映画『ゴッドファーザー』のロケ地としても知られるシチリアは、マフィアの発祥地と言われている。「シチリアンマフィア」という言葉もよく知られているから、“怖いところ” 的なイメージを抱いている人だっているかもしれない。

かくいう私も当初はそう思っていたので、同地のバスにチケット無しで乗ってしまったときは焦った。バスが信号で停まるたびに、料金所で蜂の巣にされたソニー・コルレオーネの姿が頭をよぎり──。

というのは大げさだが、通常料金の何倍も払うことになるのではないかと思ってヒヤヒヤしていた。だがしかし、私が予想していたような展開にはならず……。何があったのかを以下で簡単に説明したい。

そうは言っても、説明というほどのこともない。ひと言で言おう。シチリアでバスに乗ったら、ドライバーに「チケットなくても別にええで」みたいなことを言われ、目的地についてからお金を渡そうとしても、彼は「金はいらんから持っとけ」みたいな感じで受け取らなかった。結果、私は無賃乗車してしまった……というだけの話だ。


もう少し補足すると、基本的にイタリアでバスに乗る時は事前にタバコ屋とかバーとかでチケットを買うことが多いのだが、地方(バス?)によって多少ルールが変わり、車内で買えることもある。


そしてまさにシチリアでは「車内でも切符を買えることが多い」……的なことが誰かのブログに書かれていたことを、私はバスに向かって走りながら思い出したのだ。

そう、そのとき私は時間的にギリギリだった。バスは出発しようとしており、どこかでチケットを買っていたら間に合わない。そこで、「たぶん車内でも買える」と賭けてバスに飛び乗ったら……。


先に述べた展開になった次第。ちなみに、賭けに負けたのは私だけではない。同じバスに乗っていた中国人のご夫婦も私と同じミスを犯したようで、運転手にお金を渡そうと頑張っていた。だが、運転手の反応は「いいよいいよ! 全然OK」って感じ。


運転手の親切心に感謝しながら、私と中国人のご夫婦はバスを降りた。「助かった」「申し訳ない」「チケット買っとけばよかった」「払わなくてOKとか、日本でありえる?」……など様々な感情がわき上がってくる。

──と同時に、私の中で以前から気になっていた “ある疑念” が、より一層鎌首をもたげてきたのだ。それは……


・「日本人は親切」は本当なのか?

テレビの番組で「外国人は日本のことをどう思っているのか?」みたいな企画があると、必ずと言っていいほど言われる「日本人は親切」という言葉。果たしてこれは本当なのだろうか?

嘘だ……と言ったら言いすぎだろうが、海外で人から助けられると、どうしても疑問を抱いてしまう。もう少し具体的に言えば、「人によって親切心を発揮する瞬間が違うだけで、日本人だけ親切心の総量が特別多いわけじゃないだろ」って気がするのだ。

たしかに、日本では「落ちている財布を見つけたら届ける」とか「人に迷惑をかけないように努める」という点で優れている人が多いのかもしれない。ただ、思いやりが発揮されるシーンは他にもいっぱいある。むしろ、財布をネコババしないなどは “マナー” や ”規範意識” に分類されることであって、“親切心” とはまた別な気がしなくもない。


まぁ結局のところ、「“日本人は親切” って本当なのか?」は結論が出ない疑問である。人によって答えは違うだろう。ただ少なくとも、盲目的に「日本人だけが特に親切」と思い込んでしまうのは危険……と言うか、もったいないように思えて仕方がない。今まで何度も言われてきたことではあるが、ほんと「人による」のだから。

執筆:和才雄一郎
Photo:RocketNews24.

▼ちなみに、乗ったのは「モンレアーレ」発、「パレルモ市街地」行きのバス

▼映画『ゴッドファーザー』にも登場する劇場

▼まったく関係ないけど、シチリアの飯は最高。イタリアの北部とかと比べたら、値段もリーズナブル