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【おうちでキャンプ】ベランダで手づくりソロキャンプをしてみたら、何気ない日常がエンターテインメントに生まれ変わった話

2020年5月2日

以前の記事で、生まれて初めてのソロキャンプが思いのほか楽しかった経験を書いた。次はどこかユニークなロケーションでやりたい、あるいは不便と対極にある豪華なグランピングをやってみたい、などと考えていたのだが、昨今の新型コロナウィルス感染症である。

キャンプしたい、でもできない……という欲求不満に苦しんでいたある日、よいことを思いついた。外に出られないのなら、中でやればいいじゃない!

……というわけで、これは生まれて初めての「おうちキャンプ」の記録である。


・設営しよう

ベランダ……と言ってもほとんど外に接していないインナーバルコニーなのだが、キャンプっぽく設営しよう。手持ちのガーデンチェアを並べる。

IKEAの実店舗に行くと、日本では見ないようなおしゃれなアウトドア家具がずらりと並んでいて、「これがあったらベランダで日光浴をしながらティータイムができるかも」というような「とんでもない勘違い」をしてしまう。

買ったはいいが、家具だけで床いっぱいになるわ、日当たりは悪いわ、見えるのは道路だわで無用の長物になっていた。そもそも住宅の広さもライフスタイルも北欧とは根本的に違う。早まってハンモック買わなくてよかったマジで……。そんな不遇なガーデンチェアに活躍の機会が訪れるとは人生わからない。

シュラフは以前のキャンプでも登場したモンベル。ファスナーを開けば布団タイプ、閉めれば封筒タイプとして使える優れものだ。ベッドっぽくなっていい感じじゃないか?

両壁にダイソーの突っ張り棒を張り……

洗濯バサミでビニールシートを留めて……

屋根っぽいものを作る。

足の方が出ちゃってるし、ちょっと見た目がアレだが、誰に見られるわけでもないのでいいだろう。

夜になるとまだ肌寒い日もあるので風を防げた方がよく、また屋根があると安心感が全然違う。寝るまではオープンにしておけるぞ。

キャンプ気分を盛り上げるため、テーブルとチェアも出す。普段は車中泊派なのでほとんど使わないのだが、いざという時のため車に積んでいるアイテムだ。足の踏み場がなくなったが、設営完了。まぁ、雰囲気は出たと思う。


・マイルールを定める

ところで、キャンプとは不便を楽しむ遊びだろうと思う。自宅とはいえ、足りないものがあるたびに家に駆け込んでいたら楽しみも半減である。そこで、1つのルールを課すことにした。ずばり「キャンプを開始したら、トイレ以外は終了まで家に入らない」だ。

事前に入念に持ち物チェックし、困ったことがあっても工夫で乗り切ることにする。

実を言うとやろうと思えばトイレもベランダでできるのだが……。

これは車中泊用の折りたたみ簡易トイレ「ポットン」。すごいネーミングだ。

一般的に、ポータブルトイレは腰かけて使うためにある程度の高さがあると思うが、これは車内のような天井高がないところでも使えるよう、平べったくできているアイディアグッズなのだ。

が、仮にも住宅地であるし、シモの話に引く読者もおられるかもしれないので今回はやめておく。


・ではキャンプ開始!

日も傾いてきた午後6時、キャンプ開始。終了予定は翌朝の6時だ。これからは(トイレ以外は)家に入らないぞ。

キャンプといえばバーベキュー! ……をしたいのはやまやまだが、こんなところで煙を出したら近所迷惑確定なので、ジェットボイル料理にする。クッカーを持っていないので、本体だけでできるものになるが……。

パスタを茹でよう。そのままでは入らないのでパキパキと折って入れる。

あぁ、小さいけれどこの炎に癒されるなぁ……。IHが普及して、火を見る機会がずいぶん減った。

シンクがないので水切りはできないが、たらこソースを絡めて出来上がり! 最近の市販のパスタソースは本当に優秀。温めもいらず、混ぜるだけで店のような味が食べられる。

ただのキウイも、外で食べると今さっき木から採ってきたような幻が見えるよ!

……はっ!! 残った茹で汁どうする……?

排水口はある。流れた先も自分ちだ。が、こんなところから捨てたら黒くてGのつく生物に招待状を出しているようなものではないか……?

ペットボトルに収めて明日まで置いておくことにした。痛恨の極み……。同じく水を捨てられない状況になる山の達人たちは、味を加えてスープにしたり、最初からごく少ない水で茹でたりと工夫しているようだ。

気を取り直して、至福のコーヒータイムだ。これ最高。キャンプの時だけは「豆から挽く」なんていう人もいて憧れる。

その後はゲームしたり……


家のWi-Fiをフル活用して動画を映写したり……


仕事してるフリをしたり……


おやつを食べたり……


……ってこれ、普段と同じじゃないかい!!

とは思うものの、屋外だというだけでなんか楽しい。いつもの行動が「特別な行動」になる。外でゲームするだけ、外でコーヒー飲むだけ、なのに初めてのことのような新鮮さ。


・シートを下げて就寝

そろそろ寝ることにしよう。ぶっちゃけ道路を走る車でかなりうるさい。壁を隔ててほんの数センチ隣には本来のベッドがあるわけで、ふと「自分なにやってんだ」と思わなくもない。

けど、不思議な感覚だ。よく知ってる場所なのに、まるで知らない場所にいるような……。あの車、何十分アイドリングしてるんだとか、近所で犬を飼っているらしいとか、いろいろなことに気づく。

外で寝ると感覚がいつもより鋭敏になるような気がする。たぶん身1つで無防備になるからだろう。初ソロキャンプの時にも思ったが、自分がリセットされて、ただ1人のヒトに戻るというか。なにか人間の根源的な感覚を呼び覚ますんだろうな。

……

……

……


早朝、鳥の声で目覚めた! もう1時間もすれば雑踏でかき消されるが、この辺りにも鳥が来るとは知らなかった。昨夜はほぼ無風で、自作タープもどきも持ちこたえてくれた。無事にキャンプ終了〜。

眠りは浅かったと思うのだが、頭がすっきりしている。リフレッシュして、生まれ変わった気分。今回は1晩寝たけど、ちょっと外の空気を吸いながら読書するとか仕事するだけでも気分が全然違うと思う。

ちなみにベランダキャンプは撤収がすごく簡単。泥や土がつかないからすぐに片付けられる。秒で家に帰れるのもいいな!


・ただし注意点も

企画段階では画期的なことを思いついたと興奮したが、すでに実践している人はたくさんいて、ベランダ+グランピング=ベランピングなんていう言葉もあるらしい。

言うまでもないが火災や一酸化炭素中毒などの事故には十分に注意して。周囲を覆った場所での暖房や調理は厳禁だ。あと、風が強い日はビニールシートがあおられないように。

加えてマンションなどの集合住宅ではだいぶ事情が違うと思う。火気厳禁はもちろん、個人的には複数人の話し声もアウトだと考える。記事中のゲームも動画もイヤホン使用だ。キャンプや登山などのアウトドア活動は誰もいない自然の中で自由を満喫する遊びなのかと思いきや、むしろ多くのルールとマナーで成り立っていると聞く。近隣への配慮をどうか忘れずに。

家のベランダでキャンプ……ちょっと奇妙で、すごく面白い体験だった。家でやっても面白いんだから、自然の中でやったらどれだけ面白いか。筆者の夢は、いつかケニアのルカの村でキャンプを張ることだ。1日も早く新型コロナウィルス感染症が収束し、普通にキャンプに行ける日が来ることを願っている。


Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]

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