突然だが、みなさんは「ターボばあちゃん」をご存知だろうか? 兵庫県に伝わる都市伝説で、時速140キロ以上で走り抜ける老婆のことだ。トンネルを車で走っていると、突然窓を叩いてくることもあるらしく、目撃場所は主に六甲山が多いとされる。
六甲山といえば、時速280キロ以上で空を飛び回るUMA(未確認動物)「スカイフィッシュ」も有名なので、六甲山は「未確認超高速生物」のメッカとも言えよう。
それはさておき……そんな超高速ターボばあちゃんについての話題を、都市伝説やオカルト事情とは縁もゆかりもない、ある男が私に振ってきたところから話は始まる。
「羽鳥さん、ターボばあちゃん知ってますか?」
そう言いながら近づいてきたのは、毎度おなじみ、営業部隊の「じゅん君」だった。なんでも、ターボばあちゃんの撮影に成功したらしき動画が存在するのだという。地味に再生回数を伸ばしているらしい。
もしもそれが本当なら、ターボばあちゃんの存在は「都市伝説」から「UMA(未確認動物)」に一気に格上げされるほどの大事件! ドキドキしながら、じゅん君が自信マンマンでオススメしてきた動画を確認したところ……
▼コレ▼
https://www.youtube.com/watch?v=nsAHchajEG0&feature=youtu.be
はっきり言おう。これはフェイク(ニセモノ)だ。
詳しくは動画を再生して確認してほしい。ターボばあちゃんのリアルな表情……。なかなか面白い良く出来た動画だ! ただ、マニアの私は騙せない。「ターボばあちゃん並みの爆速Wi-FiならBroad WiMAX!」というCM動画なのでターボばあちゃんの真偽に口出しするのは野暮なのだが、私はこれがフェイクだと見抜いてしまった!
・オレが撮る
ということで、未確認超高速生物マニアの私は一路神戸へ。もちろん目的は、ガチでターボばあちゃんを撮影し、何も知らないじゅん君に「これが本珍映像だ!」と教えるためだ。目撃ポイントとされる六甲山ならびに付近のトンネルは、過去に行ったこともあるので土地勘もある。オレならできる。絶対に……捉える!!
・六甲山のトンネルで3カメ激撮
まずは先の動画と同じく、「猛スピードで車を追い越すターボばあちゃん」を動画で狙ってみた。3台のカメラを用意し、「おそらくここだろ」的なトンネルを……
……通過したが、特に何も映っていなかった。だが、これはあくまでも想定内。本当の狙いは、先の動画でも「目撃情報の相次ぐ場所」と紹介されていた山の中だ。
・出現ポイントを推理
映像を見るに、おそらく六甲山の山中だろう。正確な場所は分からないが、「あのへんかな……」と思い当たるポイントを、私はいくつか知っていた。ザッ、ザッ……
そこは、登山客も来ないであろう秘密の場所。足元をカバーする「登山ゲイター」がないと快適に辿り着けないレベルの “魔境” に近いポイントだ。ザッ、ザッ……
そして……
……ようやく着いた。誰もいない。
耳を澄ますと、鳥の「チチチ……」という鳴き声、風の「ゴーゴー」と、植物の「サワサワ……」、あとは久々の大自然に興奮した私の「ハァハァ」しか聞こえない。
そんな場所に設置したのは、通称『トレイルカメラ』と呼ばれるセンサーカメラだ。
カメラの前を何かが通り過ぎたりして、センサーが反応した瞬間にシャッターが押される仕組みの、よく野生動物の観察などに使われる特殊なカメラである。
ちなみに時刻や温度も記録される。防犯用にも、もってこいの商品だ。
おそらくターボばあちゃんは、この「魔境エリア」の中央部を通り過ぎる……はず。
・しかもトレイルカメラ2台体制
ちなみに、同じポイントを狙いつつ、違う場所にもう1台、種類の違うトレイルカメラを設置した。こちらは静止画と動画を同時に記録する設定だ。
もし万が一、ターボばあちゃんにトレイルカメラを盗まれても、置き引きの瞬間を捉えられるという念の入れよう。ウム、完璧!
あとは放置。魔境エリアにターボばあちゃんをはじめとする何者かが通り過ぎることを祈るのみである。
・放置したのは約28時間
そして、一晩開けての約28時間後……。ふたたび六甲山に入った私は、「絶対にナニかが写っている……」と確信しながらトレイルカメラを回収した。
そして画像を確認すると……な、な、ナニーッ!! これはある意味、予想外! 衝撃の結末は、次のページへつづく!!
参考リンク:Broad WiMAX
Report:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.
ここからは、六甲山の奥深くにある秘密ポイント「魔境エリア」に設置した2台のトレイルカメラが捉えた画像を中心に説明したい。時刻と温度にご注目である。
・設置日(11月20日)の午前10時53分
まずはあらためてトレイルカメラを設置した直後から確認したい。2017年11月20日、午前10:53分。トレイルカメラを設置し終えて、下山の支度をする私が写っている。気温は12度と、けっこう温かい。
同時刻、別アングルのカメラには、指差し確認しながら自撮りをする私が映っていた。
この自撮り写真がコレであるが、それはまあ良い。
・11月20日午前10:54分
その1分後、トレイルカメラ1号機が捉えたのは、私の大きなケツだった。
トレイルカメラ2号機には、撤収する私の姿(静止画)が写っていた。
そして放置。もしもターボばあちゃんが映っていたら本珍映像激撮作戦大成功、世界レベルの大スクープであるが、その願いが叶わなくとも、イノシシや小鳥くらいは写っていると踏んでいた。だがしかし、2台カメラが捉えた、次なる「動くもの」は……
・翌日(11月21日)の午後15時14分
設置してから約28時間後。トレイルカメラ1号機に残されていた「次の画像」は……
トレイルカメラ回収のために現れた私の姿だった。
「そんなバカな!」と思いながら、2号機のデータを確認してみても……
やはり、設置時のデータの次に記録されていたのは回収時の私だった。
つまり、この28時間、ここ秘密の「魔境エリア」には、ターボばあちゃんは無論のこと、人はもちろん、動物ないしデカ目の虫すら何も通り過ぎなかったのである。
何度確認しても、ナニも写っちゃいなかった。
ちなみに、2号機が示す気温はマイナス1度だった。
ということで結論としては、
わざわざ六甲山まで来てカメラをセットしたのに、
裸になればターボばーちゃんが現れるかもしれないと思って脱いだのに、
動画の2号機はおろか、静止画の1号機でさえも、
アキラ100%ならぬゴウ100%の確率で、
ナニひとつ写っておらず……
本珍映像激撮作戦大失敗と相成ったのである。
<完>
参考リンク:Broad WiMAX
Report:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.