ついに12月21日(金)、ディズニー・アニメーション・スタジオ最新作の映画『シュガー・ラッシュ:オンライン』が公開される。
アメリカで一足先に公開され、大ヒットを収めている同作のプロデューサーを務めたのはクラーク・スペンサーさん。そのクラークさんにお話を聞ける機会をいただけるということで、今回インタビューしてきたのだが、心臓が飛び出るんじゃないかってくらい緊張した。だって私、超がつくほどのディズニーファンだから!
・『シュガー・ラッシュ:オンライン』とは? クラーク・スペンサーとは?
『シュガー・ラッシュ:オンライン』について簡単に説明すると、今作は2012年公開の映画『シュガー・ラッシュ』の続編で、アーケード・ゲームの世界に暮らす “ラルフ” と “ヴァネロペ” が主人公。ヴァネロペが住むゲーム『シュガー・ラッシュ』を救うため、ふたりがインターネットの世界に飛び込むというのが今作の大まかなストーリーである。
そしてプロデューサーのクラーク・スペンサーさんだが、クラークさんはあの名作『リロ・アンド・スティッチ』や『ズートピア』の製作を務めた敏腕プロデューサーなのだ。そんな人にお会いできるだけでもありがたいのに、インタビューまでできるなんて! 全身全霊をかけて臨んだクラークさんへのインタビュー、ぜひみなさんに読んでいただきたい。
──今日はお時間いただき、ありがとうございます。今作を観て、本当にたくさんの点について感銘を受けました。
「ありがとうございます! そう言ってもらえて、嬉しい限りです」
──今日は、今作を観たときに疑問に思ったことや興味を持ったことについてお聞きしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
「はい、こちらこそよろしくお願いします」
──当サイトの読者のなかには、映画プロデューサーは何をする職業なのかよく知らない人もいると思うので、映画プロデューサーとは何なのかを簡単に説明していただけないでしょうか。
「そうですね、アニメーション映画におけるプロデューサーの役割というのは、監督の頭のなかにあるビジョンをひとつの作品として形にするため、あらゆることを行うことです。ストーリーの案を考えたり、400人以上におよぶ大きなチームを作ったり、製作スケジュールを管理したりと、たくさんのことを行います」
──本当に考えることが多い仕事なんですね。
「そうなんです。映画プロデューサーの最も大変なところは、バランスをとることだと思っています。クリエイターたちの創造力をサポートする一方で、製作スケジュールや製作費といった現実的なことも考えなければいけません。決まった期間と予算のなかで、どのようにしてクリエイターたちの創造力を最大限引き出すか。このバランスについて考えることが大切だと思っています」
──今作にはGoogleやAmazonといった実在する企業が多数出てきます。あまり目立たずに映っているけれど、観る人にぜひ気づいてほしいと思う企業は何かありますか?
「う~ん、それなら “イースターエッグ”(※1)について話した方が良さそうですね!」
※1:ディズニー映画では、他のディズニー映画のキャラクターがチラッと小さく画面に映ることがあり、そういった隠れキャラ的な小ネタをイースターエッグと呼ぶ
──おお! イースターエッグですね!
「映画のさまざまなところにイースターエッグが隠されていて、それを見つけるだけで、とても幸せな気持ちになれます。今作を観る人にも、ぜひ見つけてほしいと思います」
──今作のイースターエッグのなかで、スペンサーさんのお気に入りのイースターエッグは何かありますか?
「お気に入りですか……(熟考)」
──すいません、難しい質問ですよね(汗)
「実はこの作品では、あのスタン・リーさん(※2)がカメオ出演されていまして。スタン・リーさんはアニメーション業界にいる私たち皆に、大きな影響を与えた人物であり、その功績をたたえる意味で、彼が亡くなるずっと前からカメオ出演は決まっていました」
──そうだったんですね。
「スタン・リーさんのカメオ出演を、みなさんに気づいてもらえると嬉しいですね」
※2: 『スパイダーマン』や『アイアンマン』といった数々のスーパーヒーローを生み出したアメリカン・コミックス界の重鎮的人物。2018年11月に95歳で死去。
──今作に登場するインターネットの世界を見たとき「インターネットの世界がもしあるのなら、確かにこういう見た目なのかも!」と感銘を受けたのですが、どのようにしてインターネットの世界を視覚化したのですか?
「それは実に難しい部分でした。なぜならインターネットの世界は実在するものではないので。視覚化するために様々なことを行ったのですが、主に2つのことが視覚化のキーとなりました」
──2つですか?
「はい、まず1つめはリサーチです。初期のインターネットを作り上げたパイオニア的存在の方々とお話しすることができたのですが、彼らは古いウェブサイトのうえに新しいウェブサイトを積み上げる形で、最初の頃のインターネットを作り上げていったようなのです。そこから『インターネットの世界は垂直的である』というアイデアが思い浮かびました」
──あっ! 確かに今作に出てくる世界は、下が古いインターネットの雰囲気になっていて、上に行くほど新しいものになっていますね。
「そうなんですよ! そして視覚化するうえで大きな役割を果たした2つめのことは “東京” です」
──えっ? 東京!?
「私たちは、インターネットは常にオンラインの人がいる眠らない場所だと考えました、まさに東京のように。東京も高層ビルが立ち並び、垂直的な世界ですよね。そしてたくさんの看板や標識があります。だからこの『シュガー・ラッシュ:オンライン』でもたくさんのロゴや看板が登場するのです」
──まさか東京がそんなインスピレーションを与えていたとは……本当にビックリです。
クラークさんへのインタビューは、まだまだ続く。話題になったディズニープリンセス共演シーンの裏話や、ディズニー声優になるためのアドバイスについても聞いてきたので、次のページでチェックだ!
参考:シュガー・ラッシュ:オンライン
Report:田代大一朗
Photos:(C)2018 Disney / RocketNews24.
予告編を観たときから気になっていた「ディズニープリンセスの共演シーン」がどのように実現したのか、思い切って聞いてみたぞ。
──『シュガー・ラッシュ:オンライン』には、たくさんのディズニープリンセスたちが同じ画面に登場するシーンがあります。
「そうですね」
──私が覚えている限り、あんなにたくさんのディズニープリンセスがひとつのシーンに登場するのは初めてのことだと思うのですが、それを実現させるうえで何か困難なことはありましたか?
「私たちはまずラルフたちがインターネットの世界に行けるのなら、他のどこの世界にでも自由に行けるだろうと考えました。だから自分のゲームでプリンセスであるヴァネロペが、他のディズニープリンセスに会うことは何も不思議ではないと考えたのです」
──確かに。
「私はこのアイデアを実現させるには、2つのことが必要だと監督に伝えました。ひとつめは、プリンセスたちを面白おかしく共演させるこのシーンを楽しみながら作るということ。そしてふたつめは、キャラクターたちの個性を尊重しながらそれぞれを描くということ。この2つのことを実現させるのに大きな役割を果たしたのが、とてつもなく素晴らしいシーンを書いた脚本家のフィル・ジョンストンとパメラ・リボンです」
──なるほど、脚本家のおふたりが大活躍したわけですね。
「現代的かつ観客が満足する形での共演シーンが必要だったのですが、2人はそれらの条件を満たす見事なシーンを書き上げてくれました。その脚本を(ディズニーの)会社が見て、“よし、プリンセスたちの共演を実現させよう”となったのです」
──私はヴァネロペとラルフの声が大好きなのですが、声優のキャスティングはどのように行っているのですか?
「声優をキャスティングするうえで、いつもやっていることがあります。それは他の作品から俳優・女優の声を切り取ってきて、キャラクターの絵に当てるというものです。当てた声でキャラクターが実際に話しているように感じたら、その声の主がふさわしい声優であるというように考えます」
──他の作品から声を持って来て、それを絵に当てるとは思ってもいませんでした。
「アニメーション映画においては、声が非常に大事ですからね」
──声優つながりでもうひとつ質問があります。日本で声優の勉強をしている多くの人が、ディズニーの声優をやりたいと願っていると思うのですが、そういった人たちに何かアドバイスはありますか?
「自分の声を聞いてもらう機会を作ること。これが大切だと思います。自分の声を録音して、聞いてもらい、自分の声優としてのスキルや演技力について知ってもらう。そしてもうひとつ大切なことは、決してその夢をあきらめないこと」
──あきらめないことですね。(心の声:ディズニーの人が「夢をあきらめないで」と言うと、重みが違ぇぇええ。まさにシンデレラの歌に出てくる “If you keep on dreaming, the dream that you wish will come true”(信じ続ければ、夢はきっと叶う) やんけ!)
「なぜなら声優という仕事は、誰もができるわけではない本当に素晴らしい仕事だからです。そして楽しい仕事でもあります。声優はメイクも、衣装も、撮影セットも必要とせず、身ひとつでスタジオに入り、キャラクターに命を吹き込みます。ほとんどの声優の方たちが、自分の仕事を愛していると思いますよ(クラークさんが微笑む)」
──貴重なアドバイスありがとうございます!(心の声:ありがたいお言葉と、優しさあふれる笑顔。クラークさんのディズニーオーラ、ハンパない!)
──多くの日本人がディズニー映画やディズニーランドが大好きです。そしてディズニースタジオはまるで魔法のような場所に見えます。クラークさんにとって、ディズニーで働くということはどんなことですか? 何か特別なことですか?
「はい、すごく特別なことです。小さい頃、私の祖父母は映画館を経営していて、祖母がチケットを売るのを祖母の膝の上に座りながら見ていました。そしてチケットが売れた後は映画館に入り、映画を観たものです。そこで『白雪姫』も『バンビ』も『ダンボ』も観ました。そうやって大きくなっていくなかで、映画業界で働きたいと思うようになりました」
──確かに運命的な環境ですね。
「でもまさか小さい頃から観て育ったディズニー作品の製作に自分が携わるなんて、ましてやディズニー映画のプロデューサーになるなんて思ってもいませんでした。そしてこうやって日本に来て、みなさんと作品を共有できるとは……本当に夢のようです」
──はい。(心の声:クラークさんの言葉ひとつひとつに、ディズニーに対する愛が詰まっていて、聞いてるだけで涙がこぼれそうになる……)
「ディズニースタジオには、日本を含めた世界中から最高のアニメーターたちが集まっています。そしてそういった才能あふれる人たちと毎日共に働き、ストーリーを作っているのですが、成功すれば、そのストーリーは私の人生よりはるか長く、人々の心の中で生き続けます。こういった仕事ができることを本当に光栄に思っています」
──まさに夢のような仕事ですね。今日は忙しい中お時間をいただき、本当にありがとうございました。
「こちらこそありがとうございました!」
いや~、すごかった。クラークさんから放たれるディズニーオーラが実に凄まじかった。
夢のディズニー映画のプロデューサーに会えるとあり、私は緊張して質問の言葉がうまく出てこなかったのだが、クラークさんは「あなたのペースで話してくれていいんだよ」と言わんばかりの優しい微笑みを向けながら、私の言葉に耳を傾けてくれていた。
クラークさんをはじめとする最高のスタッフで作った『シュガーラッシュ:オンライン』、現代の友情のあり方についても考えさせてくれる本当に素敵な作品なので、ぜひ多くの人に観てほしい!
参考:シュガー・ラッシュ:オンライン
Report:田代大一朗
Photos:(C)2018 Disney / RocketNews24.
▼私がド緊張の状態で質問していると、クラークさんが優しく微笑みかけてくれて、自然と落ち着くことができました。クラークさん、本当にありがとうございました!
▼ディズニー映画『ズートピア』をディズニーオタクが観たときのあるあるはこちらから! 『ズートピア』もクラークさんがプロデューサーを務めた作品なのだ
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