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カミソリでおなじみ米ジレットのCMが賛否両論で不買運動も勃発 → 冷静に見てみると…

2019年1月17日

カミソリでおなじみな米国の会社 Gillette(ジレット)のCMが、世界中で物議をかもしている。アイスランドの外務省や各界のう著名人から一般人まで巻き込んで物凄い騒ぎだ。

問題のCMの公式ツイートは本記事執筆時点で20万回以上リツイートされ、50万近い「いいね」を獲得。YouTubeでは1600万回も再生されている。その反面、ツイッター上では「#BoycottGillette」のハッシュタグとともに不買運動も進行中。一体何が起きているのだろうか。

・有害な男らしさ

CMのタイトルは「We Believe: The Best Men Can Be」。2017年の終わりごろから世界中で爆発的に広まった「#MeToo」運動への支持を表明するキャンペーンの一環で作成されたもの。

筆者の主観も入っているとは思うが、動画は昔から「男らしい」と賞賛されたもの。あるいは「男にありがち」、あるいは「男だから」と容認されてきた行動のうち、暴力性や女性軽視にあたるものを批判していく構成。

そういった行動のうち、動画で具体的に示唆されているものとしては

女性のお尻を触って笑いをとる男性コメディアン

ビジネスの場にて女性の意見を、女性の本意とは違うものに言い直す男性

殴り合いの喧嘩をする男の子たちと、それを「男はそういうものだ」と言って止めない父親たち

など様々。Gilletteの伝えたいこととしては恐らく、これらの「有害な男らしさ」をなくしていこうというものだろう。個人的には特に悪い内容ではないと思うし、実際に賛同する者も多い。しかし、それと同じくらいに反感を抱く者も出ている。


・ネット民(一部有名人の公式)の声

・Real men don’t get their feelings hurt from a commercial saying it’s not cool to be a dirt bag…. y’all need to chill and go outside or something.
まっとうな男なら、「クソみたいな振る舞いはクールじゃない」ってCMに腹を立てたりしないぜ。みんな頭冷やせよ。ニック・レンツ氏(格闘家)

・Isn’t it time companies STOPPED PISSING OFF THEIR CUSTOMERS and kissing the asses of liberals? I know I won’t be buying your products any longer.
リベラルにすりよって客をバカにすんのはやめろよ。もうお前のところの商品は買わねぇからな。

・Watch as your sales plunge. Guaranteed.
お前のところの売り上げがガタ落ちするのを眺めてな。デビッド・ウォール氏(トランプ大統領の選挙支援団体関係者)

・I just wanted to say that I’m sorry about how awful some people can be. And I appreciate your ad and will continue to use your razors.
醜い振る舞いをする人たちのことは残念に思うよ。あのCMを出してくれてありがとう。今後もジレットのカミソリを使うよ。

・このCMスゴく良いと思います。因みに私は男性です。

・これが男性用商品を作ってるメーカーのCMとして出てきてくれたことが本当に嬉しい

・This is nothing but racism and manbashing. So never buying Gilette for my husband and sons again!
これはただの男性批判。夫と子供用にジレット製品は二度と買わない。

などなど、日本語も英語も問わず物凄い数である。また、反対しているのは男性ばかりかと思いきやそうではなく、女性からのものと思われる批判もそこそこ見受けられる。


・賛成と反対のどちらも理解できるが……

筆者としては、賛成と反対のどちらの言い分も理解できるというのが正直なところ。筆者自身、幼いころに怖い祖母から「男の子はこういうもの!」という感じで、タフであることや苦痛に耐えることが当然という「男らしさ」を強要された記憶がある。

また、兄弟同士や学校の友達と殴りあいの喧嘩になった時にも、動画のように「男の子ならこれくらい当たり前」という感じだった。まさに動画の中で批判されている「男らしさ」を容認、あるいは率先して刷り込まれた世代だ。

そして、そういった価値観に染まって育てられた人の中から「男性が皆悪いヤツのように描かれている」と感じて怒る人が出るのは何の不思議も無い。批判する人の姿勢は1つの自然なあり方だと思う

だからといって、その解釈が正しいとは思わないし、CMの内容がおかしいとも思わない。時代に合わない「男らしさ」はCMの通りなくしていくべきだと感じている。

一つだけ真っ向から反対したい反応がある。それは、このCMに対して過去にGilletteが行った、女性コンパニオンをいささか性的に起用したコマーシャルを引っ張り出してきて文句を言っている人たちだ。過去にどうあったかで、現在や未来のあり方を縛っても何にもならないだろう。


・「慣れ」の問題か

それにしてもなぜこうも激しい議論を巻き起こしているのだろうか。よくよく考えると、女性に対して「もっと良い女性のあり方」を、現状を否定しつつ提示するようなCMやTV番組は数多い。化粧やエステ、ダイエットなどのCMは、多くが女性を対象に、現状よりも理想的なあり方を提示するものだろう。

しかし、男性に対して「もっと良い男性のあり方」を提示するものはそんなに見ない。このCMがこうも賛否両論となっているのは、現状を否定され、「より良いあり方」を提示されることに慣れていない男性に対して、この一発はいささか強烈すぎたから……というのもある気がする。

とりあえずCMに怒っている人たちは落ち着いてもう一度見て欲しい。この動画は、全ての男性を批判するものではない。CMで男のクソみたいな行動を止めているのは別の男だ。

また、全ての「男らしさ」を批判するものではないし「現代版の男らしさ」を強要するものでもない。更に言うと「男としての社会的役割」を否定するものでもない。この動画はニック・レンツ氏のコメントにあるように、今まで男でやるヤツが多かったクソみたいな行動を、今後はなくしていこうぜというだけだろう。

参照元:GilletteYouTube、Twitter @Gillette@MFAIceland@NikLentz
執筆:江川資具

▼荒れている公式Twitter

▼荒れている公式YouTube
https://www.youtube.com/watch?reload=9&v=koPmuEyP3a0

▼余裕のレンツ氏
https://twitter.com/NikLentz/status/1085304605741928448

▼賛同を示すアイスランド外務省

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