何事も “初めて” は緊張するものだ。初めての学校、初めてのアルバイト、初めての就職……。先日の話である。私(あひるねこ)は とある飲食店で、かつてない緊張に襲われることになった。その飲食店とは、かの有名な「ラーメン二郎」だ。
名前はもちろん知っているが、実は私は二郎に行ったことが一度もない。そこで今回、生まれて初めて足を踏み入れてみたのだが……。まさかラーメン屋であんな感じになるとは。さすが二郎である。
・ひと月前の出来事
ところで皆さんは覚えているだろうか? 以前、当編集部のサンジュンが執筆した「【逆転の発想】胃もたれで体調が最悪すぎた → あえて「ラーメン二郎」を流し込んだ結果…」という記事のことを。
記事内でサンジュンは、最悪なコンディションながらも見事二郎を完食することに成功している。前日にうどんで胃もたれしていた男がだ。その結末はなかなかに衝撃的だったと言えるだろう。で、これは書かれていない話なのだが、実はあの時……。
私も隣にいたんですよ。
そう、一方は体調を崩しながらも二郎を食らう男。そしてもう一方は、33にして初めて二郎を体験する男。あの記事の裏では、実はこんなドラマティックな競演が繰り広げられていたのである。
・初めての二郎
さて、本題に戻ろう。私が二郎に行こうとしなかったのは いくつか理由があるのだが、その一つとして挙げられるのが、“なんか怖そう” というものだった。ほら、二郎には独自のルールがあるってよく言うじゃないですか。あれが何というか……超こえー。
ですが今回はサンジュンもいるということで、一念発起してやって来た次第であります。よし、行くぜ!
・第1章:戸惑い
中途半端な時間にもかかわらず、店内には二郎を求める多くの待ち客たちの姿が。うわ、やっぱすごい人気だな……。よく分からないのでとりあえず「ラーメン」の食券を買った私は、直立不動で自分の順番を待っていた。その間、店員に促された客が注文を呪文のように唱えるという光景に、いきなりながら怯える。
マジかよ。話には聞いていたけど、ホントに言ってるよ。あの詠唱をこの後、俺もやるっていうのか……? ヤバイって! タイミングむずいって! なんか全体的に立ち振る舞いがむずいって……!!
何よりヤバイのが、他の客たちの “通い慣れてる感” である。明らかに全員、二郎での作法を熟知しているのだ。動きに無駄がなさすぎる。歴戦の傭兵部隊かよ。
なんてこった、やはり私のようなケツの青い新兵が来ていい場所じゃなかったんだ……。ああもう食わずに帰りてーーー! そんな後悔をよそに、いよいよ私の順番が回ってきた。
しかもポン、ポンと2席空いたぞ。
・第2章:恐怖
「次のお客さん、ここどうぞー!」と言われ、私とサンジュンはそれぞれ別の席に着く。本来なら記事の作成上、サンジュンと横並びで座りたいところだ。しかしここで、そんな選択肢は存在しないように思われた。なんというか、二郎には席移動などという概念自体がない気がしたのだ。
その後、いよいよトッピングの注文を聞いて回る店員さん。が……! 誠に申し訳ないことに、このあたりの記憶はあまりない。たしか「ヤサイマシ・ニンニク」とお願いしたはずだが、どういうわけかよく思い出せないのである。
怖い先生が授業中、問題を解く生徒を前から順番に当てていっているかのような状況に、私の脳内は完全にホワイトアウトしていた。ただラーメンを注文するだけなのに何という緊張感。ここは1944年のフランス、ノルマンディーか?
・第3章:極限
そしてこの直後、とうとう今日一にエクストリームな瞬間が訪れることになる。店員さんが注文を取り終わったその刹那。なんと、サンジュンの隣の席が空いたのだ……!
キ、キタァァァァァアアアアア! これは千載一遇のチャンス。行くなら今しかねぇ!! だが……行けるか? トッピングの注文の時点でビビっていた私に、席の移動など可能なのか? しかもすでに注文コールの後だ。このタイミングでそんなことを言い出したら、いよいよ殺されるんじゃなかろうか?
死を予感する私。しかし、これも記事のためである。引けば老いるぞ、臆せば死ぬぞ! 覚悟を決めた私は、極限状態の中、勇気を振り絞ってこう叫んだ。「すいません、あっちの席に移ってもいいですか……!?」と。するとそれに気付いた店員さんは、くるっと振り返りこう答えた。
「あ、大丈夫っすよー」
割と普通……!
・エピローグ
こうして無事に席移動できた結果が、サンジュンのあの記事なのである。あーよかった。隣が空いて。さて、初めて食べた二郎の感想だが……思ったよりもだいぶウマかった。これならまた食べてもいいと思いましたね。でも、胃が完全にニンニクになりました。
・次章へ
ニンニクの香り濃い初体験の帰り道、私は本当の意味で少年から男になったような気がしていた。実は本物の二郎を食べて、なぜ自分が今までここに来なかったのか、そのもう一つの理由を思い出したのだが……それはまた別の機会に譲りたい。グッバイ二郎、また会おう。そう遠くない未来で。
Report:あひるねこ
Photo:RocketNews24.