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「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展+EVANGELION ARTWORK SELECTION」へ行ってきたので、その魅力を刀剣好きの視点からお伝えしたい / 新宿高島屋

2019年9月3日

1995年から放送されていたTVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を皮切りに、国内外を問わず幅広い世代から愛され続けている「エヴァンゲリオン」シリーズ。そんな「エヴァンゲリオン」シリーズの新劇場版と日本の伝統文化である「日本刀」がコラボした「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」が、特別展示「EVANGELION ARTWORK SELECTION」とともに、パワーアップして東京に帰ってきた。

行ってきた筆者が目にしたのは、「日本刀」の固定観念をブッ壊すような刀たちと、貴重なセル画・原画・設定資料の数々。さっそく語りたいところだが、残念ながら大人の事情により記事内では原画の魅力を語ることが出来ない……ので、今回はあえて刀剣好きの視点から、見どころを徹底的にお伝えしたい!

・エヴァ好きも刀剣好きも楽しめるイベント

「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展+EVANGELION ARTWORK SELECTION」は、新宿高島屋にて2019年8月30日〜9月9日に開催されている。入場チケットは1000円で、大学・高校生は800円(どちらも当日券)。中学生以下は無料だ。

なお、「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」は2012年からはじまり、全国で巡回展示をしている人気企画である。東京に戻ってくるのは6年ぶりで、前回の東京での展示からその内容がパワーアップしているとのこと。しかも同時に原画などの特別展示もあるらしい。


・会場に行ってきた

会場内に入るとさっそく出迎えてくれる初号機に、テンションが上がる。

「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」が6年前の東京での展示からパワーアップした点の1つ目は、完成した「刀野薙(なたやなぎ)」の展示だ。「刀野薙」を前にすると、まずその大きさに圧倒されてしまうだろう。

台座が刀身や柄(つか:刀の持ち手部分の外装)と同じく展示の主役となっているのが面白い。本来ならば柄に施す「柄巻き」が台座の足に施されているのもポイントだ。

「刀野薙」は、「エヴァンゲリオン」シリーズのメカニックデザインを担当している山下いくと氏が「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」のために描き下ろした初号機が持つ武器を、格別の腕前を持つ証「無監査」という資格を持つ刀匠・宮入小左衛門行平氏が作刀したという、日本の伝統工芸と新しい文化がシンクロして誕生した逸品だ。

山下氏が「日本刀」を構成する要素をバラバラにし、あえて「日本刀」のルールに則らず再構成してデザインしたという「刀野薙」。革新的なデザインの柄や台座はもちろん、刀身のみに注目しても、従来の「日本刀」と一線を画す存在であることが分かる。

その刀身は「日本刀」としては異例の姿でありながら、刃文や肌(地鉄の模様)の美しさは古くから伝わる「日本刀」作刀の技術によるもの。ゆったりと波打つのたれ刃に、ふわふわと輝く匂(におい:刃文のキラキラした細かい粒子)。地鉄部分にはっきりとあらわれる板目のような肌には、「日本刀」としての美しさが顕著にあらわれている。

ちなみに、柄と台座は木材に漆を塗り、描かれた文字や模様などは金箔で表現されて製作されているという。斬新なデザインだが、そこには日本の伝統工芸の技術が結集し、形作られているのだ。

そして、6年前に開催された東京での展示からパワーアップした点の2つ目は、新劇場版に登場するEVAやそのパイロットたちのプラグスーツをモチーフにして作られた刀子(とうす:便利道具として使われる小刀)が5点揃ったことだ。

刀子の刀身部分は5本とも同じデザインで、EVAのエントリープラグを模している。

拵(こしらえ:刀の外装)のデザインはそれぞれ異なっており、そのカラーリングはもちろん、装飾にも各EVA・プラグスーツの要素が盛り込まれており、例えば初号機仕様の拵には暴走時の姿を思い起こさせるような歯をかたどった飾りが付いている。

2号機・8号機仕様の拵には、EVAの目玉と同じ色・数の石がはめ込まれている。EVAの胴体拘束具をイメージしたという金具が描く曲線が美しく、どこか女性らしさを思わせる。

零号機仕様には可憐な花の飾りがつけられており、花の中にEVAの目玉の赤・頭頂部の緑に対応した色石がはめられている。

刀子のモチーフになっている他のEVAとは違い、ゼーレ主導で建造されたEVA・Mark.06仕様の拵は、ゼーレのシンボルマークにも登場する「楽園の蛇」をイメージした飾りの他、Mark.06が作られた月面をイメージした金具が鐺(こじり:鞘の末端)につけられているのがその異質さを演出している。

もちろんこれらの他の、6年前にも展示されていた作品だって見どころ満載だ。特に、人間サイズにアレンジされたとはいえ、3mをゆうに超える「ロンギヌスの槍」の迫力には、何度見たって圧倒されるだろう。ちなみに、形の特殊さなどから、刀匠が製作しているものの「日本刀」としては認可されないため、刃をつけず、先端を丸くしてオブジェとして作られている。

「ロンギヌスの槍」には日本刀に本来使用される「玉鋼」だけでなく、ニッケルやコバルトなどの合金が複数重なっている「ダマスカス鋼」を使用している。そのおかげで、従来の日本刀よりもくっきりとした、ゾッとするほど妖しい魅力を放つ綾杉の木目のような肌があらわれている。ねじれの部分も見事だ。

他には、山下いくと氏がメカニックデザインのみならず執筆なども担当した「エヴァンゲリオンANIMA」などに登場する武器「マゴロク・エクスターミネート・ソード」を人間が扱えるようアレンジして再現した「マゴロクソード」も。拵は鞘師の森隆浩氏にデザインされており、従来の日本刀の拵からあえて大きく逸脱せず、初号機の武器らしさが表現されている。

刀身は、最近「るろうに剣心」の逆刃刀を再現したことで世間を賑わせた現代の刀匠・尾川兼國氏によって作刀されている。作中で「マゴロク・E・ソード」のベースとなった刀の生みの親、室町後期から活躍した刀工「関孫六」と同じ関の刀匠・尾川氏により、「関孫六」の特徴的な三本杉の刃文などが再現されているのも見どころだ。

そんな「マゴロク・E・ソード」の対になる補助武器「カウンターソード」も再現されている。刀身は「エヴァンゲリオン」に熱い想いを抱く刀匠・川崎晶平氏によって、拵は鞘師ではなく造形家の上田隆弘氏によって製作された。銃でありながら刀でもある「カウンターソード」の拵が、作中のデザインに忠実な造形と、漆による重厚なカラーリングで再現されている。

刀身は「冠落とし」という技法で刀身の背側を薄くし、強度を保ちながらも実際に扱う際に取り回しやすいようにされているようだ。意図的に大きく、鋭く作られたという切っ先がカッコいい! 60cm未満という「脇差」に近い刃長ながら、大きく斬新なデザインの拵に負けない存在感がある理由の一つだろう。

ちなみに、「新世紀エヴァンゲリオン」、旧劇場版の主題歌「残酷な天使のテーゼ」「魂のルフラン」を歌われている高橋洋子氏が本展の内覧会にゲストで登場した際、この「カウンターソード」を手にしていた。「ハイパーアジアンミックス」がテーマだという衣装と「カウンターソード」がとてもマッチしている。

高橋氏は笑みを絶やさず「カウンターソード」を構え、取材陣の要求に応えて様々なポーズをとっていたものの、「カウンターソード」の美しさに惚れ惚れするとともに、「(手にするのが)怖い」と畏怖の念を零していたのも印象的だった。

ちなみに、「マゴロクソード」「カウンターソード」の他にも「エヴァンゲリオン ANIMA」に登場する武器が再現されていた。刀身だけで144.2cmという「ビゼンオサフネ」は作中デザインの再現度も高く、その迫力で来場者を惹きつけて離さない。

長大な刀身に大きく乱れる刃文の豪壮さは凄まじい。刀身上を大暴れしているような見事な刃文に艶やかな肌は、古くからの「日本刀」の魅力があらわれている。近未来の武器らしい革新的なデザインの拵とのギャップが素晴らしく、ぜひ実物を味わっていただきたい一振りだ。

作中に登場する武器の再現だけでなく、作中の登場人物や事象をイメージして作られた日本刀も魅力的だった。作中に登場するミステリアスなキャラクター・綾波レイをイメージした拵と、レイを様々な攻撃や危うさから「守る」ことを意識して作刀された太刀も見応え抜群。しっかりとした刀身には静かに刃文が広がり、大きな切っ先にはレイの強さが表現されている。

対して渚カヲル仕様の刀は、カヲルが静かで穏やかな世界を望んで「振るう」刀、というイメージで作られている。拵で海を、江戸時代の刀に多く見られた「風景を描く」ように山や雲をイメージして入れられた刃文で、天と地を表現している作品だ。砂浜を表現するために原材料の鮫皮が切り替えられている柄には、非常に難易度の高い技術が用いられている

自由奔放に見えるキャラクター、真希波・マリ・イラストリアスのプラグスーツ姿からイメージを得て作られた短刀もある。細身の刀身と曲線的なくびれた刃文で、マリの女性的なプロポーションを表現しているのが面白い。拵はマリの「異質さ」を表すかのような、通常の「日本刀」の拵と大きくかけ離れた未来的なデザイン。

ちなみに、シンジ仕様・アスカ仕様の刀はないものの、初号機仕様の脇差、2号機仕様の短刀は展示されている。

中でも2号機仕様の短刀は、女性らしい柔らかな刃文が輝く刀身に透し彫りされた、アスカの立体的な像のインパクトが凄まじい。残念ながら展示では見ることが出来ないが、アスカの後ろ姿もしっかり彫り込まれているので、気になる方はぜひ図録で確認して欲しい。また、アスカの少し下、斜めになっている鎺(はばき:刀身の手元部分にはめる金具)にも注目だ。

2号機仕様短刀の拵は、柄と鞘がぴたりとくっつく部分を斜めにしている。この斜めにされた鯉口(鞘と鐔が接する部分)のために、異例の斜め鎺が作られたのだ。刀が鞘から抜け落ちないようにする鎺はただでさえ調整が難しいようだが、通常と異なる斜めになった鎺は製作が難しく、製作された白銀師・野口氏は何度も刀の元へ通って微調整されたそう。斬新なデザインの拵ならではのエピソードだ。

「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」には他にもまだまだ、語りつくせないほどの見どころがたくさんある。エヴァ好きはもちろん刀剣好きも大満足できる、日本文化の魅力と未来が詰まった展示だった。


・原画や資料も見逃せない

原画や設定資料などが約200点も展示されている「EVANGELION ARTWORK SELECTION」も見逃せない。「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」だけでも大満足なのに、同じ会場内で貴重な原画などを堪能できるお得ぶり。しかも、TVシリーズや旧劇場版のセル画まで見ることが出来る!

残念ながら、大人の事情により記事内で原画を1点ずつ紹介することは出来ない。しかし、TVシリーズや旧劇場版のセル画のほか、今までに公開された新劇場版3作の原画や設定資料が展示されていたことは声を大にしてお伝えしたい。

それぞれの作品の、登場人物たちの魅力が溢れるシーン、印象的なシーン、世界観があらわれているシーンのセル画や原画が、惜しみなく展示されていた。

設定画やイラストボード、さらには設定案なども展示されており、そこに描かれているイラストだけでなく、指示などのために書かれている文字や、線の消し跡なども含め、すみずみにまで見入ってしまった。

そして出口の手前、一番奥には2020年6月公開予定の「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」の映像や設定資料が展示されており、じっくりと眺めることが出来る。なお、本展示会は「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||」コーナー以外は全て撮影OKという太っ腹ぶり。お気に入りの日本刀や原画などを生で見て、写真に撮って家でもまた楽しめるのはとても嬉しい。


・コラボメニューやグッズも

本展示会に合わせて、新宿高島屋ではエヴァと飲食店などのコラボメニューやコラボグッズが販売されている。筆者も展示会を楽しんだ後、地下1階にある「ジェラテリア・パンチェーラ」で初号機イメージのジェラート(730円)をいただいた。紫芋味・抹茶味・マンゴー味のジェラートが乗っていて、色合いがめっちゃ初号機! しかもそれぞれがとても美味しい。

ジェラートは初号機の他、零号機・2号機イメージのものもある。ちなみに、初日の8月30日時点では、一番人気は初号機だったよう。

他にも、同じく地下一階にある「旬月神楽」の使徒をモチーフにした上生菓子(432円)も気になっていたのだが……

なんと、初日は開店して1時間も経たないうちに完売! 皆、使徒好きすぎる。

他にも、登場人物やEVAをイメージしたドリンクを販売しているところなどがあるため、気になる方は公式ページで確認して欲しい。


・開催期間は短いが要チェック!

何度もお伝えしているように、この展示はエヴァンゲリオンがお好きな方はもちろん、日本刀がお好きな方も絶対に楽しめる展示だった。

しかし、先にも述べたとおり本展示は2019年8月30日から9月9日までと、開催期間がすこぶる短い。気になる方はぜひ、お早めに足を運んでほしい。

・今回紹介したイベントの詳細情報

イベント名 ヱヴァンゲリヲンと日本刀展+EVANGELION ARTWORK SELECTION
開催場所 新宿高島屋(東京都渋谷区千駄ヶ谷5丁目24番2号)
開催期間 2019年8月30日〜9月9日
営業時間 10:00〜20:00(入場は19:30まで。6・7日は20時まで入場可、20時半閉場。最終日は16時半まで入場可、17時閉場。)
入場料 一般1000円、大学・高校生800円(当日券)、中学生以下無料

Report:伊達彩香
Photo:RocketNews24.
©カラー

▼刀匠さんたち2人がかりで引き抜かれる「カウンターソード」。

▼「カウンターソード」も高橋氏も神々しい。

▼「日本刀」の伝統を踏まえながら、刀身も拵も零号機にまつわる要素尽くしな脇差。刀身への彫り物の定番・倶利伽羅龍が巻きついているのは「ロンギヌスの槍」。

▼覚醒した初号機をイメージした面頰と兜。日本刀以外の伝統工芸とEVAのシンクロ率も高い。

▼隕石に含まれる鉄が用いられた脇差。「ロンギヌスの槍」の穂先が隕鉄で出来ていたという伝承から作られた。隕鉄が使われた刀特有の肌模様が楽しめる。

▼作中の災害「セカンドインパクト」をイメージした短刀。刀身全体に揺らめく炎のような「皆焼」刃でセカンドインパクトが表現されている。

▼近接戦闘特化型弐号機F型装備が両手に持つ巨大な曲刀と、実在の「筑紫薙刀」をモデルにした曲刀。刀身の端から端まで刃という異形だが、実用可能な強度を誇るという。

▼2号機が両肩に装備する「プログレッシブナイフ」を人間スケールで再現。号(刀のあだ名)は「梅花」とされている。

▼山下いくと氏の設定画に描かれたのみという、幻の2号機用「プログレッシブナイフ」。丸みがありふっくらとしたこの剣の号は「櫻花(おうか)」とされている。

▼初号機が用いたプログレッシブナイフの再現作。ちなみに、本展ではこのプログレッシブナイフを初号機が使用しているシーンの原画が展示されているので、ぜひ見比べてもらいたい。

▼初号機用プログレッシブナイフには、展示されている「ロンギヌスの槍」と同じ「ダマスカス鋼」が用いられている。そのため、肌模様がくっきりと浮かび上がっている。

▼初号機のプログレッシブナイフからインスピレーションを受けた鉾。こうした鉾は古代の物が5振りだけ現存するが、特徴的な突起部分の使い方も用途も一切不明。

▼新宿高島屋の1階エントランスに展示されている、初号機の前ねぶた。エヴァファンの第5代ねぶた名人・千葉作龍氏によって作られ、2019年のねぶた祭りで活躍していた実物。

▼会場外にはレイ・アスカ・カヲルのフィギュアが。しかし本展のポスターと同じく、主人公であるシンジはいない……

▼新宿高島屋内のあちこちに「ヱヴァンゲリヲン」が。

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日本、〒151-0051 東京都渋谷区千駄ケ谷5丁目24−2
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