台湾といえばタピオカやルーロー飯が有名だが、擬人化にかけてアジアの最先端をいっていることも忘れてはならないだろう。これまでに軍艦、都市と多くの “モノ” を擬人化、最近でも感染症の啓蒙のために病気を美少女化させた「疾病擬人化」シリーズが話題となった。
さてそんな台湾で、ついに「台湾」そのものが擬人化されたという。それもめっちゃリアルなヤツ! 実在する台湾人1万人の顏データを合成して誕生した擬人化女性の名は『戴怡宛(ダイ・イーワン)』だ。
・台湾で台湾そのものが擬人化
台湾を擬人化させた人物・戴怡宛。台湾人1万人の顏データを合成した彼女だが、何も若い女性ばかりを合成したわけではない。使われた顏データ幼児からお年寄りまで老若男女問わず。さらに現総統の蔡英文氏、そして1月の総統選における対立候補の韓国瑜(かん・こくゆ)氏ら多数の政治家が含まれる点も興味深い。
そんな戴怡宛の風貌はというと……めちゃくちゃ美人じゃないですか! 清楚で優しげな雰囲気はどこからどう見ても好感度100%! これが「平均顔」ってどれだけレベルが高いんだ!? 台湾でも「松島菜々子に似ている」「松島菜々子の妹は台湾にいたのか!!」などとその美貌も話題になっているのだ。
・国際NGOへの就職を目指す
ビジネス系SNS『LinkedIn』に掲載されている戴怡宛の公式プロフィールを見ると、2006年に国立台湾大学政治学科を卒業、2009年には公共経営の修士号も取得しているとのこと。
職歴は国会議員の立法補佐官などを経験し、エイズスクリーニング検査の普及、ジェンダー平等への働きかけ、企業むけには社員の健康増進のための健康診断および休日助成金のサポートなど様々な社会福祉に貢献してきたという。
そして今後は国際的な非営利団体(NGO)での就職を目指しているそう。なんでNGO? そもそも何のために擬人化させたのだろうか? そこで戴怡宛の “親” であるクリエイターに突撃インタビューしてみた!
・クリエイターに聞いてみた!
戴怡宛を生み出したのは若手クリエイターチーム『双城街』の劉昱伶(りゅう・いくれい)さん、沈昇勳(しん・しょうくん)さん、黄威愷(こう・いがい)さん、陳育律(ちん・いくりつ)さんの4人だ。そのうち技術責任者の沈さんにお話を聞くことができた。
──まず、戴怡宛の名前について聞かせてください。台湾では「名前の由来が最高だ!」との声が出ています。台湾の代表的方言である『台湾語』が由来と見ましたが……
「そうなんです。台湾語では台湾のことを「歹丸」と表記することがありますが、この発音がdaiyi wan(ダイイー ワン)、つまり戴怡宛ダイ・イーワンの音に近いのです」
──なるほど! 名前からも台湾を体現しているということなんですね!
「そう言えますね!」
・今後、何をしていくの?
さて戴怡宛の風貌が台湾の平均顔であること、そして名前の秘密もわかったが、彼女は今後、具体的に何をしていくのだろうか。
「これは複雑な話になりますね(笑) プロジェクトのきっかけからお話するのがいいかと思います」
──お願いします。
「世界における台湾の立場を考えると、多くの国は台湾と “友人” になることができない状態です。たとえるなら、まるでクラスのなかにいじめっ子がいて、他のクラスメイトたちに私達のことを無視させようとしているような感じでしょうか」
「そこで私達は台湾を擬人化させようと考えました。(政治的な問題を抜きにして)個人としてなら(台湾を)客観的見てもらえるのではないかと」
──擬人化することで政治的なフィルタを外したんですね。
「さらに台湾をただ擬人化するだけでなく、台湾で行われているSDGs(持続可能な開発目標)を彼女の経歴に組み込みました。
私達は皆さんに戴怡宛自身の人格や経歴を見て、友人としてつきあいたい人物なのか、信頼に足る人物かどうかを判断してもらいたいと思っています」
──つまり彼女を知るということは、台湾がどういう社会なのかを知ることができるということだと。
「その通りです」
・NGOに就職したい理由
「そして次の一歩として、SNSのLinkedInで友人を増やし、NGOの就職試験に臨むことを目指しています。もしそこで面接まで進むことができれば、戴怡宛が経歴が確かなものだという証明となるかもしれません」
──NGOへの就職を目指すというのはそういうことだったんですか! NGOに戴怡宛の経歴が認められる=台湾が世界に貢献できる存在である客観的な指標になる、と。
「はい。すでにLinkedInとFacebookにはたくさんのメッセージをいただいています!」
・世界が関心
やはり擬人化という斬新なアイディアも含め、世界から関心を集めているようだ。さて、擬人化といえば日本の得意分野でもあるが、もし日本が擬人化したとしたら戴怡宛はどう反応するだろうか?
──もし日本が擬人化したら、戴怡宛は日本とどんな話をするでしょうか?
「いまの台湾と日本の友好的なムードを見ると、きっと2人の間には話すことがたくさんあると思います! ただ私達はまだそこまでは考えていなかったです。でも戴怡宛の存在を日本にも広めていきたいので、今後チームで検討していきたいと思います!」
戴怡宛の誕生には深い理由があった。日本では今でこそ台湾を知る手段が各段に増え、タピオカブームなどを経てかなり身近な存在となったが、世界的にはまだまだ「透明な存在」とされている面もある。
そんななか彼女がどんな情報を発信していくのかとても興味深い。戴怡宛と友達になることから始めるのも、現代台湾を知る1つの方法だと言えるだろう。
参照元:戴怡宛 公式サイト、LinkedIn、Facebook
Report:沢井メグ
Photo:Dai Yi Wan | 戴怡宛,used with permission.