朝起きたら世界がゾンビだらけになっていた。外にはゾンビが闊歩し、生き残っているのは自分の友達数人だけ。さて、あなたならどうする?
授業中などにはかどるこんな妄想。少なくとも私(中澤)は何度も考えたことがある。目立たない私がクラスを守って大活躍! そうするために事件が発生した時どう動くか想定したりして。
でも、実際はとてもゾンビなんて殺せないに違いない。たとえ殺さないと自分が死ぬ状況でも。あるゾンビ映画を見てそんなことを思った。
・『ゾンビランド:ダブルタップ』
その映画とは2019年11月22日に全国ロードショーの『ゾンビランド:ダブルタップ』である。若干コメディータッチに、主人公たちが躊躇なくゾンビを殺しまくる映画だ。
世界興収1億ドルを超える大ヒットとなった『ゾンビランド』の続編で、ひと足早く公開された全米では、初週2673万ドルを叩き出しているとか。話題の映画である。
・ゾンビを殺さない人々
情け容赦ない主人公たちのふるまいもゾンビ映画なら当然のこと。普通はゾンビ映画を見る時、常に主人公側の視点で見ていた私。しかし、試写会で本作を見た時、ふと「自分はゾンビを殺せないだろう」と思った。
実は、この映画には、主人公たち以外にゾンビを殺さずに生き残っている人々が登場する。非暴力主義でピースフル。そんな人々が寄り集まって壁を作り、「バビロン」という村のようなコミュニティーを作っている。
主人公たちと対比的に描かれるバビロンの人々。それは現実逃避しているようにさえ映る。だが、私は、「普通ならこっちを選んじゃうんじゃないだろうか」と感じた。
・絶望の世界で殺してまで生きたいか?
作中では否定的に描かれているが、実際『ゾンビランド:ダブルタップ』の世界のようになったら、「殺してまで生き残りたいか?」というのは結構微妙な気がする。なぜなら、自分たち以外の人間にはほぼ会えない世界だからだ。
頑張っても世界が改善する見込みがないこともヒシヒシと伝わってくる。実際、前作から10年もゾンビだらけの状態が続いているわけだし。むしろ、「みんなが死ぬタイミングで死にたい」と思うかもしれない。
・ゾンビ映画で初めてこんなこと考えた
少なくとも私は、目の前の人が突然ゾンビになったとして「よし殺そう」という判断を即座にできる気がしない。昼ご飯のメニューを選ぶ的な簡単な決断も悩むくらいだから。
そう考えると、躊躇なく元人間のゾンビを殺せるのは『シティ・オブ・ゴッド』に出てくるようなマフィアか、シリアルキラーだけなのではないか? ゾンビ映画の主人公は相当ヤバイ奴な気がしてきた。
──と、ゾンビ映画を見ていてそんなことを考えてしまったのはもちろん本作が初めて。それだけ、作品を見ていてリアルな選択肢を想像してしまうのはバビロンが登場するからだ。そんなバビロンがどういった顛末を辿るのかは、映画館でご確認いただけたらと思う。
関連リンク:『ゾンビランド:ダブルタップ』
執筆:中澤星児