチロでは鮭の中骨をメインとした『さけ中骨水煮』という商品がある。

そう、鮭には骨の缶詰が存在するのだ。えーっ! じゃあサバの骨缶があってもいいんじゃないの? 

──なぜ鮭の中骨缶はあるのに、サバの骨缶は商品化されていないのですか? SNSではサバの骨が好きだという声を多く聞きます。


マルハニチロ「カルシウムが豊富な骨とまわりについた身も含めて、余すことなく食べられるように工夫したのが、加圧加熱殺菌をして骨まで柔らかくした『さけ中骨水煮』の缶詰です。鮭の骨は太く、カットする際に骨のまわりに身がついていることから、味も染みわたりやすく美味しくなります」


──骨の周りに身がついていることがキモなんですね!


マルハニチロ「一方、サバの場合は3枚おろしにしても、骨の太さがさけに比べて細く身がほとんど残りません。したがって骨だけになってしまい、身が少ないことから味も染みわたりにくく、缶詰での製品化が難しいといったことが挙げられます」


そ う だ っ た の か !


鮭には中骨缶があるのに、サバにはないのには理由があった。骨は、身があってこそ味が染みやすいというのだ。骨が好きすぎて、No. 1の骨のことばかり考えていたが、あの美味しさには身の存在が不可欠だったのである。

骨だけ缶の商品化は難しいとのことだったが、サバ缶を買えば骨はついてくる。骨をこんなに美味しくしてくれる身にも感謝しつつ、サバ缶をいただこうではないか。

参考リンク:マルハニチロ
Report:沢井メグ
Photo:マルハニチロ
Photo:Rocketnews24.

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