
バンド系アニメはガチのバンドマンからすると結構子供騙しだ。天才イケメン美女だらけだし、とんとん拍子にステップアップするし……ライブハウスで15年くらい活動しているバンドマンの私(中澤)からすると「違う。それはスタジアムの世界だ」という感じのことが多い。
一方、2020年春アニメで放送されている『LISTENERS』は、ロボットアニメにもかかわらず下手な音楽アニメより私の胸に突き刺さってきた。これ、ロボに興味がなくとも、バンドマンは結構楽しめるんじゃないだろうか。そう感じた理由を以下に説明したい。
・ストーリー
舞台は、「ミミナシ」と呼ばれる謎の生命体により人類が生活を脅かされているSF世界。ミミナシに対抗することができるのは戦闘メカ「イクイップメント」。それを操ることができる能力者は「祈手(プレイヤー)」と呼ばれている。
スクラップ拾いの少年・エコヲは、ある日がれきの山に捨てられた少女・ミュウと出会う。記憶喪失で自分の出自や目的などを全て忘れているミュウ。しかし、腰のインプットジャックからプレイヤーであることが分かる。そんなミュウとの出会いからエコヲの運命は動き出した……の・だ・が! その前にちょっと良いですか?
エコヲの実家のバーの名前『OASIS』!
伝説のプレイヤージミ・ストーンフリー!!
エコヲがミュウにプレイヤーの説明する時のイメージ映像がマーク・ボラン!!!
エコヲの住んでる街・リバチェスタ!!!!
ってか、1話のタイトル「リヴ・フォーエヴァー」!!!!!
笑ったよね。バンドマンにはもう説明の必要すらないと思うが、OASISはUKロックの伝説的バンドで、「リヴ・フォーエヴァー」はオアシスの出世曲。ジミ・ストーンフリーは、ジミ・ヘンドリックスに『ストーン・フリー』って曲があるし、リバチェスタはUKロックの聖地リバプールとマンチェスターだろう。
・アンプがロボ化
多分、細かく見るともっと小ネタが散りばめられていると思う。そして、何より笑ったのは、ロボに変形するのがギターアンプなのだ。
確かに、ギタリストにとってギターアンプは憧れだが、アンプはあくまでスピーカーである。ギターなどがないと音が出ないものだ。そこをあえてのアンプ。
ちなみに、ギターはじめ楽器類は今のところ出てきていない。操縦するためにギターを使うとかならわからんでもないが、ギターなしアンプオンリーなのである。かつて、ここまでアンプがど真ん中を占めるアニメがあっただろうか? 少なくとも私の記憶にはない。
しかも、主人公たちのロボはVOXアンプ。マーシャルじゃなくVOXが主人公なところにガチさを感じる。UKと言えばこのアンプだ。
・胸に刺さった理由
もちろん、音楽アニメでもこれくらいのオマージュはあるかもしれない。しかし、音楽アニメと違って、私の胸に『LISTENERS』が突き刺さってきたのは、やはりロボアニメだということが重要なのだと思う。
断っておくが、私は特に巨大ロボにロマンを覚えるタイプではない。だが、38歳にしてたまにロボアニメを見てしまうのは、ロボットアニメの「世界と戦う姿勢」のようなものが好きだからだ。
多くのロボットアニメでは、誰もが諦めているような世界のルールや常識めいたものに主人公が立ち向かっていく。『LISTENERS』でもそういう部分は随所に感じられる。
例えば、エコヲがミュウに街を出ようと誘われた時。最初、エコヲは「自分は一般人だから無理」という感じで誘いを断る。あまりにも簡単に断ってしまうエコヲの態度にはリバチェスタの一般人に流れる常識が垣間見えるようだ。
少年であるエコヲがゴミ拾いで生計を立てていることでも分かる通り、リバチェスタは決して裕福な街ではない。だが、暮らす人々は貧乏ながらも安定した生活を送っており、その生活が常識として子供にまで浸透しているのである。
1話のハイライトはそんなエコヲが街を出ることを決心するシーン。まずは一歩、諦めに似た常識という壁を打ち破る。もちろん、そこにはイクイップメントも深く絡んでいるがキッカケでしかない。大事なのは、この瞬間エコヲが一歩踏み出したということで、その戦いの意志にロボアニメの良さが集約されているのだ。
そして、この気持ちはバンドマン全てが持っているものなのではないだろうか。楽器なんて、弾けるまでに大変な努力を要するものを手に取り、色んな壁を乗り越えてステージに立つのは、つまるところ世界を、自分を変える一歩を踏み出したいからではないか?
少なくとも私はそうだ。自分を変えるために楽器を手に取り、売れてなかろうが38歳だろうがステージに立つ。全ては自分の世界を変えるために。楽器とアンプは世界に立ち向かう武器であり兵器。そのため、ただライブシーンや人間関係を描く音楽アニメより『LISTENERS』の方がイメージにハマるのかもしれない。
・エウレカセブンが好きな人にも
以上が、『LISTENERS』が下手な音楽アニメより私の胸に突き刺さった理由だ。そんな本作は、『交響詩篇エウレカセブン』の佐藤大さんが脚本家を務めている。そのためか、キラキラしたボーイ・ミーツ・ガール感はエウレカセブンを彷彿とさせる。
エコヲのあか抜けなさにレントンを感じるが、レントンもクライマックスはかっこ良くたくましく見えるようになった。はたして『LISTENERS』は壁を打ち破れるだろうか? 期待して見ていきたい。
参照元:LISTENERS
執筆:中澤星児
©1st PLACE・スロウカーブ・Story Riders/LISTENERS製作委員会
▼『LISTENERS リスナーズ』本PV
中澤星児



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